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猫の胸腺腫へのステロイドと外科治療

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年齢を重ねることでさまざまな腫瘍が発生しますが、

胸の中に腫瘍ができると呼吸が苦しくなるので、

とても辛い状態で見つかることが多いです。

胸のなかにできる猫の腫瘍のひとつに胸腺腫があります。

どんな腫瘍でしょうか?

どんな治療ができるでしょうか??

長生きできるでしょうか???

胸腺腫とは?

胸腺腫は犬猫では比較的稀ですが、胸のなかに大きな腫瘍ができるので、

急に呼吸が苦しくなり緊急状態になることが多い腫瘍です。

その胸の中とは肺ではなく「前縦隔」と呼ばれる部位で、

その部位に出来る腫瘍では最も発生が多い良性の腫瘍です。

基本的には被膜で覆われており非浸潤性ですが、時に周囲の臓器へ浸潤を示すことがあります。
良性腫瘍ではありますが、非常に稀に遠隔転移を認めることがあります。

同じ部位に2番目に発生が多い腫瘍に前縦隔型リンパ腫と呼ばれる腫瘍があり、

ときに鑑別が困難ですが治療が大きく異なるので注意が必要です。

胸腺腫の症状

胸腺腫による症状は、無症状から非常に重度な呼吸困難まで様々です。

胸腺腫が大きくなり周囲の臓器を圧迫することで、

・元気消失

・発咳

・頻呼吸、呼吸困難

を呈します。


胸水が貯留すると、重度の呼吸困難などで致命的になることがあります。

また、胸腺腫は特徴的な腫瘍随伴症候群と呼ばれる症状を呈することもあります。

胸腺腫の腫瘍随伴症候群

胸腺腫に起こりうる腫瘍随伴症候群には、

・重症筋無力症(GM)

・剥奪性皮膚炎

・高カルシウム血症

・リンパ球増加症

・貧血

などがあります。

高カルシウム血症

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胸腺腫の診断

胸腺腫は前述の症状で疑いますが、診断には画像検査が必要です。

画像検査としては、胸のレントゲンにて胸の前に大きな白い影が見つかります。

前縦隔に発生する腫瘍は、リンパ腫等、胸腺腫以外にもありますので、

胸腺腫なのかどうか細胞診検査、もしくは組織検査が必要となります。

この検査には全身麻酔が必要となることが多いですので、

血液検査で全身のチェックをしたのち、

細胞の検査と併せてCT検査にて胸のできものが切除可能かどうか確認します。

多くの場合は、大きいですが転移等は少なく、どこまで広がっているか、

周りの臓器に影響与えているかを確認します。

胸腺腫の治療

胸腺腫の治療には、外科手術、放射線療法、化学療法があります。

まず、切除可能な場合の第一選択は、外科切除です。

外科治療がこの3つの治療法の中で唯一の根治的な治療法です。

あまりに腫瘍が大きすぎてとれさそうな場合は、

まずステロイドによって腫瘍が小さくならないか治療を試みます。

ここで大切なのは、ステロイドで小さくなったからそのまま治療を終わりにしないこと。

ステロイドはいつまでも効きませんので、必ず小さくなったあとしっかり外科で切除します。

また、どうしても切除が不可能な場合は放射線治療を行います。

放射線療法の反応率(完全に消失または部分的に縮小する率)は75%です。

胸腺腫の予後/余命

巨大食道による誤嚥性肺炎のない切除可能な胸腺腫の予後は非常に良好です。
外科切除が困難な理由として、胸腺腫が周囲へ浸潤している(特に前大静脈への腫瘍栓の浸潤)ことが挙げられます。

その場合、前述のように先にステロイドや放射線で縮小を試みて外科切除することで長生きが可能です。

生存中央値(平均のような数値)は犬で790日猫で1825日

1年生きれる確率は犬で64%猫で89%です。

頑張って治療することで長生きが可能であり、根治治療も可能です!

ぜひ、正しい診断治療を行い腫瘍をやつけましょう!

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