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獣医師が伝える犬猫の病気や治療の考え方

犬の脂肪腫とは?|症状・診断・治療(手術するべきか)・予後

更新日:2025/12/9

犬の皮膚の下に、やわらかい「しこり」が見つかると多いのが
脂肪(しぼう)のかたまりからできる腫瘍「脂肪腫(しぼうしゅ)」です。

脂肪腫の多くは良性で、命に関わる腫瘍ではありません。
しかし、

・どこまで様子を見てよいのか
・手術するべきか
・放置すると危険なケースはあるのか

と心配される飼い主さんは少なくありません。

この記事では、犬の脂肪腫について

脂肪腫とは何か
できやすい場所・見た目の特徴
診断方法(細胞診など)
手術が必要になるケース
再発や予後

を獣医師がわかりやすく解説します。

脂肪腫とは?
脂肪腫は脂肪組織の良性腫瘍で、中年齢~老齢において多く発生する皮膚腫瘍です。

・中年齢〜高齢の犬で多い
・比較的ゆっくりと大きくなる
・やわらかく、触ると少し動くことが多い
・転移することは基本的にありません

体のどこにでもできますが、特に

・胸の横
・お腹
・わきの下
・太もも

など、皮下脂肪が多い場所に見つかることが多いです。

一部には、筋肉の間に入り込む「筋間脂肪腫」というタイプもあり、
こちらは歩き方に影響したり、深い位置に広がるため注意が必要です。

脂肪腫は全身のあらゆる部位で発生する可能性があり、胸部、腹部、四肢、腋窩が好発部位です。脂肪腫の大きさや形状は様々であり、成長は緩徐で柔らかい良性腫瘍です。

脂肪腫の約7%は多発性で、体表に複数認められる場合もあります。

また、一部の脂肪腫は筋間脂肪腫と呼ばれ、脂肪腫が筋肉の間に発生することもあります。

特に大腿部における発生が多いとされています。

どんな症状が出る?脂肪腫の特徴

脂肪腫そのものは、多くの場合「無症状」です。

・触るとやわらかいコブのようなもの
・痛みやかゆみは通常なし
・表面の皮膚は普通と変わらない見た目

飼い主さんがシャンプーやブラッシングの時に
「なんとなくできものを触った」ことで見つかることが多い腫瘍です。

ただし、次のような場合は注意が必要です。

・短期間で急に大きくなっている
・硬くて動きにくいしこり
・表面の皮膚が赤くなっている、熱を持っている
・歩き方が変わった、痛そうにしている

この場合、脂肪腫以外の腫瘍である可能性や、
筋間脂肪腫で機能障害が起きている可能性もあります。

脂肪腫の診断方法(細胞診が基本)

脂肪腫かどうかは、「触った感触」だけでは確定できません。
見た目がよく似た腫瘍(悪性腫瘍)があるため、必ず検査で確認します。

主な検査は次のとおりです。

■ 触診
・大きさ
・硬さ
・動きやすさ
・痛みの有無

を確認し、その他のしこりがないか全身もチェックします。

■ 細胞診(最も一般的な検査)
細い針を刺して細胞を少量吸い取り、顕微鏡で観察します。

・多くの場合、無麻酔で数分〜十数分で実施可能
・採取した細胞に、脂肪滴が豊富に見られれば「脂肪腫」と診断

■ 追加検査が必要なケース
・細胞の採取が難しい
・悪性腫瘍が疑われる
・筋肉の深い場所に広がっている疑い

このような場合は、超音波検査・レントゲン検査・CT検査、
あるいは全身麻酔下で一部を切り取る「生検(組織検査)」を行うこともあります。


脂肪腫は臨床経過や腫瘤の形態的特徴に加え、腫瘤の細胞診検査において脂肪滴が採取されることで診断しますほとんどの場合は無麻酔で、数十分あれば病院内で検査し診断可能です。

図1:細胞診検査での脂肪滴

治療

治療方針:様子を見るべき脂肪腫と、手術を考える脂肪腫

脂肪腫は「必ず取らなければいけない腫瘍」ではありません。
良性であることが確認できていて、犬の生活に影響がなければ、
定期的に大きさを確認しながら経過観察することも多いです。

一方で、次のような場合は手術(外科的切除)を検討します。

■ 手術を考えたほうがよい脂肪腫

・短期間で急に大きくなっている
・直径が大きくなり、歩行や動作の妨げになっている
・わきの下や内股など、擦れて痛みが出そうな場所
・首や胸の内側など、将来さらに大きくなると手術が大がかりになる場所
・筋間脂肪腫で、跛行(びっこ)や痛みが出ている場合
・見た目や触った感じが典型的脂肪腫と異なる場合

