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獣医師が伝える犬猫の病気や治療の考え方

犬の軟部組織肉腫(STS)|症状・診断・手術マージン・再発率・予後を獣医師が詳しく解説

更新日:2025/12/6

犬の軟部組織肉腫(Soft Tissue Sarcoma:STS)は、
皮下や筋肉に発生する 比較的ゆっくり進行する悪性腫瘍 です。

見た目は“ただのしこり”に見えることも多く、
痛みがないため発見が遅れやすい腫瘍でもあります。

しかし、
局所で深く広がる性質があり、再発しやすい特徴 を持つため、
最初の治療選択が予後を大きく左右します。

この記事では、犬のSTSについて、
症状・診断・手術・再発率・予後をわかりやすく解説します。

犬の軟部組織肉腫は効きなれない言葉ですが高齢の犬に比較的よく発生する腫瘍です。

皮膚の下の皮下織や筋肉、脂肪など軟部組織よ呼ばれる部分が腫瘍化したものを総じて指します。

軟部組織肉腫とは

軟部組織肉腫(Soft Tissue Sarcoma ; STS)は、非上皮系悪性腫瘍(肉腫)のうち、以下の特徴を有する腫瘍のことを指します。

・腫瘍組織は偽被膜で被嚢されているが、正常組織との境界は不明瞭で腫瘍組織が筋膜沿いに浸潤性に増殖する傾向がある

・消極的な切除では再発することが多い

・局所浸潤性が強い

・転移は血行性で20%以下、所属リンパ節転移は比較的稀

・組織グレードは再発率および転移率と相関し、外科マージンは再発率と相関肉眼的病変がある場合、化学療法や放射線治療の効果は低い

また、通常は中〜高齢の犬に発生します。

筋肉・脂肪・線維組織など、体の“やわらかい組織”から発生する悪性腫瘍の総称です。

代表的な腫瘍には以下が含まれます。

  • 線維肉腫
  • 脂肪肉腫
  • 神経鞘腫
  • 間葉系腫瘍(未分化肉腫)

共通の特徴として、

  • 局所浸潤性が強い(深くしみ込むように広がる)
  • 遠隔転移は比較的まれ
  • 不十分な切除では再発しやすい

という性質があります。

見た目

軟部組織肉腫は身体の至るところにでき、数週かけてどんどん大きくなります。

写真は耳にできた軟部組織肉腫です。

軟部と言いますが、比較的硬いです。

写真のように表面に大きく盛り上がってきたり、毛が生えたまま皮膚の下の筋肉に固着して触れたり様々です。

よくみられる部位と症状

■ 好発部位

  • 四肢(腕・脚)
  • 背中
  • 脇腹
  • 首周囲
  • 体幹部の皮下・筋肉内

■ 症状

  • しこりがゆっくり大きくなる
  • 触っても痛みがない
  • 歩きにくさ(四肢の場合)
  • しこりが硬く感じる
  • 毛が薄くなる、皮膚が張る

“痛みがないため放置しやすい” のが最も危険な点です。

STSの特徴(再発しやすい理由)

STSは「カプセル」がなく、
周囲の筋肉や皮下組織ににじみ込むように広がる ため、

  • 見た目より広く存在する
  • 手術で取り切れたように見えても一部残りやすい
  • 再発時にはより大きく・深く成長しやすい

という特徴があります。

そのため、
初回手術での広いマージン確保 が非常に重要です。

診断

軟部組織肉腫は急速増大する場合もありますが、一般に数週間かけて緩徐に増大し最終的に巨大化します。

■ ① 身体検査・触診

しこりの大きさ・硬さ・可動性を確認します。

■ ② 針吸引(FNA)

細胞診では確定困難なことが多く、
“嫌疑” 程度にとどまるケースが少なくありません。

■ ③ 画像検査

  • 超音波:内部構造と深部浸潤の確認
  • レントゲン:肺転移のチェック
  • MRI or CT:手術範囲の決定に最も重要

■ ④ 生検(必要な場合)

腫瘍の種類やグレードを評価します。

筋肉(筋膜)に固着することもしばしばあります。

細胞診検査では、採取される細胞が乏しいことが多いため、診断まではできません。

細胞診検査にてSTSが疑わしい場合には、組織生検をおこないます。

大きなSTSである場合には、見た目以上に周囲組織に浸潤していることが多いため、切除範囲を決定するためにCT検査が有用な場合もあります。また、転移がないか、その他の併発疾患がないかを把握するために全身状態の評価(血液検査、レントゲン検査、超音波検査、所属リンパ節の細胞診検査等)も必要です。

