更新日:2025/12/6
犬の脳腫瘍は、
「発作」「ふらつき」「性格の変化」「視覚異常」 といった神経症状から見つかることが多い病気です。
脳腫瘍と聞くと不安が大きくなりますが、
腫瘍の種類によって治療方法も予後も大きく異なり、
適切な診断と治療によって 生活の質(QOL)を保ちながら過ごすことが可能なケース も多くあります。
この記事では、
犬の脳腫瘍について症状・診断・治療法・予後を分かりやすくまとめました。
わんちゃんも長生きになり20歳の子も珍しくなくなってきました。
長寿になるとヒトと同じでどうしても様々な病気が見つかります。
その中でも急に起こる症状のひとつに発作があり、
高齢犬の初発発作の多くは脳腫瘍が原因であると考えられます。
犬の脳腫瘍とは
脳腫瘍は、脳やその周囲の組織に発生する腫瘍の総称です。
腫瘍には
- 原発性(脳そのものにできる腫瘍)
- 転移性(体の別の腫瘍が脳へ転移する)
の2つがあります。
犬では原発性腫瘍が多く、特に高齢犬に多く見られます。
脳腫瘍でよく見られる症状
脳腫瘍の症状は、腫瘍が脳のどの場所にできるかで異なります。
代表的な症状は以下の通りです。
- 発作(てんかん発作)
- ふらつき・歩行異常
- 片側に寄る、旋回する
- 視覚異常(物にぶつかる・見えていない)
- 行動の変化(ぼんやりする、性格が変わる)
- 頭が痛そうにする(鳴く・触られるのを嫌がる)
- 意識レベルの低下
- 嘔吐(中枢性)
症状はゆっくり進行することもありますが、
発作が初めて起きた時点で、腫瘍が見つかることも多くあります。
脳腫瘍の種類
ひとくちに脳腫瘍といっても様々な種類が存在しており、
その種類によりその後の予後や治療方法は様々です。
わんちゃんの脳腫瘍は発生が多いものから、
①髄膜腫
②組織球性肉腫
③星状・希突起膠細胞腫
④下垂体腫瘍
などがありますが、
半分以上は髄膜腫が占めています。
最も多い髄膜腫についてその予後や治療についてまとめます。
髄膜腫とは
髄膜腫は9~10歳の高齢犬に発生し、脳腫瘍でもっとも多い原因となります。
発生が多い犬種として、ゴールデンレトリバーやシェットランドシープドッグなどが報告されています。
ヒトにおいては髄膜腫は良性腫瘍として扱われ、
予後も良好といわれますが、わんちゃんの場合は挙動は悪いものが多いと言われています。
髄膜腫の診断と治療
高齢犬が突然のふらつきや神経症状、発作がみられた場合は必ずMRIを撮影しましょう。
髄膜腫はMRIにて画像から仮診断されます。
治療としては、脳腫瘍が発生した場所により異なります。
MRI検査により外科手術が可能な部位に腫瘍が発生している場合は、
外科手術による脳腫瘍の摘出が最も有効な治療であると考えられます。
外科的摘出が困難な脳腫瘍に対しては放射線治療も考慮され、
一定の効果は期待されますが、全てのわんちゃんで効果は確認されていません。
抗がん剤や薬で脳腫瘍を小さくすることはできません。
手術以外にできること
脳腫瘍を手術や放射線治療以外で小さくすることはまず不可能です。
しかし、高齢でありそのような積極的な治療が困難な場合には緩和的な治療を考慮します。
緩和的な治療としては、脳のむくみをとり、発作を抑えるための以下のような治療が有効です。
・ステロイド
・抗てんかん薬
・利尿剤(マンニトール)
これらを組み合わせ発作や神経症状を管理します。
特に抗てんかん薬の治療は大切です。
近年よく用いるてんかん薬は、
・ゾニサミド
・レベチラセタム
・フェノバルビタール
などがあり、自宅で万が一起こってしまった時には、
発作止めの座薬や点鼻薬を使用して管理します。
その他に食事や体調管理としてできることに関しては下記のコラムを参考にしてください。
【病気別】犬猫の栄養管理と食事選択 ~腫瘍に負けないごはんは?犬・猫に“肉”を与えていい?生肉の危険性・加熱の利点・手作り食の注意点~

■ グリオーマ(神経膠腫)
- 脳の神経細胞を支える細胞から発生
- 進行が早いことがある
- パグ・フレンチブルドッグなど短頭種に多い
■ 下垂体腫瘍
- ホルモン異常(多飲多尿など)を伴うことがある
- 放射線治療が有効なケースが多い
■ 転移性腫瘍
- 血管肉腫(HSA)などの全身腫瘍が脳に転移
- 緊急対応が必要になることがある
腫瘍の種類により治療方針は大きく変わります。
診断の流れ(MRIは必須)
脳腫瘍の診断には MRI検査 が最も重要です。
■ 診断に必要な検査
- 身体検査・神経学的検査
- 血液検査
- MRI(腫瘍の位置・大きさの確認)
- 必要に応じてCSF検査(脳脊髄液)
CTでは診断が難しいため、
確定的な診断にはMRIが推奨 されます。
MRIによって腫瘍の種類や治療可能性が判断できます。
治療方法
治療は腫瘍の種類・位置・犬の体力によって選択されます。
■ ① 外科手術(摘出術)
- 髄膜腫で特に有効
- 腫瘍の位置によっては摘出可能
- 手術で完治を目指すケースもある
ただし脳深部の腫瘍では手術できない場合もあります。
■ ② 放射線治療
- 髄膜腫・下垂体腫瘍などでよく使われる
- 手術困難な腫瘍にも有効
- 副作用は比較的少ない
放射線単独でも長期コントロールが可能なケースがあります。
■ ③ 内科的治療(薬物療法)
- ステロイド(浮腫の軽減)
- 発作のコントロール
- 鎮痛
- 抗がん剤(グリオーマなどに一部使用)
腫瘍そのものを消す効果はありませんが、
症状の緩和と生活の質(QOL)改善に重要 です。
予後(生存期間の目安)
予後は腫瘍の種類と治療方法で大きく異なります。
- 髄膜腫 + 手術:1〜3年以上
- 髄膜腫 + 放射線:1〜2年
- 下垂体腫瘍 + 放射線:1年以上改善する例も多い
- グリオーマ:数ヶ月〜1年程度
- 転移性腫瘍:数週間〜数ヶ月
内科治療のみの場合、
数ヶ月程度のことが多い ですが、
発作がコントロールできると生活の質を保てる期間が長くなることがあります。
生活で気をつけること
脳腫瘍の犬と暮らすうえで大切なポイントは次の通りです。
- 発作の頻度・持続時間を記録する
- 視力が低下している場合は家具の配置に注意
- 滑りやすい床を避ける
- ストレスの少ない生活環境を作る
- 急変に備え、かかりつけ医と連絡が取りやすい状態にしておく
特に 初めての発作が起きたら早めの受診が必須 です。
よくある質問(FAQ)
Q. MRIは必ず必要ですか?
→ はい。脳腫瘍の診断にはMRIが最も正確です。
Q. 手術と放射線、どちらが良い?
→ 腫瘍の種類と位置で異なります。髄膜腫は外科、下垂体は放射線が合うことが多いです。
Q. 高齢犬でも治療できますか?
→ 可能です。年齢より体の状態と腫瘍の種類が重要です。
Q. 発作だけを薬で抑えるのは危険ですか?
→ 根本治療にはなりませんが、症状管理として重要です。
以下に獣医師の視点から、
治療中の犬に現実的に選ばれているフードをまとめまています。
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