■ 経過観察でよいことが多い脂肪腫

・小さくて、数ヶ月ほとんど大きさが変わらない
・痛みや歩き方への影響がない
・触診・細胞診で脂肪腫と確認済み
・ご家族も経過観察に安心できている

どちらの方針が良いかは、
犬の年齢・持病・麻酔リスク・しこりの場所・ご家族の希望などを踏まえて総合的に判断します。


良性の腫瘍で転移も起こさないため経過観察を行うことが多いですが、脂肪腫が身体機能や運動性を低下させている場合や、成長が早いまたはご家族にとって煩わしい存在である場合には外科的切除を考慮する必要があります。

ただし、筋間脂肪腫の場合は腫瘤増大に伴い跛行を示す場合があり積極的な切除手術が必要となる場合もあります。

ほとんどの脂肪腫は外科的切除によって根治可能です。

脂肪腫の手術(外科的切除)について

脂肪腫の多くは、外科的に切除すれば「根治」が期待できる腫瘍です。

■ 手術のイメージ

1)全身麻酔下で、脂肪腫のある部分の皮膚を切開
2)脂肪腫を周囲の組織から丁寧にはがして摘出
3)内部を洗浄し、縫合

筋間脂肪腫や大きな脂肪腫の場合は、
周囲の筋肉・血管・神経との位置関係に注意しながら慎重に手術を進める必要があります。

■ 手術のリスク

・麻酔リスク(年齢・心臓・腎臓などの状態により異なる)
・出血や感染
・傷口の腫れ・血腫

術前に血液検査やレントゲン検査などで、
全身状態を確認したうえで手術の是非を判断します。

予後


ほとんどの脂肪腫は外科的切除によって根治可能です。

ただし、切除後に同部位または他の部位に新たに脂肪腫が発生することがあります。脂肪腫は良性腫瘍であり、予後は非常に良好です。

・完全に切除できた脂肪腫は、同じ場所から再発することは少ない
・ただし、体質的に脂肪腫ができやすい犬では、別の場所に新たな脂肪腫ができることがあります

「1つ見つかったら、今後も時々全身を触ってチェックする」
という意識を持っていただくと安心です。

筋間脂肪腫の場合は、切除が難しく再発しやすいケースもあります。
この場合は、術前に画像検査を行い、切除範囲や術後のリハビリについて
よく相談してから手術を進めることが大切です。

特にわんちゃんは遭遇が多い腫瘍になりますので、柔らかいできものを見つけた場合はぜひ一度ご相談ください。

飼い主が自宅でチェックしておきたいポイント

日常の健康チェックとして、次の点を意識してみてください。

・全身を手でなでて、左右差がないか、しこりがないか確認する
・しこりの「大きさ」「硬さ」「位置」を覚えておく
・1〜2ヶ月ごとに大きさが変わっていないか見る
・赤くなっていないか、熱を持っていないか確認する
・歩き方や動き方が変わっていないか観察する

気になるできものを見つけたら、
「いつから」「どのくらいの速さで大きくなっているか」も、診察時に役立つ情報になります。

よくある質問(FAQ)

Q. 脂肪腫はがん(悪性腫瘍)ですか?
A. 脂肪腫は良性腫瘍で、転移することはありません。ただし、見た目の似た悪性腫瘍も存在するため、「しこり=脂肪腫」と決めつけず、必ず検査で確認することが大切です。

Q. どのくらいの大きさになったら手術すべきですか?
A. 大きさだけでなく、場所・成長スピード・歩き方への影響・麻酔リスクなどを総合的に見て判断します。小さいうちのほうが手術は楽ですが、無理に全ての脂肪腫を取る必要はありません。

Q. 高齢でも手術できますか?
A. 術前検査で心臓や腎臓などの状態をチェックし、安全に麻酔できると判断されれば、高齢犬でも手術が可能なことは多いです。リスクとメリットを主治医とよく相談してください。

Q. 触ると大きくなったり、悪化したりしませんか?
A. 軽く触る程度で大きくなったり悪性化したりすることはありません。むしろ、普段から触って状態の変化に気づくことが大切です。

Q. ダイエットをしたら脂肪腫は小さくなりますか?
A. 体重減少で周囲の脂肪が減ることで、相対的に目立ちにくくなることはありますが、脂肪腫そのものが消えるわけではありません。

まとめ(この記事の要点)

犬の脂肪腫は、皮膚の下にできる脂肪由来の良性腫瘍です。
多くはゆっくり大きくなり、命に関わることはありません。

・中高齢の犬でよく見つかる
・やわらかく、痛みのないしこりであることが多い
・診断には針を使った細胞診が有効
・生活に支障がなければ経過観察とすることも多い
・急に大きくなる、歩き方に影響する、深部に広がる脂肪腫は手術を検討
・手術で多くは根治が期待でき、予後は良好

「見た目だけでは脂肪腫かどうか判断できない」ことがポイントです。
愛犬にしこりを見つけたら、早めに動物病院で相談し、
脂肪腫なのか、別の腫瘍なのかを一度しっかり確認してもらうことをおすすめします。

以下に獣医師の視点から、
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