更新日:2025/11/24
犬の目に
- 黒い点
- 黒いしこり
- 瞳の中にシミのような影
- 白目に黒い盛り上がり
が見つかると、まず疑うべき病気が 眼メラノーマ(黒色腫) です。
犬のメラノーマは
- 眼のメラノーマは“他部位と性質が違う”
- 悪性度が低い(転移が少ない)タイプが多い
という特徴があります。
この記事では、眼の腫瘍の中でも最も多い 眼メラノーマ の
症状 / 診断 / 治療法 / 眼球温存の可能性 / 予後(転移率) を
腫瘍科獣医がわかりやすく解説します。
目次
眼メラノーマとは?(犬の特徴)
メラノーマは メラニンをつくる細胞(メラノサイト) が腫瘍化したもの。
犬では
🟩 眼メラノーマは、口腔・皮膚のメラノーマと違い 悪性度が低い 傾向があります。
- 転移はまれ
- 進行はゆっくり
- 眼球内で増殖して失明・痛みを起こす
🟥 しかし放置すると
- 眼圧上昇(緑内障)
- 眼球破裂
- 慢性の痛み
など、生活の質を大きく下げる。
犬の眼にできる黒い腫瘍の種類
黒色=すべてメラノーマではない。
🟩 ① メラノーマ(黒色腫)
最も多い。
悪性度は低~中程度。
🟨 ② メラノサイトーマ(良性)
黒い“ほくろ”のような腫瘍。
放置で巨大化することがある。
🟥 ③ リンパ腫
白目(結膜)に赤み・腫れを伴うことが多い。
🟧 ④ 肥満細胞腫
まれだがまぶたにできる。
🟦 ⑤ 虹彩嚢胞
黒い丸い影があるが、腫瘍ではない。
動かしても形が変わらないのが特徴。
初期症状~進行症状
🟩 初期
- 黒い点・シミ
- 虹彩(茶色い部分)に黒い盛り上がり
- 瞳孔の形がゆがむ
🟧 中期
- 眼が充血
- 目が開きにくい
- 瞳の奥が白く濁る
- 光に反応しにくい
🟥 進行
- 眼圧上昇(緑内障)
- 激しい痛み
- 目が大きくなる
- 失明
- 眼球破裂(緊急)
診断方法(眼科検査~エコー・CT)
✔ ① 眼科検査(スリットランプ・眼圧)
- 腫瘍の位置
- 形
- 炎症の有無
✔ ② 眼球エコー
- 腫瘍がどこにあるか
- 眼球内か、壁に沿うのか
- 出血・液体の貯留
✔ ③ CT / MRI
- 眼窩周囲への浸潤
- 頭蓋骨への影響
- 手術計画
✔ ④ 針生検(FNA)
※眼球内は出血しやすく、できないことも多い。
治療法|早期・進行で違う
🟩 ① 経過観察(早期・良性疑い)
- 数mmの黒点
- 増殖がない
- 形が均一
→ 写真で経過を追う
🟧 ② レーザー治療(小さな腫瘍)
- 眼球内のメラノーマの縮小
- 眼圧上昇を防ぐ
- 眼球温存に有効
🟥 ③ 眼球摘出(緑内障・痛みが強い)
- 痛みを完全に取れる
- 腫瘍の完全摘出
- 眼窩は義眼も可能
🟦 ④ 放射線治療
- 小型腫瘍に有効
- 眼球温存率が高まる
🟪 ⑤ 緩和ケア
- 進行例
- 高齢
- 痛みコントロール中心
眼球温存できるケース/できないケース
🟩 温存できる
- 腫瘍が小さい
- 眼圧が正常
- レーザー/放射線が可能
- 視力が残っている
🟥 温存が難しい
- 緑内障で眼圧が高い
- 激しい痛み
- 眼球内の大部分が腫瘍
- 眼球変形(破裂前)
転移率・余命(予後データ)
犬の眼メラノーマの転移率は、他部位よりはるかに低い。
| 部位 | 転移率 |
|---|---|
| 眼球内メラノーマ | 10〜20% |
| ぶどう膜メラノーマ | 中等度(やや高め) |
| 眼瞼(まぶた)メラノーマ | 低い |
◆ 眼球摘出後の予後
- 多くが長期生存
- 転移しにくいタイプが多い
- 完治が期待できる腫瘍
治療しない場合のリスク
- 緑内障(激痛)
- 持続的な炎症
- 出血
- 失明
- 眼球破裂
- 生活の質が大幅に低下
放置で痛みが強いため、
緑内障の兆候がある場合は早期治療が重要。
飼い主さんが気づきやすいチェックポイント
- 瞳孔の形が変わる
- 黒い点が大きくなる
- 片目だけまぶしそう
- 白く濁ってきた
- 眼が大きく見える
- しょぼしょぼする
- 触ると嫌がる
1つでも当てはまれば眼科受診を。
よくある質問(FAQ)
Q. 黒い点=全部メラノーマ?
→ いいえ。嚢胞や良性腫瘍のことも多い。
Q. 眼球摘出はかわいそう?
→ 痛みが強い時は、摘出が最も苦痛が少ない選択肢です。
Q. 眼のメラノーマは転移する?
→ 他部位より転移率は低い。
Q. 高齢でも手術できる?
→ 体の状態が安定していれば可能。
まとめ
- 犬の眼メラノーマは悪性度が低く、転移が少ない
- しかし 緑内障・痛み・失明 のリスクが高い
- 治療選択で 眼球温存も可能
- 症状の早期発見がとても重要
- 放置は痛みにつながるため注意
“命の危険は少ないが、生活の質に大きく関わる腫瘍”
それが 眼メラノーマ です。
