犬の肛門嚢アポクリン腺癌とは比較的稀な腫瘍ではあり肛門周囲腫瘍の17%、全皮膚腫瘍の2%を占める腫瘍です。
発症の平均年齢10-11歳で性差や好発犬種がありません。肛門嚢に出来る良性腫瘍は極めて稀なので、肛門嚢に腫瘍ができている場合は悪性の可能性が高くその多くはアポクリン腺癌と呼ばれます。ちなみに、肛門嚢とは、肛門の4時8時の位置にある臭い袋であり、よく肛門腺(おしり)絞りをしている場所です。左右に1対ずつあります。
肛門嚢アポクリン腺癌は局所浸潤性が高く、所属リンパ節(お腹の中の腰下リンパ節)に高い確率で転移しています。見つかった時点で46-96%転移していると言われています。1cm程度でもリンパ節転移成立していることは多く、リンパ節以外にも肺、肝臓、脾臓、骨に転移することがあります。またこの腫瘍に伴って起こる病気として(腫瘍随伴症候群といいます)高Ca血症が約27%で認められます。では、早期発見のためにどのような症状に注意すべきでしょうか。
症状
まず、肛門嚢アポクリン腺癌と診断された約40%は無症状でたまたま病院またはお家やトリミングで見つかっています。残りの60%では、肛門周囲の不快感、腫脹、出血や高Ca血症に伴う多飲多尿、食欲不振、嗜眠傾向、また腰下リンパ節の腫大による骨盤腔の閉塞による便秘や便の形の変化が見られます。そのような症状がみられる場合はなるべく早く動物病院で診てもらい下記の検査をしてもらいましょう。
診断
・直腸検査―肛門嚢の部位に硬い腫瘤
・胸腹部レントゲンー肺転移がないかどうか
・血液検査―高Ca血症がないかどうか
・腹部超音波検査―腰下リンパ節などへ転移がないかどうか
・CT検査―上記がより正確に状態把握でき手術計画を立てられる。
・細胞診―腫瘤が肛門嚢アポクリン腺癌かどうか確かめる。
似た病気として、肛門周囲腺腫や肛門周囲腺癌が存在し、前者は去勢手術が済んでいない雄犬において肛門周りに発生します。
これらの検査で肛門嚢アポクリン腺癌の腫瘍の診断がつき、ステージングを行ったうえで治療方針を決めていきましょう。
ステージ
1 腫瘤2.5cm以下で転移なし
2 腫瘤2.5cm以上で転移なし
3Aリンパ節転移があり4.5cm以下
3Bリンパ節転移があり4.5cm以上
4遠隔転移がある
治療
いずれのステージにおいても外科 + 補助治療が基本となります。まずは肛門周囲の腫瘤を切除すること。この際の局所の再発率は約25%ですが、周りには直腸や大切な血管や神経があるためあまりに大きく切除することはできません。また、リンパ節が腫れている場合は、開腹手術によってリンパ節の摘出も行います。開腹手術に抵抗があるかもしれませんが、このリンパ節が大きくなると、ウンチができなくなったり尿が出なくなり腎不全になり命を落としてしまいますので、重要な切除となります。
外科手術を行うと平均500日以上生きることが可能ですが、外科手術をしない場合はその約半分くらいになってしまいます。この際に、どうしても外科手術ができない場合には放射線照射という選択肢があります。詳しくは別のコラムにまとめます。 手術のあとは抗がん剤を補助治療として期待し行います。 報告は少ないですがミトキサントロンやカルボプラチンという抗がん剤を行うことで約900日以上再発なく過ごすことが可能となります。また、トセラニブ(パラディア)という飲み薬も約80%くらいの子で効果が期待できます。
ごんた先生からのコメント
肛門嚢アポクリン腺癌は悪性の腫瘍であり転移などで命に関わる腫瘍ではあるが、外科手術や抗がん剤のなどの補助治療に反応し比較的長く元気に過ごしていけることも多い腫瘍です。その中で、ポイントはうんちがしっかりできるように肛門のできものをしっかりとること。また、お腹の中のリンパ節が腫れている場合はその摘出もセットで行い、その後の抗がん剤を検討することで、長生きすることも可能であるので、転移していると言って諦めないことが大切です。
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