高齢のわんちゃんがつぎの症状を示している場合は、
よく口の中を覗いてみてください。
・よだれが増えた
・生臭い口臭がする
・血混じりのよだれ
これらを認める場合は、口の中に腫瘍ができている可能性もあります。
犬の悪性の口腔内腫瘍にはトップ2が存在し、
ひとつは有名なメラノーマ(悪性黒色腫)で、
もうひとつは扁平上皮癌です。
高齢のわんちゃんで最も多い口の中の腫瘍であるメラノーマについてお話しします。
メラノーマ=悪性黒色腫とは?
メラノーマはホクロのように黒いメラニン色素を含む細胞が腫瘍化した腫瘍で、
高齢犬の口腔内に最も高頻度で発生し、
最も悪性度が高い腫瘍です。
悪性度が高いという理由は、転移がとっても多く、
肺や肝臓、リンパ節などに転移します。
見た目と症状
見た目は多くの場合は真っ黒のできもので、発見時は数センチ以上の大きさであることがほとんどです。
腫瘍以外の可能性としては、歯肉過形成重度の歯周炎、口内炎骨髄炎根尖周囲膿瘍歯原性嚢胞肉芽腫性炎などがあります。
診断
上記のような見た目のできものを見つけた場合は、
まず細胞診検査と呼ばれる針吸引の検査を行います。
ほとんどの場合はこの検査によって診断がつきます。
ただし、メラノーマは全身への転移が多い腫瘍ですので、
全身の検査を行います。
リンパ節転移の有無を領域リンパ節の触診および細胞診にて、
肺転移の有無を胸部レントゲン検査にて確認します。
またわ一般的には外科手術が第一選択になることが多いため、全身状態の把握のために血液検査、腹部超音波検査が必要です。
口腔内の病変の詳細や周囲組織への浸潤の程度は視診や触診のみでは分からないため、CT検査を実施することもあります。
さらに、組織検査を同時に実施しメラノーマを確定診断します。
CT検査の考え方
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ステージ
口の中の腫瘍の大きさをもとに原発腫瘍の評価をまず行います。
つぎに、、リンパ節転移の有無を領域リンパ節の触診および細胞診にて行い、
肺転移の有無を胸部レントゲン検査にて確認します。
一般的には外科手術が第一選択になることが多いため、全身状態の把握のために血液検査、腹部超音波検査が必要です。
口腔内の病変の詳細や周囲組織への浸潤の程度は視診や触診のみでは分からないため、CT検査を実施します。
それぞれの検査所見を基に、臨床ステージ分類を下記のように行います。
原発腫瘍(T)
- Tis 浸潤前癌
- T1 2cm未満の腫瘍(最大直径)
- T2 2-4cmの腫瘍
- T3 4cm以上の腫瘍
領域リンパ節(N)
- N0 領域リンパ節に浸潤を認めない
- N1 患側リンパ節が可動性
- N2 対側または両側のリンパ節が可動性
- N3 固着リンパ節
a:リンパ節に腫瘍がない
b:リンパ節に腫瘍がある
遠隔転移(M)
- M0 遠隔転移は認めない
- M1 遠隔転移が認められる
最も進行しているステージは4であり、
肺に転移している(M1)の場合です。
それ以外の場合はステージ3以下であり、外科手術の適応になります。
治療と余命
ステージが2以下の場合は根治を目指して、
3の場合は緩和的な治療を目的として、
①外科的な摘出手術を行うのが第一選択になります。
手術は多くの場合は顎の骨ごとの摘出を余儀なくされ大きな侵襲を伴います。
しかし、手術が最もその後のメラノーマを制御することができ、制御されない場合はみるみる大きくなり、
ごはんも食べれなくなるので、先を見据えて考える必要があります。
手術を行わない場合の選択肢としては、
②内科治療として、抗がん剤(カルボプラチン、トセラニブ)やNSAIDsがありますが、
肉眼的に大きくなっている場合は副作用を上回る十分な効果は期待できません。
そのほかには③放射線治療があり、この治療は可能な施設は限られていますが効果を認められ、
手術の侵襲が気になる場合は選択肢になります。
ただし、週に1回×4~5回の麻酔は避けられません。
いずれの治療も、早期の根治的な治療でなければ、
最終的には転移をして半分の子は1年以内に命に関わってしまいます。
③放射線治療
放射線治療は局所のコントロールには有効な治療法です。外科手術と組み合わせて根治を目的とした照射や腫瘍の縮小を目的とした緩和照射など利用方法は様々です。
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末期症状(治療した場合)
治療を行った場合は、口のできものが制御されているので、
痛みや不快感から解放され、
最後までごはんを食べることができます。
転移をしてしまう場合は最終的には多くの場合は、肺に転移を起こして、呼吸が苦しくなってしまいます。
なるべくお家で苦しくなく過ごすために自宅酸素室を早めに準備することをおすすめします。
肺転移について詳しくは下記にまとめています。
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無治療の場合は、さまざまな治療の負担やリスクを回避することはできますが、
口の中の腫瘍がみるみる大きくなってしまいます。
その結果、転移よりも前に口のできものの不快感や痛みでごはんが食べれなくなり、
痛々しく衰弱してしまいます。
それでもできることはあります。
このときのポイントは2つ。
1つは痛みをとってあげること。
2つ目は栄養管理をしてあげること。
この2点に尽きます。
メラノーマが発生した場合は、
1日でも早く、できるだけ早期からこの2つの治療をぜひ始めてあげてくださいね。
最期まで必ずできることはあります。
腫瘍の鎮痛管理
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腫瘍の栄養管理
がん治療の初期段階から栄養管理の重要性をしっかり認識することは非常に大切です。、がんを患った動物は各種栄養素の代謝の変化が起こります。
炭水化物、蛋白質、脂質の代謝が健康な動物と異なるため、きちんと食べているのに痩せてきてしまうというような現象(がん性悪液質)が起こります。
がん性悪液質に患者を陥らせないためには、食事の成分に気をつけるだけでなく積極的な栄養管理を行っていく必要があります。
具体的には、食事を温めるなどの工夫や食欲増進剤などの使用を検討します。それでも十分な効果が得られない場合は、チューブ(鼻、咽頭、食道、胃、腸カテーテル)を用いた栄養補給法を検討する必要があります。
患者が‘飢え’から解放されるだけでなく、がん治療の副作用の軽減効果、生活の質の向上につながります。
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