更新日:2025/12/6
犬や猫が呼吸が苦しそうなとき、動物病院で勧められることが多いのが
「酸素室(酸素ボックス)」を使った在宅酸素療法(HO₂=Home Oxygen Therapy)」 です。
酸素室は、呼吸が辛い子の負担を減らし、自宅で”息がしやすい環境”を作るための重要な医療機器です。
心臓病・肺疾患・腫瘍・感染症など、呼吸が苦しくなる病気の治療と生活の質(QOL)に大きく役立ちます。
この記事では、酸素室の仕組み・使い方・適応疾患・注意点まで、飼い主の方にわかりやすくまとめています。
1. 酸素室(在宅酸素療法)とは
酸素室とは、
通常の空気(約21%)より高い濃度の酸素を供給し、呼吸を補助する装置 です。
動物病院だけでなく、最近はレンタルで自宅にも導入できるため、
入退院を繰り返す子の負担を減らす目的でも広く利用されています。
2. なぜ酸素が必要になるのか
呼吸が苦しくなると、体は次のような悪循環に陥ります。
- 酸素が取り込めない
- 心臓や肺がより頑張る
- 体力が低下する
- 呼吸筋が疲れ、さらに呼吸困難が悪化
酸素室は、この悪循環を断ち切るために役立ちます。
3. 酸素室の仕組み
専用の濃縮器から高濃度酸素を送り、ボックス内を酸素豊富な空間にします。
一般的なしくみ:
- 空気から酸素だけを濃縮
- チューブでボックスへ供給
- 一定の濃度を維持する
- 熱や湿度がこもらないように排気穴がある
酸素濃度は機種により20〜60%程度まで調整可能です。
4. 酸素室が必要になる主な病気
■ 心臓病
- 僧帽弁閉鎖不全症(肺水腫)
- 心筋症
呼吸困難・チアノーゼ時に重要。
■ 肺の病気
- 肺炎
- 気管虚脱
- 肺腫瘍
- びまん性肺疾患
- 喘息(猫)
■ 腫瘍性疾患
- 肺転移
- 胸腔内腫瘍
- リンパ腫
■ 胸の中に液体・空気がたまる病態
- 乳び胸
- 胸水
- 気胸
胸腔穿刺後の回復サポートにも有効。
■ 高齢・慢性病で体力が低下している場合
呼吸筋疲労を軽減し、QOLを保つ目的で使用されます。
5. 酸素室のメリット
- 呼吸努力を減らし、体を休ませられる
- 食事や水分がとりやすくなる
- 夜間の急変リスクを下げる
- 動物病院への通院回数が減る
- 入院が難しい子(高齢・ストレスに弱い)にも使いやすい
多くの飼い主の方が
「酸素室に入ると呼吸が静かになり、落ち着いて眠れる」
と実感されています。
6. 自宅で使う際の注意点
- ボックス内の温度が上がりやすいため、エアコン併用が必須
- 湿度は40〜60%が目安
- ボックスの開け閉めで酸素濃度が下がる(急な開閉は避ける)
- チューブの折れ・抜けに注意
- 酸素濃縮器は熱を持つため周囲にスペースが必要
心臓病の子は 過度な興奮・吠え も危険なので、静かな環境づくりが大切です。
7. 酸素濃度の目安
状態により変わりますが、おおよそ:
- 軽度の呼吸困難:25〜30%
- 中等度:30〜40%
- 重度:40〜60%
濃度が高ければ良いわけではなく、
かかりつけ獣医師の指示に従って調整 してください。
8. 酸素室の種類(レンタル方式の違い)
■ 酸素濃縮器(主流)
- コンセントで動く
- ボンベ交換不要
- 長期利用に向いている
- コストが比較的安い
■ 酸素ボンベ(小型〜大型)
- 持ち運び可能
- 旅行や移動に便利
- 交換が必要でコストが高い
ほとんどの家庭では、
酸素濃縮器+透明のボックス という組み合わせが使われています。
9. 酸素室が必要か迷ったときの判断ポイント
次のような症状がある場合、酸素室の早期導入が推奨されます。
- 呼吸が早い・浅い
- お腹を大きく動かして呼吸している
- 寝ていても辛そう
- 口を開けて呼吸する
- 舌の色が薄い・紫っぽい
- 夜間に落ち着かない
- 心臓病や肺疾患を指摘されている
迷った場合は、
“悪化してからでは遅い”ため、早めに相談することが安全です。
よくある質問(FAQ)
Q. 酸素室はずっと入れておいて大丈夫?
→ 必要なときは問題ありませんが、温度と湿度の管理が必須です。
Q. 酸素中毒は起こりますか?
→ 40〜60%程度の使用であればほとんどありません。
Q. 酸素室に入るのを嫌がることは?
→ 多くの子はすぐ慣れます。慣れない場合は蓋を少し開けた状態から開始します。
Q. 在宅酸素は保険適用?
→ 一般的に保険適用ではありません(任意保険の内容による)。