診察後に獣医師が伝える犬猫の病気や治療の考え方

猫の乳腺腫瘍(乳がん)と手術|転移率が高い理由、片側・両側切除の違い、治療の流れ

更新日:2025/12/9

猫の乳腺腫瘍(乳がん)は、
約80〜90%が悪性 といわれる非常に危険な腫瘍です。

犬とは異なり、
「ほとんどが悪性腫瘍(転移するタイプ)」 であるため、
治療はスピードが重要になります。

この記事では、
猫の乳腺腫瘍の特徴、悪性率が高い理由、転移しやすい部位、手術方法(片側乳腺切除・両側切除)、化学療法、予後
を獣医師がわかりやすく解説します。

5歳ごろに避妊手術をした猫ちゃん。

12歳ごろから乳腺の一部にしこりがあり様子を見ていたが、どんどん大きくなってきて、

猫ちゃんも気にして舐めたり、出血したりし始めていた。

しこり

腫瘍は大きく直径10cmほどあり、表面は自壊して出血していた。

腫瘍は3cm以上のためステージングではT3(T1~3)と評価。

細い針を腫瘍に刺して行う細胞診検査で、悪性を疑う乳腺細胞が採取され乳がんを強く疑った。

血液検査

内臓の数値=腎臓、肝臓などは異常はなかったが、

腫瘍の炎症による白血球の増加(WBC:5万)や炎症マーカー(SAA)の増加に加え、

出血や慢性的な炎症に伴う貧血(Ht25%)を認めていた。

胸部レントゲン検査

レントゲン検査では、肺は綺麗であり、転移を疑う所見を認めなかった。レントゲンでは数mmの転移は否定できないが、遠隔転移はない(M0)と評価した。

脇のリンパ節が大きく腫れておりリンパ節の転移はしている可能性が高い(N1)と評価。

乳腺片側摘出術で治療した13歳の高齢猫ちゃん

乳がんによって本人が痛みや不快感、貧血によるしんどさを認めていること。

また、乳がんは悪性の腫瘍なので今後進行していくことが予想されるが、すぐに命を落とす状況ではないこと。

腫瘍はどんどん大きくなり、自壊や出血で本人も飼い主様も苦しい生活になりうること。

ステージ3以上の場合はステージ1~2の猫ちゃんで期待できる根治や数年以上の余命は期待できないかもしれないが、

数ヵ月~1年以上元気に過ごすことができる可能性があること。

手術は大きな手術にはなるが、数日の周術期を乗り切れは、元気な生活が取り戻せること。

これらをを飼い主様と十分に話し合い、手術を行いました。

手術後

数日痛み止めの点滴を含めた入院を行いました。

手術による出血により少し貧血を認めたが、回復傾向を見せ3日で退院できました。

手術後は少し活動性や食欲が落ちるが、多くは一過性であり自宅にて次第に回復した。

1週間後には抜糸を終了した。

残った乳腺に関しては1カ月ほど体の回復を待って行うこととなった。

このように手術への検査や覚悟、乗り越える周術期の合併症や負担はあるが、

それによってしか乗り越えられないものや、乗り越えた先の生活があると思う。

さらに今後転移が出てこないために抗がん剤の治療を行うこともあり、

その甲斐あって数年間元気に過ごせることも珍しくない。

不安は多いが一歩一歩乗り越えるための一助になれば。

猫の乳腺腫瘍とは?ほとんどが悪性腫瘍

猫の乳腺腫瘍は、犬と比べて悪性率が非常に高いことが特徴です。

  • 悪性(癌):80〜90%
  • 良性:10〜20%

悪性腫瘍の多くは 転移しやすく、進行が早い ため、
「しこりに気づいたら早期の手術」が重要になります。


悪性率が高く、進行が早い理由

猫の乳腺腫瘍は次の性質を持っています。

  • 急速に大きくなる
  • リンパ節・肺へ転移しやすい
  • 皮膚に浸潤しやすく潰瘍化しやすい
  • 放置すると数週間で急に悪化することがある

特に 腫瘍の大きさが予後を大きく左右 します。

  • 2cm未満 → 比較的予後良好
  • 2〜3cm → 中間
  • 3cm以上 → 転移率・死亡率が大幅に上昇

早期発見・早期手術が最も大きなポイントです。


乳腺腫瘍の主な症状(確認すべきポイント)

  • 乳腺ラインにしこり
  • 片側・両側に複数出ることも
  • 表面がデコボコした硬いしこり
  • 皮膚が赤い・ただれる(潰瘍)
  • 出血・におい
  • しこりが急速に大きくなる

