犬猫はさまざまな原因で下痢をし、来院頻度がとても多い理由のひとつです。
しかし、多くの場合は緊急性が低い一過性のことが多いですが、
様子を診てはいけない下痢も存在していますので注意が必要です。
お家の子は頻繁に下痢していませんか?
色調はどんな色をしていますか?
今回は犬猫の下痢に対する考え方と様子の見方をお話しします。
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緊急性がある下痢かどうか?
多くの下痢は一過性のことが多く緊急性は高くありませんが、下痢以外の全身性の症状が伴う場合は注意が必要です。
下痢の際に注意すべき全身性の症状としては。
・意識レベルの低下
・重度の脱水(粘膜や鼻の乾燥)
・低体温
・粘膜が白い
などです。
これらは急性下痢の原因なのか結果なのかわかりませんが緊急性がありますので様子を見ずに動物病院に連れてきてください。
つまり、対症治療で様子を見てもいいのは、
元気や食欲があり、下痢以外は普段と変わらない場合です。
便に血液が付着する血便はヒトではあまり起こらないので、驚かれる方が多いですが、犬猫では緊急性がないことが多いです。
下痢の色
下痢の色や臭いは内蔵の状態を示唆するのでとても重要です。
まず、正常な便の色は茶褐色であり、あとは食事内容に伴い若干変化します。
【黒色タール便ー鉄臭】これは胃などの上部消化管での出血を示唆します。明らかに真っ黒のタール便である場合は様子を見てはいけません。
【赤色】小腸下部~大腸での出血を示唆します。腸炎の場合は軽度の出血を伴うことが多いです。
【黄色味が強いー腐敗臭】重度の腸炎の際に認められます。
【緑色便】消化不良や胆嚢や上部消化管に問題があるときにこのような便をします。
便の色は診断や治療を考える上で大切な情報になりますのでよく観察してください。
下痢の原因
一過性の下痢の場合はほとんどは「不適切な食事」が原因であることが多いです。
下痢になる前の数日間で食べたものに何か心当たりがないか考えます。
また、環境の変化や雷、台風などストレスが強くかかった場合もストレス性の下痢を引き起こすことがあります。
若齢の場合やドッグランなどに行った後の場合は寄生虫感染なども考えられますので、
下痢が起こる前の数日間での食事・環境・行動の変化を見直し、急性の下痢を引き起こす原因がないか考えます。
下痢が対症治療に反応が悪く数日以上慢性的に続く場合は、一過性の腸炎ではない可能性がありますので、動物病院で検査をしていく必要があります。
その際に考えられる病気を簡単に説明します。
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慢性下痢と多い病気
一過性な下痢ではなく慢性化する場合に隠れている病気で一般的に多い病気には以下のようなものがあります。
炎症性腸疾患(IBD)
原因不明に発症する腸の病気です。診断には超音波検査や内視鏡検査が必要であり、継続的な治療を必要とします。自己免疫が病態に関与しているため免疫を調整する薬が必要となります。
食事反応性腸症
食事内容の影響(食事アレルギー等)で下痢になっており、食事変更によって下痢が改善する場合はこの病気です。
抗菌薬反応性腸症
腸内細菌叢のバランスが乱れ、抗生剤投与によって下痢が改善する病気です。
抗生剤投与をやめると下痢になるので、長期間の抗生剤投与が必要となります。
リンパ腫など腫瘍
高齢の犬猫が慢性的に下痢をし始めた場合は消化管に腫瘍が発生していることは少なくありません。
繰り返す下痢の治療
まず、元気食欲など全身状態が問題なく、一過性の下痢を疑う場合は対症治療から行います、
急性の下痢の場合は食事管理と整腸剤等の内服で様子見ます。
急性の下痢があった場合は半日から1日程度絶食を行います。
脱水を避けるために水はしっかり与えるようにします。
ビオフェルミンとディアバスタ―
市販で調達できる犬猫用の整腸剤としてはビオフェルミンがあります。
ビオフェルミンは乳酸菌なので投与に際する副作用等はありませんので安全に投与可能です。
犬猫用として
ビオイムバスター![](https://gontasensei.com/wp-content/themes/the-thor/img/dummy.gif)
を用います。
またこれに加えて、下痢止め(止瀉剤)として
ディアバスター![](https://gontasensei.com/wp-content/themes/the-thor/img/dummy.gif)
を併せて内服します。
通常はこの2剤を1日2回で3日間ほど内服することで、
一過性の軽度の胃腸炎であればほとんど治ります。
食事管理
食事が原因で下痢をしている犬猫は少なくありません。
お腹が弱い犬猫に対しての療法食は様々存在します。
どの食事にすればいいのか悩むことは少なくありません。
慢性的な下痢をしている場合に検討する食事は、
・高消化性(低残渣)食
・低脂肪(制限)食
・高線維食
・低アレルギー食
などがあり、一般的にはまず高消化性かつ低脂肪食から反応を見ます。
療法食として有名かつ費用的にもコスパが良いのは
ヒルズ i/d low fat![](https://gontasensei.com/wp-content/themes/the-thor/img/dummy.gif)
です。
嗜好性も高く小粒のため療法食では最も使い心地がよく、治療効果としてのデータも出ているフードです。
缶詰も存在しているので、嗜好性が落ちている場合や投薬の際も使いやすいです。
また、長期的な使用を検討する場合は値段も気になります。
軽度の症状である場合は市販の食事の中で低脂肪かつ高消化性の食事から試してみてもいいかもしれません。
市販のなかで飼い主様が比較的よく与えておられる消化フードとしては、
犬心 消化器ケア![](https://gontasensei.com/wp-content/themes/the-thor/img/dummy.gif)
などがあります。
選択肢の一つとして、ご参考までに。
ここまでの変更は各ご家庭で行ってみて頂き、
これらの食事に反応が乏しい場合には、
食事アレルギーを疑う場合はアレルギー食に変更し、
大腸性の下痢の場合は高線維食に随時変更します。
まとめ
今回お話しした下痢は、おそらく日常の中でもっとも発生頻度が多い症状です。
同じ下痢でも様子を見て良いものから緊急性があるものまで様々です。
しかし、ほとんどの場合は対症治療で様子を見て良い下痢であることも事実です。
お家の子が下痢をした際は、今回お話しした知識を前提に様子を見て良いかどうか判断し、
適切に対症治療と経過観察してください。
一過性の軽度の下痢は今回ご紹介した治療で2~3日以内には改善します。
改善がない場合や全身症状を伴う場合は様子を見ずに動物病院を受診するようにしてください。
少しでもご参考になりましたら幸いです。
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