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リンパ腫が完治した猫ちゃんのおはなし ~最後まであきらめない大切さ~

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前回、猫ちゃんの一般的なリンパ腫のお話をしました。

リンパ腫は猫ちゃんにとっても多い腫瘍であり、悩ましい病気ですが、過去に抗がん剤治療によって完治した猫ちゃんがいます。

なかなか完治が見込めない病気ですが、猫ちゃんはとても強い生き物ですので最後まで諦めないことが大切であると感じます。

今回はその完治したリンパ腫の猫ちゃんが、どんな治療でどんな経過で完治できたのかをお話しします。

完治と寛解のちがい

前のコラムでもお話ししましたが、リンパ腫では完治することは極めて稀であり、見た目上腫瘍が体に存在しないという一見治ったかの状態を寛解と言います。

抗がん剤や外科、放射線による治療を駆使してこの寛解という状態を目指すことになります。

寛解状態は腫瘍は体の中で少数で眠っている状態ですので、ほとんどの場合数か月から1年以内には再発します。

完治とは、腫瘍が体から完全に消失した状態であり、数年間(生涯)再発しない状態を指します。

猫のリンパ腫において完治する確率は約5%前後と言われていますので、まずは寛解を目標に、完治という奇跡を信じて治療をすることになります。

完治した猫ちゃんのおはなし

実際に数多くの猫ちゃんのリンパ腫を治療してきましたが、リンパ腫が完治した猫ちゃんに遭遇した経験をお話しします。

雑種の3歳でFeLV陽性の猫ちゃんが、ほんの少しの呼吸様式の変化を感じ動物病院に連れてこられました。レントゲン検査にて胸の中に小さな白い影がひとつ見つかりました。

通常3歳の猫ちゃんに腫瘍が発生することは極めて稀ですが、FeLVウィルスを保有する猫ちゃんは若くても腫瘍が発生する可能性があります。

リンパ腫の診断には通常、細胞診と呼ばれる細胞の検査が必要ですが、この猫ちゃんはまだ病変が小さく検査ができませんでした。

少し様子を見る選択肢もありましたが、FeLV陽性である事実と、腫瘍の場合は進行がとても早いため腫瘍の初期であり早期発見である可能性を考え、飼い主様と相談の上、診断および治療(減容積)を目的として開胸手術による腫瘤の摘出を行いました。

摘出した腫瘤の病理検査の結果、悪性リンパ腫(縦隔型)と診断され、摘出手術10日後より抗がん剤治療(UW-25/CHOP療法)を開始しました。

約半年間の抗がん剤治療を終え、CT検査において腫瘍の再発がないことを確認して、一旦治療をストップし、経過観察することにしました。

その後定期的な検査を実施するも腫瘍の再発を認めず、5年経過した8歳になっても腫瘍の再発は認めませんでした。つまり、リンパ腫が完治した訳です。

その後もリンパ腫に悩むことなくぽっちゃりとふくよかな体型になり、元気に過ごしていました。

完治を目指すためには?

まず、リンパ腫は完治を目指すわけではなく寛解を目標にする病気です。

しかし、完治した猫ちゃんには完治することができた根拠もあります。

そのポイントをまとめます。

・早期発見であったこと

・早期の外科摘出と強力な化学療法により腫瘍を根絶できた

・若く体力がある猫ちゃんであったこと

・リンパ腫の悪性度と抗がん剤感受性

上記の前半二つが何よりも重要です。

リンパ腫はとても増殖スピードが速い腫瘍ですので、またたく間に全身に広がります。

実際に多くの猫ちゃんは、症状が出て少し様子見て、病院に来院し診断し治療を行うまでにかなりの時間が経過しています。腫瘍の量が多ければ多いほど根絶できる可能性は下がります。

動物は言葉を話すことができないので、早期発見は簡単そうでとても困難です。

特に猫は強い生き物なので、明らかな症状が出始めたころには病態がある程度進行していることがほとんどです。

そのため、定期的な検査や、普段から自宅でよく様子を観察し、動物が示すささいなサインに気づいてあげることが大切です。

最近CMで流れている「飼えない数を飼ってはいけ~ない」というのもとても納得します。

そしてなにより猫ちゃんで大切なのは、

早期から適切なごはんを良く食べて栄養をつけること。

腫瘍は想像以上にからだの栄養を奪うので痩せてしまいます。

おろそかにしがちな栄養管理が治療を大きく支え左右します。

必ずすべき腫瘍の犬猫への栄養管理

【病気別】犬猫の栄養管理と食事選択 ~腫瘍にいいごはん?~

まとめ

リンパ腫はとても悩ましい病気であるとともに、今回のお話しした猫ちゃんのように乗り切ってしまう子がいるのも事実です。

ただし、その過程には様々な条件があり、奇跡のようなことも起こっています。

動物は言葉は話しませんが、様々なサインを出してくれています。診察も実は多くは問診の時点で病気の見当がついています。

普段からいかによく観察しそのサインを気づいてあげ、また最後まであきらめないことが動物の計り知れない奇跡を生む力となります。

同じように見えてもその子その子で遺伝子レベルの違いも存在しています。

これからの生活に少しでも参考になればと思います。

これからも、さまざまな犬猫に対しためになる、普段お話ししない内容をお話ししていこうと思います。

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