腫瘍 おすすめのごはん 投薬
  1. 食事
  2. 腫瘍
  3. フード
  4. 分離不安
  5. デンタルケアなど
獣医師が伝える犬猫の病気や治療の考え方

犬のメラノーマ|治療しない選択・末期症状・余命と向き合い方を腫瘍科認定医が解説

NO IMAGE

更新日 2026/1/20

犬のメラノーマと診断され、
「手術や抗がん剤を勧められたけれど、本当にそれがこの子のためなのか」
「もう治療はせず、穏やかに過ごさせてあげた方がいいのではないか」
と悩まれる飼い主さんは少なくありません。

治療をしないという選択は、
諦めでも、逃げでもありません。
それは、状況を受け止めたうえで、この子を守るために選ばれることのある現実的な判断です。

この記事では、腫瘍科認定医として実際の診療現場で多くの犬と飼い主さんを見てきた立場から、
犬のメラノーマにおいて「治療しない」という選択がどういう意味を持つのか、
末期症状や余命の考え方、そして後悔しない向き合い方についてお伝えします。

犬のメラノーマとは

犬のメラノーマは、特に口腔内に発生することが多い悪性腫瘍です。
見た目は小さくても、内部では周囲の組織に深く入り込み、早い段階からリンパ節や肺へ転移する性質があります。

進行が速く、発見された時点ですでに進行癌であるケースも珍しくありません。
そのため、治療を行っても「完全に治す」ことが難しい腫瘍のひとつとされています。

犬のメラノーマ全体の詳細は以下をご覧ください。

併せて読みたい記事

更新日:2025/12/24犬のメラノーマ(悪性黒色腫)は、高齢犬に最も多い「口の中のがん」 で、進行が早く転移しやすい腫瘍です。「治療すべき?」「手術できる?」「どのくらい生きられるの?」そんな不安に寄り添いなが[…]


なぜ治療が難しいがんか

犬のメラノーマが難しい理由は、いくつか重なっています。

  • 浸潤性が強く、外科的に取りきれないことが多い
  • 手術ができても再発しやすい
  • 肺転移などの遠隔転移が起こりやすい

つまり、
「治療を頑張れば必ず良くなる」タイプのがんではない
という現実があります。

この特性を理解したうえで、治療をするかしないかを考えることがとても重要です。


治療しない選択が現実的になるケース

犬のメラノーマにおいて、「治療しない」という判断が選ばれるのは、決して珍しいことではありません。

例えば、次のような状況です。

  • 高齢で、全身麻酔のリスクが高い
  • すでに肺転移が確認されている
  • 食事が取れず、体力が大きく落ちている
  • 治療による負担が、生活の質を下げてしまう可能性が高い

このような場合、
延命よりも「苦痛を増やさないこと」を優先する選択
が現実的になることがあります。

治療しないことは、「何もしない」ことではありません。
この子が今、どう過ごせるかを大切にする選択です。


末期症状の進行とサイン

メラノーマが進行すると、少しずつ体に変化が現れます。

  • 口の中からの出血
  • 強い口臭
  • 食欲の低下、食べづらそうな様子
  • 元気がなくなる
  • 痛みを示す仕草(触られるのを嫌がる、顔を振るなど)

これらは、病気が進んでいるサインであることが多く、
「まだ元気そうに見えるから大丈夫」と思っていても、
内部では確実に変化が起きていることがあります。


肺転移が起きたあとの経過

肺転移が確認された場合、経過は犬によって大きく異なります。

  • 咳が出始める
  • 呼吸が浅く、速くなる
  • 寝ている時間が増える

中には、急激に呼吸状態が悪化する子もいれば、
しばらくは比較的落ち着いて過ごせる子もいます。

肺転移した胸部レントゲン:真っ黒のはずの肺野に白い影がたくさん見られる。

この段階では、
「どこまで頑張らせるか」より「どう過ごさせてあげたいか」
を考える時間に入っていることが多いです。

呼吸が苦しい、荒い場合は、酸素室をまず必要とします。 

緊急性があるため先に以下のコラムをお読みいただくことをお勧めします。

併せて読みたい記事

更新日:2025/12/6呼吸が荒くて病院に連れていくと、胸に水がたまって、肺に影があります。このような状況は少なくありません。肺は癌に限らずとても転移がしやすい臓器なので、肺以外の部分の腫瘍から肺に転移を[…]


余命の考え方(数字+幅)

犬のメラノーマの余命は、
数週間から数か月と幅があります。

正確な数字を出すことはできませんし、
同じ病名でも経過はまったく違います。

大切なのは、

  • 明日どうなるか分からない不安
  • でも、今日をどう過ごすかは選べる

という視点です。

余命は「期限」ではなく、
これからの時間の使い方を考えるための目安と捉えてください。


緩和ケアでできること

治療をしない選択をしても、できることはたくさんあります。

  • 痛みを和らげる薬の調整
  • 呼吸が苦しいときのサポート
  • 食べられるものを無理なく与える
  • 安心できる環境を整える

緩和ケアの目的は、
命を引き延ばすことではなく、苦痛を減らすことです。

「何もしてあげられない」と感じる必要はありません。


自宅で過ごすための工夫

自宅で過ごす時間を穏やかにするために、

  • 静かで落ち着ける場所を用意する
  • 室温や湿度を整える
  • 夜間も様子を見やすい環境にする
  • 自宅酸素室を設置する
併せて読みたい記事

更新日:2025/12/6犬や猫が呼吸が苦しそうなとき、動物病院で勧められることが多いのが「酸素室(酸素ボックス)」を使った在宅酸素療法(HO₂=Home Oxygen Therapy)」 です。酸素室は、呼吸が辛い子の負[…]

飼い主さん自身が無理をしすぎないことも大切です。
介護は、ひとりで抱え込まなくていい


飼い主さんが後悔しないために

後悔は、
「治療しなかったこと」よりも
「知らなかったこと」「考える時間がなかったこと」
から生まれることが多いです。

治療を選んでも、選ばなくても、
正解はひとつではありません。

この子の性格、年齢、今の状態、
そして飼い主さんの気持ち。
それらをすべて含めて選んだ判断なら、
それは十分に尊重されるべき選択です。


腫瘍科認定医として伝えたいこと

私はこれまで、
「もっと治療すればよかった」と後悔する飼い主さんも、
「無理をさせなくてよかった」と涙される飼い主さんも、
どちらも見てきました。

犬のメラノーマにおいて、
治療しない選択は、決して弱さではありません。

大切なのは、
この子がどんな時間を過ごせるか。
そして、飼い主さん自身がその時間に向き合えたかどうかです。

この記事が、
悩んでいる飼い主さんにとって
少しでも判断の支えになれば幸いです。

NO IMAGE
最新情報をチェックしよう!