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獣医師が伝える犬猫の病気や治療の考え方

犬の肛門嚢アポクリン腺癌(肛門嚢腺癌)とは|症状・診断・治療・予後を獣医師がわかりやすく解説

更新日:2025/12/6

犬の肛門の横には 肛門嚢(こうもんのう) という袋状の器官があります。
通常は肛門腺液がたまり、排便のタイミングで自然に排出されますが、ここにまれに 悪性腫瘍(がん) が発生することがあります。

それが 肛門嚢アポクリン腺癌(Anal sac adenocarcinoma) です。

発見したときにはすでに大きくなっていたり、リンパ節へ転移していることも多く、早期発見が非常に重要です。

この記事では、肛門嚢アポクリン腺癌について
症状・診断・治療法・予後・自宅での注意ポイント をわかりやすくまとめています。

肛門嚢アポクリン腺癌とは

肛門の左右にある 肛門嚢 の中に存在する腺組織から発生する悪性腫瘍です。

特徴として:

  • 進行が比較的早い
  • リンパ節(特に腰下リンパ節)へ転移しやすい
  • 腫瘍自体がカルシウムを上昇させる物質を分泌し、高カルシウム血症を起こす
  • 早期は無症状で気づきにくい

という点があります。

肛門周囲にあるため、日常の触診で気づける可能性がある腫瘍です。

犬の肛門嚢アポクリン腺癌とは比較的稀な腫瘍ではあり肛門周囲腫瘍の17%、全皮膚腫瘍の2%を占める腫瘍です。

発症の平均年齢10-11歳で性差や好発犬種がありません。

肛門嚢に出来る良性腫瘍は極めて稀なので、肛門嚢に腫瘍ができている場合は悪性の可能性が高くその多くはアポクリン腺癌と呼ばれます。

ちなみに、肛門嚢とは、肛門の4時8時の位置にある臭い袋であり、よく肛門腺(おしり)絞りをしている場所です。左右に1対ずつあります。

肛門嚢アポクリン腺癌は局所浸潤性が高く、所属リンパ節(お腹の中の腰下リンパ節)に高い確率で転移しています。見つかった時点で46-96%転移していると言われています。

1cm程度でもリンパ節転移成立していることは多く、リンパ節以外にも肺、肝臓、脾臓、骨に転移することがあります。

またこの腫瘍に伴って起こる病気として(腫瘍随伴症候群といいます)高Ca血症が約27%で認められます。

好発犬種・年齢

特に注意したい犬種:

  • スパニエル系
  • シェルティ
  • ゴールデン・レトリバー
  • ジャーマンシェパード
  • トイプードル

中高齢(8〜12歳)での発生が多いですが、若い犬でも起こることがあります。

症状

肛門嚢アポクリン腺癌の症状は、腫瘍そのものと、転移・高カルシウム血症による症状に分かれます。

● 早期は無症状のことが多い

そのため「気づいたら進行している」ケースが少なくありません。

● 見られやすい症状

  • 肛門の周りの“しこり”
  • 排便がしにくい(便が細くなる・いきむ)
  • 肛門を気にして舐める
  • 触ると痛がる

● 進行した場合の症状

  • リンパ節が腫れて後ろ足の付け根が膨らむ
  • お腹(腹腔内)でリンパ節が大きくなる
  • 食欲低下
  • 元気消失
  • 嘔吐
  • 多飲多尿(高カルシウム血症による)

特に 高カルシウム血症は急を要する危険な症状 です。

肛門嚢アポクリン腺癌と診断された約40%は無症状でたまたま病院またはお家やトリミングで見つかっています。

残りの60%では、肛門周囲の不快感、腫脹、出血や高Ca血症に伴う多飲多尿、食欲不振、嗜眠傾向、また腰下リンパ節の腫大による骨盤腔の閉塞による便秘や便の形の変化が見られます。

そのような症状がみられる場合はなるべく早く動物病院で診てもらい下記の検査をしてもらいましょう。

診断

・直腸検査―肛門嚢の部位に硬い腫瘤

・胸腹部レントゲンー肺転移がないかどうか

・血液検査―高Ca血症がないかどうか

・腹部超音波検査―腰下リンパ節などへ転移がないかどうか

・CT検査―上記がより正確に状態把握でき手術計画を立てられる。

・細胞診―腫瘤が肛門嚢アポクリン腺癌かどうか確かめる。 

似た病気として、肛門周囲腺腫や肛門周囲腺癌が存在し、前者は去勢手術が済んでいない雄犬において肛門周りに発生します。

これらの検査で肛門嚢アポクリン腺癌の腫瘍の診断がつき、ステージングを行ったうえで治療方針を決めていきましょう。

ステージ

1 腫瘤2.5cm以下で転移なし

2 腫瘤2.5cm以上で転移なし

3Aリンパ節転移があり4.5cm以下

3Bリンパ節転移があり4.5cm以上

4遠隔転移がある

上記をまとめると、

■ 触診

肛門の左右を触ることで腫瘤がわかりやすい腫瘍です。

■ 細胞診(FNA)