猫は痛みを隠すため、発見が遅れやすい傾向があります。


猫の乳腺腫瘍の検査方法

1. 身体検査(触診)

大きさ・数・左右差・皮膚の状態をチェック。

2. レントゲン

肺転移の有無を確認。

3. 超音波検査

局所リンパ節の腫れ、腫瘍の広がりを確認。

4. 血液検査

麻酔リスクや臓器機能を評価。

5. 病理検査(手術後)

唯一の確定診断方法。
悪性度・腫瘍タイプがわかり、予後判断に重要です。

※細胞診(針で取る検査)は診断精度が低いため、
猫の乳腺腫瘍では 手術を前提に行うケースが多い です。


治療の中心は「手術」|片側 or 両側切除

猫の乳腺腫瘍の治療では、
外科的な切除(乳腺切除術)が基本かつ最も効果的な治療 です。

片側乳腺切除(ユニラテラル・チェーンマステクトミー)

片側の乳腺をまとめて切除します。

【適応】

  • 片側に1個〜複数の腫瘍
  • 腫瘍が2〜3cm未満
  • 進行が軽度〜中等度

両側乳腺切除(ビラテラル)

左右の乳腺をすべて切除する方法。

【適応】

  • 両側に多発
  • 高悪性度・3cm以上
  • 片側に複数あり再発リスクが高い
  • 若い子で積極的治療を希望する場合

※通常は左右別々に行い、数週間あけて手術することが多いです。


乳腺腫瘍の手術は「広い切除」が重要

猫の乳腺腫瘍は局所浸潤が強いため、
腫瘍だけを取る「部分切除」では再発しやすく推奨されません。

  • 広い範囲の切除
  • 皮膚も十分に含めて切る
  • 腫大したリンパ節も同時に切除

このように広めに切除することで、
再発リスクを大きく下げることができます。


術後の治療(化学療法)

猫の乳腺腫瘍では、
術後に化学療法(抗がん剤)を行うケース があります。

使われる薬の例

  • ドキソルビシン
  • カルボプラチン

適応となるケース

  • 高悪性度
  • 大きい腫瘍(2〜3cm以上)
  • リンパ節転移あり
  • 浸潤が強いタイプ

化学療法により再発・転移のリスクを下げられる場合があります。


手術しない場合のリスク

  • ほぼ確実に進行する
  • 数週間〜数ヶ月で急に大きくなる
  • 潰瘍化し出血・感染
  • 肺・リンパ節に転移
  • 痛みで生活の質が低下
  • 命に関わる

猫の乳腺腫瘍は放置で改善することはなく、
治療の遅れが命に直結します。


予後の目安(腫瘍の大きさが最重要)

猫の乳腺腫瘍の予後は、
腫瘍の大きさ と 悪性度 で大きく変わります。

腫瘍の大きさ予後の傾向
2cm未満手術で比較的良好
2〜3cm中間
3cm以上転移率・死亡率が大幅に上昇

早期発見・早期手術が最も予後を改善する方法です。


よくある質問(FAQ)

Q. 手術すれば治りますか?

A. 良性なら治癒します。悪性でも早期に切除すれば予後は改善します。

Q. 手術は片側?両側?

A. 腫瘍の数・大きさ・悪性度で決まります。獣医師と相談してください。

Q. 高齢ですが手術できますか?

A. 全身状態が安定していれば可能です。高齢だからこそ早期治療が大切です。

Q. 抗がん剤は必要?

A. 高悪性度や大きな腫瘍では推奨されます。

Q. 放置したらどうなりますか?

A. 進行し、痛み・出血・転移を起こし命に関わります。


まとめ

  • 猫の乳腺腫瘍は 80〜90%が悪性
  • 進行が早く、早期手術が予後を左右する
  • 基本治療は 広い範囲の乳腺切除手術
  • 両側切除が必要なケースも多い
  • 病理検査で悪性度や予後の指標がわかる
  • 術後の抗がん剤が適応となる場合もある
  • 放置は危険で、命に関わる

猫の乳腺腫瘍は「早く見つけて、早く治療する」ことが最も重要です。

以下に獣医師の視点から、
治療中の猫に現実的に選ばれているフードをまとめまています。

▶︎ 猫に配慮したフードの考え方を見る

併せて読みたい記事

更新日:2026/6/13キャットフードは「何を選ぶかで寿命が変わる」 と言っても過言ではありません。しかし、種類が多すぎるネットは宣伝だらけ“何が良いか”がわからない…[…]

最新情報をチェックしよう!