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猫の肝臓癌~末期症状と治療~

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猫ちゃんが食欲不振や嘔吐を認め、皮膚粘膜や尿が黄色くなっている、そんなとき血液検査をすると黄疸を認め、エコー検査で肝臓にできものができている。

比較的よく遭遇する状況です。そのときの猫の肝臓のできものの考え方についてまとめます。

猫の肝臓のできもの

猫ちゃんは犬と比べて肝臓には原発性の癌が多く 、肝臓への転移病変が多い犬とは対照的
です 。

肝臓の原発性腫瘍には、

・肝細胞癌

・胆管癌

・神経内分泌性あるいはカルチノイド

・間葉系

に分類されます 。

犬と比べ猫ではこの中でも圧倒的に胆管癌が多く、肝細胞腫瘍は少ないと言われています。

そのためここからはその胆管癌について詳しくまとめていきます。

胆管がんとは❔

胆管がんとは肝臓のなかにある胆管と呼ばれる肝臓で作った液の胆汁を運んでいる管が腫瘍化したできものです。

この胆管がんには悪性の胆管癌と良性の胆管腺腫が約半々で存在し、稀にリンパ腫や肥満細胞腫と呼ばれる猫で多く発生する腫瘍が併発することもあります。

主に高齢でみられるとが多く、良性の胆管細胞腺腫の発症が多く、

肝胆道系腫瘍の 50%以上にのぽるとされていますが、悪性転化の可能性も言われており良性悪性の判断は困難です。
肝臓の中には嚢胞状の構造を示し、周囲の臓器を圧迫するまで大きくなることで、

胃などを圧迫し食欲不振や嘔吐などの症状を引き起こします。

胆管細胞癌は 80%と多くの症例で転移がみられ腹膜、肺、 リンパ節への転移が多いが,横隔膜、脾臓、 膵臓、など様々な臓器への転移も報告されています 。

診断

胆管がんを疑い診断するためには、身体検査、血液検査、エコー検査、細胞診検査が必要です。

身体検査では特別な異常は認めませんが、まれに腫瘍に伴った全身性の脱毛(腫瘍随伴性脱毛)を認める場合があります。

血液検査では、肝酵素値の上昇な ど非特異的な異常がみられることが多く、ビリルピンの上昇がみられることもあります。

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エコー検査が最も大切で、多くは肝臓の中に嚢胞構造が認められ、複数存在していることがあります。肝臓内にいくつ、どの程度、どのように存在しているかが手術などの治療方針を決定するうえで大切となります。必要に応じてCT検査も検討します。

細胞診の検査では胆管癌の場合は特徴的な上皮系の細胞集塊が認められます。肥満細胞腫やリンパ腫などのほかの腫瘍が存在しないか確認します。この検査で良性悪性を決定することまでは困難です。

では、ここまでの検査で胆管がんが疑われる場合どのように治療を考えるかお話しします。

胆管がんの治療方針と外科手術

胆管がんが疑われる場合はまず何よりも手術が可能かどうか、が大切です。

手術が可能かどうかは、

・腫瘤の数と位置

・大きな血管の走行

・転移や全身状態

・輸血の可否

をもとに検討します。

肝臓の手術は出血が多く予想されるため、犬の場合約2割、猫の場合約4割の手術で輸血を必要とするので、必ず輸血の準備が必要となります。

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また手術は難易度の高い手術になりますので可能な施設や外科医が限られていますので、十分な相談と腫瘍医へのセカンドオピニオンも検討いただくことで適切な治療を考えることが可能です。

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手術が困難な場合と末期

手術を検討した結果手術が困難な場合は腫瘍に対してできること、例えば抗がん剤や放射線治療などの有効な治療の報告はなく、対症治療が中心となります。

起こりうることと最後の最後までできることとして、

・食欲不振や嘔吐ーできものが胃などを圧迫して起こっていることが多いので栄養管理や胃腸薬を使用します。

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・肝性脳症ー肝機能低下によって毒素が体にたまるので肝臓を保護する薬や発作などを起こさないようにします。

・門脈圧亢進(血管圧迫)による腹水や出血ー腹水を抜いたり利尿剤、輸血などによってケアします。

予後

良性腫瘍の場合には外科的切除により予後良好と考えられます。そのため診断で述べたように、肝臓にがんがあるからもうできることはない、ではなくしっかり検査をしてどのような部分にどうできているのかをしっかり見定めて考える必要があります。

胆管細胞腺腫(良性)で 8例の限局性.、2例の多発性の症例で外科的切除を行い10例中 9例で完全切除ができ予後が良好だったとの報告があります(生存期間中央値22カ月)。多発性であっても胆管細胞腺腫の場合は完全な外科的切除により予後が良好であると考えられます。また経過観察した場合の悪性転化の可能性や腫瘍の増大によ る外科的切除のリスク増加を考慮すると,胆管細胞腺腫は早期に外科的切除することが推奨されます。

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