針を刺して細胞を調べる最初の検査。

■ 画像検査

  • 腹部超音波(エコー):リンパ節転移の確認
  • X線(レントゲン):胸部への転移評価
  • CT検査:腫瘍の広がり、骨盤内リンパ節の詳細評価

■ 血液検査

  • カルシウム値
  • 腎臓数値
  • 電解質
  • 臓器ダメージの有無

早期に転移をチェックすることが重要です。

高カルシウム血症との関係

肛門嚢アポクリン腺癌の特徴として、

➤ 約30〜50%の症例で 血中カルシウムが異常に上昇

します。

高カルシウム血症は:

  • 腎臓に強い負担
  • 嘔吐・脱水
  • 不整脈
  • 命にかかわる電解質異常

などを引き起こすため、
早期発見・早期治療が生存に直結 します。

治療

治療は、腫瘍の大きさ・進行度・転移の有無 で変わります。

■ ① 外科手術(可能なら最優先)

  • 原発巣の切除が基本
  • 腫瘍摘出+転移リンパ節摘出を検討
  • 完全切除が難しい位置の場合、部分切除や減量手術を行うことも

■ ② 抗がん剤治療

  • リンパ転移がある場合
  • 手術が難しい場合
  • 術後の再発予防として

使用される薬剤は複数あり、腫瘍の状態に応じて選択します。

■ ③ 放射線治療

  • 転移リンパ節が大きい場合
  • 手術が困難な場合

手術・抗がん剤との併用で予後改善が期待できます。

■ ④ 高カルシウム血症の治療

  • 点滴
  • 利尿薬
  • カルシウム値を下げる薬剤
  • 食事管理

緊急性の高い治療です。

いずれのステージにおいても外科 + 補助治療が基本となります。まずは肛門周囲の腫瘤を切除すること。

この際の局所の再発率は約25%ですが、周りには直腸や大切な血管や神経があるためあまりに大きく切除することはできません。

また、リンパ節が腫れている場合は、開腹手術によってリンパ節の摘出も行います。

開腹手術に抵抗があるかもしれませんが、このリンパ節が大きくなると、ウンチができなくなったり尿が出なくなり腎不全になり命を落としてしまいますので、重要な切除となります。

外科手術を行うと平均500日以上生きることが可能ですが、外科手術をしない場合はその約半分くらいになってしまいます。

この際に、どうしても外科手術ができない場合には放射線照射という選択肢があります。

詳しくは別のコラムにまとめます。

手術のあとは抗がん剤を補助治療として期待し行います。

報告は少ないですがミトキサントロンやカルボプラチンという抗がん剤を行うことで約900日以上再発なく過ごすことが可能となります。また、トセラニブ(パラディア)という飲み薬も約80%くらいの子で効果が期待できます。

腫瘍のポイント

肛門嚢アポクリン腺癌は悪性の腫瘍であり転移などで命に関わる腫瘍ではあるが、外科手術や抗がん剤のなどの補助治療に反応し比較的長く元気に過ごしていけることも多い腫瘍です。

その中で、ポイントはうんちがしっかりできるように肛門のできものをしっかりとること。

また、お腹の中のリンパ節が腫れている場合はその摘出もセットで行い、その後の抗がん剤を検討することで、長生きすることも可能であるので、転移していると言って諦めないことが大切です。



予後(生存期間)

肛門嚢アポクリン腺癌の予後は、
早期発見できたかどうか で大きく変わります。

● 早期で小さい腫瘍を手術できた場合

1〜3年以上の生存例も多数

● 大きく進行してから見つかった場合

→ 生存期間が短くなることが多い

● 転移リンパ節を同時に切除し、後療法を行った場合

→ 予後が改善する可能性あり

「早く気づけるか」が最も重要なポイントのひとつです。

飼い主ができる観察ポイント

毎日の生活で次のポイントをチェックしてください。

  • 排便のしにくさ(便が細い・いきむ)
  • 肛門周囲のしこり
  • 多飲多尿(高カルシウム血症の可能性)
  • 食欲低下
  • 嘔吐
  • 元気の低下

肛門は見えやすい場所なので、毎日の軽い触診で早期発見できる腫瘍 です。

よくある質問(FAQ)

Q. 良性の肛門腺腫瘍との違いは?
→ 見た目や触った感触だけでは区別できません。細胞診が必要です。

Q. 高齢犬でも手術できますか?
→ 体の状態次第では可能です。年齢より“全身状態”で判断します。

Q. 高カルシウムは治療で下がりますか?
→ 多くは下がりますが、腫瘍の活動が続く限り再上昇することがあります。

以下に獣医師の視点から、
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