上記の検査をもとに臨床ステージを評価します

治療

治療の第一選択は外科手術です。

特に、初回手術で十分な外科マージンを確保して切除することが最も重要です。

再発を繰り返すほどSTSは悪性度が高くなり周囲組織へ広範囲に浸潤するため、外科マージンを確保するために特殊な皮弁が必要になったり、軽度の外貌の変化や機能損傷が起こる可能性が高まります。

四肢や頭部などの十分な外科マージンの確保が困難な部位のSTSは、外科手術(計画的辺縁部切除)と放射線療法を組み合わせて治療をおこないます。

化学療法は、肉眼病変がある場合には効果が乏しく、外科治療と組み合わせて使用するのが一般的です。

特に組織学的グレード3のSTSでは、約40−50%で転移が生じるため、術後の化学療法が推奨されています。

手術(マージンの重要性)

STS治療の中心は 外科手術 です。

最大のポイントは マージン(切除範囲) を十分に取ること。


■ 推奨マージン

  • 1〜3cmの側方マージン
  • 1筋膜以上の深部マージン

腫瘍のグレード・部位・サイズによって調整します。


■ 不十分な切除(狭いマージン)の問題

  • 再発率が大幅に上がる
  • 再発腫瘍は大きく、浸潤性が強くなる
  • 2回目の手術は難易度が上がる

初回手術の質が、その後の予後を大きく左右します。

放射線治療・化学療法

■ 放射線治療

次のケースで有効です。

  • 外科マージンが不十分
  • 再発リスクが高い部位(四肢・首など)
  • 手術が難しい部位

局所コントロールの改善が期待できます。


■ 化学療法(抗がん剤)

STSは 化学療法への反応が弱い ため、
補助的に使用されます。

使用される薬剤の例:

  • ドキソルビシン
  • パラプラチン など

主に 高グレード腫瘍や転移の疑い がある場合に検討します。

グレード別の予後

STSは、病理検査によってグレード(悪性度)が評価されます。

■ グレードⅠ(低悪性度)

  • 成長が遅い
  • 転移率は低い(<10%)
  • 予後は良好(数年以上の生存が期待)

■ グレードⅡ(中等度)

  • 転移リスクはやや上昇
  • 手術+放射線で長期管理可能

■ グレードⅢ(高悪性度)

  • 進行が早く、転移率 40%以上
  • 補助療法を併用しても注意が必要

腫瘍の大きさ・切除マージンの確保・再発の有無が予後に大きく影響します。

生活で気をつけること

  • しこりの大きさを定期的にチェック
  • 触って痛がらないか確認
  • 運動量はその子に合わせて調整
  • 外科手術後は再発の早期発見が重要(2〜3ヶ月ごとに診察)
  • 再発の疑いがあれば早めに受診

STSは 早期対応が予後に直結する腫瘍 です。

予後?手術後どうなる?

一般に、初回の外科手術で十分な外科マージンの確保が可能で、組織学的グレードが1−2だった場合には予後は大変良く、局所再発率は10%程度です。

一方、組織学的グレード3、再発例、リンパ節転移や遠隔転移がある場合には、補助治療が必要です。

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よくある質問(FAQ)

Q. しこりが大きくならなければ様子見でいい?
→ STSはゆっくり成長しても悪性です。早めの検査が推奨されます。

Q. 手術だけで治りますか?
→ 十分なマージンが確保できれば完治を狙えるケースがあります。

Q. 転移は多い?
→ 低悪性度では少ないですが、高グレードでは肺転移が起こることがあります。

Q. 針吸引(FNA)で診断できますか?
→ STSは細胞診だけでは判断が難しく、画像検査や生検が必要です。

まとめ(犬の軟部組織肉腫 STS の要点)

  • ゆっくり大きくなる“しこり”でも悪性であることが多い腫瘍
  • 四肢・体幹・皮下・筋肉内など、どこにでも発生する
  • 痛みがないため発見が遅れやすい
  • 局所浸潤性が強く、見た目より深く広がる特性がある
  • 最大のポイントは 「初回手術のマージン」
    • 側方 1〜3cm
    • 深部は筋膜 1枚以上
  • 不十分な切除は 高確率で再発し、再発腫瘍はより治療困難
  • 転移は比較的まれだが、高グレードでは肺転移が起こる
  • 術前には CT/MRI で広がりを把握することが重要
  • 放射線治療は
    • マージンが取れない場所
    • 再発リスクが高い場合
      に特に有効
  • 化学療法は効果が限定的だが、高悪性度で併用されることがある
  • グレードにより予後が大きく異なる
    • 低悪性度:生存数年以上
    • 高悪性度:転移率高く注意
  • 術後は 2〜3ヶ月ごとの定期検診で再発チェック が不可欠
  • しこりに気づいたら、“痛くないから大丈夫” と思わず早めの受診 が重要

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