更新日:2025/12/9
メラノサイト腫瘍は、
皮膚・目(眼)・口腔内などに発生する腫瘍で、
猫は犬に比べると発生率は低いものの、悪性化するケースもある腫瘍 です。
特に「黒いしこり」「色素の濃い腫瘤」「色の変化」がみられた場合、
猫では 良性・悪性の鑑別が非常に難しい のが特徴です。
この記事では、
メラノサイト腫瘍の特徴・症状・診断方法・治療・予後 を、腫瘍科の観点から詳しく整理しています。
1. メラノサイト腫瘍(MGT)とは?
メラノサイト(色素細胞)が腫瘍化したもので、
皮膚・眼球・口腔粘膜などに発生します。
猫では比較的まれな腫瘍ですが、
良性〜高悪性まで幅が広い腫瘍群 に分類されます。
犬と違い、
猫のMGTは 生物学的な振る舞いの予測が難しい とされています。
2. 良性と悪性の違い
猫のメラノサイト腫瘍は、
見た目だけでは良性か悪性か判断できません。
特徴を大まかに分類すると以下のとおりです:
■ 良性(Melanocytoma)
- ゆっくり大きくなる
- 境界が比較的明瞭
- 転移はまれ
■ 悪性黒色腫(Melanoma)
- 進行が速い
- 血管・リンパ管に広がりやすい
- 肺・肝臓・リンパ節へ転移することがある
- 無色素性(黒くないもの)も存在し気づきにくい
皮膚型は良性が多く、
口腔・眼球のメラノーマは悪性のことが多いとされています。
3. 発生部位による特徴
■ ① 皮膚(体表)
- 黒〜茶色のしこり
- 良性の可能性が比較的高い
- 完全切除で治癒が期待しやすい
■ ② 口腔内(歯肉・舌)
- 悪性率が高い(犬ほどではないが要注意)
- 出血、口臭、食べにくさ、よだれが出る
- リンパ節転移・肺転移のリスク
■ ③ 眼(虹彩・眼球周囲)
- 虹彩に黒い斑点(メラノーシス)として始まることあり
- 悪性化すると眼球摘出が必要になることも
猫の眼球メラノーマは進行がゆっくりでも、
気づいたときには広がっているケースがあるため注意が必要 です。
4. 症状
部位により症状が異なります。
- 黒いしこり
- 色の濃い腫瘤
- 大きさが変わる
- 出血
- 口が痛そう
- 食欲が落ちる
- まばたき異常(眼)
- 視力の低下(眼)
無色素性メラノーマでは黒く見えないため、
「ピンク色のしこり」として発見されることもあります。
5. 診断に必要な検査
■ ① 細胞診(FNA)
- 参考になることは多いが、確定は難しいことも
- 無色素性では誤診しやすい
■ ② 生検(病理検査:必須)
- 最も確実な診断方法
- 良性・悪性の判別に不可欠
■ ③ 画像検査(転移確認)
- 胸部レントゲン(肺転移の評価)
- 超音波
- CT検査(広がり・リンパ節の評価)
猫のメラノーマは 局所浸潤と転移の可能性を常に考える必要があります。
6. 治療方法
治療の中心は「外科手術」です。
■ ① 外科切除(第一選択)
- 皮膚型では特に有効
- 十分なマージンを確保し再発を防ぐ
- 口腔内・眼の場合は広範囲切除が必要なことも
■ ② 放射線治療
- 外科で取り切れない場合
- 口腔内メラノーマで局所コントロール目的
■ ③ 抗がん剤
猫のメラノーマでは、
抗がん剤の効果は犬ほど期待できないケースが多いです。
- カルボプラチン
- ドキソルビシン
- プレドニゾロン(補助的)
■ ④ 免疫療法
犬ではワクチン療法が一部存在しますが、
猫では標準治療として確立していません。
7. 予後
予後は 発生部位と悪性度で大きく異なります。
■ 皮膚型
- 良性であれば手術で治療可能
- 長期生存が期待できる
■ 口腔内メラノーマ
- 進行が速いことが多い
- リンパ節・肺転移のリスク
- 外科+放射線でコントロールすることも
■ 眼のメラノーマ
- ゆっくり進行することがある
- 広がると眼球摘出が必要なことも
- 全身転移の可能性は低めだがゼロではない
8. よくある質問(FAQ)
Q. 黒いしこり=必ず悪性ですか?
→ いいえ。猫では良性も多いですが、見た目では判断不可です。
Q. 放置しても大丈夫?
→ 部位によっては急速に悪化するため、早期検査が重要です。
Q. 皮膚に複数できますか?
→ まれですが複数発生することがあります。
Q. 犬のメラノーマと何が違う?
→ 猫は発生率が低く、性質も異なり、犬より悪性度の予測が難しいです。
■ まとめ(この記事の要点)
- メラノサイト腫瘍は良性〜悪性まで幅広く、見た目では判断できない
- 皮膚、口腔、眼などに発生し、部位で悪性度が大きく異なる
- 診断には生検(病理検査)が必須
- 治療の中心は外科;部位により放射線治療を併用
- 無色素性メラノーマは気づきにくいため注意
- 予後は腫瘍の型・部位・進行度で大きく変わる
- 黒いしこり・色素変化を見つけたら早めの受診が重要
以下に獣医師の視点から、
治療中の犬猫に現実的に選ばれているフードをまとめまています。
▶︎ 犬猫に配慮したフードの考え方を見る
※本記事は獣医師の視点から、毎日安心して与えられるドッグフードを厳選して紹介します。病気の治療ではなく、将来の健康を守るための食事選びを目的としています。普段我々は病気の療法食としてロイヤルカナンやヒルズなどの療法食を処方しますが[…]
更新日:2025/12/12キャットフードは「何を選ぶかで寿命が変わる」 と言っても過言ではありません。しかし、種類が多すぎるネットは宣伝だらけ“何が良いか”がわからない…[…]
