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猫の鼻腔内腫瘍と放射線治療~リンパ腫?腺癌?扁平上皮癌?~

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犬猫問わず鼻の中(鼻腔内)に腫瘍が発生することは少なくありません。

高齢の犬猫において長い期間鼻血が出ている場合などは鼻腔内に腫瘍が発生している可能性も考える必要があります。

その中でも、猫ちゃんの鼻腔内で発生する腫瘍はリンパ腫と扁平上皮癌(または腺癌)

がほとんどを占め、そのメインの治療に放射線治療が推奨されてます。

おうちの子が急に鼻の中に腫瘍が見つかり、

『放射線治療が必要です』や

『近くには放射線を当てる施設がありません』など、どうしてあげたらいいのかわからなくなってしまう飼い主様も多いのではないでしょうか。

今回は猫の鼻腔内の腫瘍(リンパ腫と扁平上皮癌)に対して放射線治療を行った場合に期待される治療効果や余命についてまとめます。

猫の鼻腔内腫瘍の特徴



まず、猫の鼻腔内腫瘍の特徴的な症状として

・慢性鼻炎の症状
・鼻血、鼻閉音、顔面の変形
・神経症状
・食欲不振

などが挙げられます。
この症状は鼻の中局所の問題で引き起こされるので、

気づいて診断されるときにはまだ比較的早期であり、腫瘍が鼻腔内に限局していること
が多いと考えられます。
つまり、この腫瘍をやつけるためには腫瘍治療の3本柱【外科・放射線・抗がん剤】の中で強力な局所治療である外科か放射線が効果が高いとされます。

ただ、鼻の中の腫瘍を外科によってすべて摘出することは困難でありかつ強い侵襲を伴うため適応されることはほとんどありません。

そのため、鼻腔内の腫瘍をやつけるために放射線治療は欠かせない治療になるのです。

とはいっても、聞きなれない放射線治療は、どこで、どのように、どのくらいの期間、いくらくらいで可能なのかさっぱりわからない飼い主様がほとんどで、

選択肢として提示されても選択できないことも多いと思います。

では放射線治療とはどのような治療なのでしょうか?

まず放射線治療とは❔

犬猫の腫瘍治療の3本柱のひとつである放射線治療がどのようなものか詳しくまとめていますので、ご不明な場合はまず下記のコラムをお読みください。

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治療前に正しい診断と評価

放射線治療などの治療はどうしても全身麻酔や侵襲が避けれません。

高齢の子にそのような負担をかけていいものか、と悩まれる飼い主様も多いと思います。

放射線治療を行う前には必ず正しく腫瘍の診断と進行状況の評価を行うためにCT検査と病理組織検査を実施します。

うちの子は何度も麻酔に耐えれれるのか、と不安な飼い主様は下記のコラムを参考にどうしてあげるべきか考えてあげてください。

鼻腔内リンパ腫の放射線治療

猫においてリンパ腫とは最も多い悪性腫瘍ですが、鼻腔内リンパ腫はあまり聞きなれないかもしれません。

リンパ腫については下記のコラム内でまとめています。

併せて読みたい記事 

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まず鼻腔内リンパ腫の治療を考えるうえでは、放射線治療と抗がん剤が不可欠です。

もしそれぞれの治療のイメージがわかない場合は前のコラムでイメージがついたうえで読み進められることをお勧めします(難しい用語もありますので)。

まず、リンパ腫の場合は血液の腫瘍なので一般的には抗がん剤治療です。

しかし、鼻腔内リンパ腫の場合はリンパ腫が鼻腔内に限局していることが多いので、

①まず放射線治療を実施しその後抗がん剤治療を実施する

もしくは

②放射線治療と抗がん剤治療を並行して行う

このどちらかの治療が最も延命効果が高いとされています。

どちらを行うかは腫瘍の全身への広がりや進行具合で検討します。

実際に実施した場合の結果としては、

放射線治療を週に1~3回を1カ月間(合計照射量32Gy以上)続け抗がん剤治療も行った場合は平均3年近く元気に過ごすことができたというデータがあります。

この結果はもちろん平均ですので数か月の子もいれば3年以上の子もいるということになります。

貧血がある場合や脳の方へ腫瘍が浸潤している場合はこの治療成績は少し下がってしまいます。

鼻腔内扁平上皮癌(腺癌)と放射線治療

鼻腔の扁平上皮癌/腺癌はリンパ腫の次に猫の鼻腔内で多い腫瘍です。

この腫瘍はリンパ腫と異なり比較的ゆっくり進行することが多いため、お顔の変形な症状は伴うものの比較的長く生きることが多いです。

短命になってしまうのは、治療前からお顔の変形がある場合や脳に浸潤している場合、つまりすでに進行している場合ですが、鼻血などの症状で早期に見つかる場合が多いので手遅れなことは多くはありません。

リンパ腫と異なり扁平上皮癌(腺癌)は抗がん剤が効きにくいので基本的には放射線のみで治療します。

ただし、近年新たな治療薬が開発されたため選択肢は広がりつつあります。その内容に関しては下記のコラムでまとめます。

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扁平上皮癌(腺癌)の放射線治療は週に1回の治療を合計4~6回実施します。

この治療によって平均1年半元気に過ごすことができます。これもあくまで平均です。

短いように感じますが、猫ちゃんの1年半はヒトの7年近くに相当します。悪性の腫瘍を患いそれだけ元気に過ごすことができることは大きな価値があるといえます。

まとめ

腫瘍は敵であるとともに自分の体の一部でもあります。

この腫瘍をやつけるためにはどうしても一部の自分の身体も攻撃することになってしまいます。

外科の場合は体にメスで傷をつけること。抗がん剤の場合は副作用。放射線の場合は放射線障害。

しかし、ここで考えるのはメリットとデメリットのバランスだと思います。

この治療が最終的にその子のためになるようにさまざまな観点から正しい知識をもって選択いただければと思います。

診察時間は限られています、このような場を使いなるべく多くの情報を飼い主様と共有できればと思います。

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