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猫の鼻腔内リンパ腫に放射線?抗がん剤?その症状と余命

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猫の鼻腔に発生する腫瘍はほとんどが悪性であり、リンパ腫がも っとも多く、その他に腺癌 扁平上皮掘 未分化癌という上皮系腫瘍が続く。稀に軟骨肉腫線維腫,骨肉腫などの非上皮系腫瘍の発生も認められる。多くの猫の鼻腔腫瘍は犬の鼻腔腫瘍と同様に局所で悪さをするが、一部の鼻腔リンパ腫では腎臓などに転移を認めたり、治療中に急速に遠転移が進行することもある 。鼻腔リンパ腫の年齢は8~11歳と報告されているが 、2~3歳という若齢での発生も認められる。以前はFeLV(猫白血病ウイルス)感染に関連する前縦隔型や多中心型リンパ腫が多くを占めていたが、ワクチンの普及や飼育環境の変化により減少している 。鼻腔リンパ腫の猫のほとんどは FeLV陰性である 。猫の鼻腔リンパ腫の免疫表現型はほとんどが B細胞型である。

特徴的な症状

症状として、数週~lカ月前から徐々に症状が進行し,主な臨床症状は鼻汁、鼻出血、顔面変形、食欲不振、眼脂・流涙、くしゃみなどです。鼻の症状は抗菌薬.ステロイド薬の使用で一過性に改善することがあるため.薬剤に対する反応を認めるからとい って腫瘍ではないとは限らない。さらに子猫の時から細菌・ウイルス性の慢性鼻炎が認められている場合は、腫瘍の診断が遅れることがある。数力月にわたり持続する鼻徴候また片側の鼻からの症状や顔面変形などを認めた際は,腫瘍を考え、明らかな顔面変形は,一部のカビ感染を除き腫瘍が疑われる。

診断のための検査

肺や胸腔内リンパ節への転移を確認するために胸部レントゲン検査も実施するが、診断時には多くの症例で転移はしていない。腹部エコー検査は、腎臓やリンパ節への転移の有無を

確認するために行う。腎臓転移の典型的な画像としては、両側腎臓の不整と腫大,被膜下の低エコー層を有するなどである。

麻酔を必要としない検査で腫瘍を疑うもしくは否定できない場合には全身麻酔下で病理組織学的検査およびCT検査を早期に実施することを検討する。全身麻酔下での CT検査の主目的は腫瘍の転移の評価である腫瘍の進行度によりさまざまであるが、鼻甲介の破壊、上顎骨、鼻中隔の破壊が認められる。

重度の細菌性鼻炎や真菌性鼻炎によ っても鼻甲介が破壊されることもある。とくにクリプトコ ックス性鼻炎は腫瘍と類似し、画像のみでの鑑別はできない。通常腫瘍周囲には炎症や鼻汁も認められ、腫瘍が大きい場合には壊死も伴う。

麻酔下での鼻腔生検による病理組織学的検査で腫瘍は確定される。その際に採取される細胞診検査によってもリンパ腫を診断することが可能な場合も多い。

正常のリンパ球と比べて大きなリンパ球がたくさん採取される。この所見はリンパ腫と確定的である。鼻腔腫瘍の生検は発生部位によって外鼻孔からのストロー生検、皮膚膨隆部のパンチ生検、鼻咽頭経由内視鏡下生検などを用いる。生検の前には血が止まるかどうかの血小板数測定および血液凝固線溶検査を必ず実施する。

治療として放射線?抗がん剤?ステロイド?

治療は進行ステージによって考える。

鼻腔リンパ腫の進行ステージとは、

ステージ1 片側に鼻腔に限局し、骨破壊はない

ステージ2 骨破壊がある

ステージ3 眼など多臓器へ浸潤

ステージ4 し板(鼻と脳の境目)の破壊がある

である。

猫の鼻腔リンパ腫の治療の軸は、放射線治療と抗がん剤となる。

  • ステージが進行していない、鼻腔に限局したリンパ腫

この場合は放射線治療がまず優先される。リンパ腫の放射線治療の反応性はよく、ステージ1の鼻腔リンパ腫の場合は放射線照射によって約半数で長期間元気に過ごすことができ、根治的な経過をたどることも多い。約半数は1~2年以上の生存が可能となる。

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放射線治療はおよそ週に1~2回で1回につき6~8Gyという強さで照射する。この合計照射が32Gy以上あてれる方が長生きできる。

しかし、鼻腔腫瘍は約1/3~半数で早期に全身、特に腎臓に転移をする。

その場合は、抗がん剤を組み合わせた治療が必要となる。

  • 多臓器にも転移している場合

腎臓に転移をしている場合は放射線のみで腫瘍をコントロールすることは困難であり、他のリンパ腫同様、抗がん剤治療が推奨される。ただし、①と比べると予後は限られており、抗がん剤のみの治療で約3~5ヵ月と報告されている。しかし、抗がん剤の効果はその子によって様々であるので長生きする子もいれば、効果が少ない子もさまざまであることが事実であり諦めるべきではない。

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抗がん剤の治療や流れについては下記のコラムにまとめています。

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