犬猫もさまざまな病気が発生し、獣医療が発展する中で治療の選択肢も増えています。
そのなかで、治療の有無で生と死を大きく左右する治療のひとつに輸血があります。
犬猫はさまざまな原因で貧血(赤血球が少なくなる病気)を引き起こし、貧血は多くの場合緊急性があり、命に関わります。
犬猫で輸血を必要とする貧血の病気と輸血をする際に考えないといけない副作用や費用、ドナーについてまとめます。
重度の貧血を起こす代表的な病気
犬猫に輸血をすべきほどの重度の貧血を引き起こす病気をまとめます。
犬も猫も若齢から高齢まで最も緊急的に多いのは
①出血
です。
急な出血を引き起こす原因として多いのは
・交通事故や外傷性出血
・お腹や胸の中の腫瘍からの出血
・腸での出血
・止血異常に伴う体のあらゆる部位での出血
です。
これらの急な出血が起こると体は循環不全と貧血により命に関わりますので輸血が必要となります。これらの病気についてはまた別のコラムでまとめます。
②腎臓病による腎性貧血
腎臓は赤血球を作る指令を出している臓器でもあるため腎不全があると貧血が進行します。
③免疫介在性溶血性貧血(IMHA)
若くして起こることが多い病気であり、自己免疫の異常で自分の赤血球が破壊され貧血が起こる病気です。
これは前ぶれや原因もなく若くして急に起こるため、注意が必要です。
④赤血球の工場である骨髄の異常
これは白血病などの腫瘍や猫ちゃんのウィルス病によって、骨髄で赤血球が作られなくなることで貧血が起こります。
以上が比較的よく遭遇し、命に関わる貧血を引き起こす病気です。
各疾患の詳しい病態はサイト内の別のコラムをご覧ください。
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輸血すべき状態・基準
上述のような病気によって重度の貧血が起こった場合どうすべきでしょうか?
動物病院に通院中のわんちゃん猫ちゃんで血液検査をされたご経験はおありですか?
その中のHt(ヘマトクリット)という項目が貧血の指標です。
重度の貧血であり輸血を検討する基準は
犬でHt25%以下 猫でHt20%以下
が一つの基準になります。
また、
慢性か急性か
を輸血を行う際は検討します。
急性に貧血が起こった場合は体が貧血に慣れていない上に、進行性であるため早急な輸血が必要となります。
しかし、輸血は
・ドナー問題
・副作用の問題
・費用の問題
など、その道のりは容易ではありません。
輸血の副作用・費用
輸血を実施する前には必ず適合試験を行います。
ヒトでもA型の血液をB型のヒトに輸血できないように、犬猫でも血液型が存在します。
犬は赤血球抗原のDEAによって9種類以上の血液型が存在していますが、臨床上重要なのはDEA1.1(+)か(-)かの二つに分かれます。
一方、猫はヒトと似て、A型、B型、AB型の3種類の血液型に分かれます。
血液型が異なる血を輸血することは極めて危険であり、異物反応によりショック死する場合もあります。
しかし、適合試験と血液型が問題なかった場合、輸血によって引き起こされる副反応はほとんどの場合は一過性であり、
適切に対処することで命に関わることは稀です。
起こりうるものとして多いのは、
・溶血:他人の血であるため異物反応し、赤血球を壊してしまうこと。これは輸血後1~数日でおこり、赤い尿がでたり、頻呼吸や発熱が起こることがあります。
・アレルギー反応:これも他人の血に異物反応することで、痒みや嘔吐、顔面浮腫などのアレルギー反応が起こります。
・血栓症:血の塊が形成されやすくなり、血管内に詰まってしまう病態。
これらの多くは輸血後数分から数日以内に起こるため、疑われる場合は適切に治療を行います。
輸血にかかる費用は輸血量等にもよりますが、およそ5万円前後が相場です。
まとめ
ここまで貧血と輸血についてお話ししましたが、
輸血は避けられない治療のひとつであり、命を救うための強力な治療になります。
そのため、副作用や費用で悩んでいる時間は基本的にないのが現状です。
しかし、何よりも重要で問題となるのがドナー問題です。
輸血したくてもドナーがおらず輸血できずに命を落とした犬猫を数多く見てきました。
ヒトは献血があり、体制が整っていますがそれでも血が足りていない現状です。
犬猫はさらにドナーが少なく、輸血がしたくてもできないことばかりです。
この、ドナーに関するお話と獣医師からの全ての飼い主様へのお願いをお話ししようと思います。
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