お家の子が下痢をしたり吐いてしまったり、
消化器症状は犬猫において最も多い来院理由のひとつです。
また、これらの消化器症状を治すためには様々な胃腸薬が存在し、目的に応じて処方します。
しかし、すべての薬について十分にご説明してすべてを処方できていないことも多く、
よく飼い主様からご質問を受けます。
・この薬はなんという薬で、何に効くんですか❔
・副作用は全くないですか❔
・お家にあるヒト用の同じ薬を飲ませてもいいですか❔
治りが悪いからほかの動物病院を受診されて、
実は同じ薬を処方されていることもよくあります。
必ず処方された薬の種類と用法用量を確認するようにするべきです。
今回は犬猫の胃腸薬でよく使用する薬について上記をお答えしていきます。
犬猫の下痢/嘔吐
まず、犬猫が下痢や嘔吐をした際の考え方や様子見て良いかの判断はとても重要です。
少しの様子見の判断が時として命を左右することは少なくありません。
まず正しく判断するための知識を別のコラムでまとめていますので一度目を通して頂いてからのほうが、
消化器薬についてご理解しやすいと思います。
犬猫によく用いる消化器薬一覧
吐き気止め
・セレニア(マロピタント)
胃粘膜保護
・ガスター(ファモチジン)
・オメ(ランソ)プラゾール
・スクラルファート
消化管運動改善薬
・プロナミド(モサプリド/ガスモチン)
・プリンペラン(メトクロプラミド)
下痢止め
・フラジール(メトロニダゾール)
それぞれについて用法用量を簡単にまとめます。
セレニア
成分名:マロピタント
用法:1日1回の経口投与または皮下注射で連続投与は5日間まで安全性確認されている。
・脳の嘔吐中枢に作用して悪心嘔吐を抑える
・犬猫において安全性が高く極めて効果が高い
・特に副作用は認めないが、皮下注射は刺激性があるのでしみて悲鳴を上げる子が多い
成分名:ファモチジン
ガスター
用法:1日2回の経口投与または皮下注射
・制吐作用はない
・胃酸分泌を抑え、連続する嘔吐に伴う食道炎や胃炎を予防、改善する
・安全性も高く、比較的飲みやすい
オメ(ランソ)プラゾール
成分名:オメプラゾール(プロトンポンプ阻害薬)
用法:1日1回の経口投与(または静脈注射)
・ガスターと似た効能であるが、胃酸分泌抑制作用はガスターより強力で、1日1回なので使いやすい
・腸溶錠なので分割してはいけない
ランソプラゾールは粉々にしなければ多少の分割OK
スクラルファート
成分名:スクラルファート
用法:1日2~3回の経口投与で、食前30分以上前など空腹時に投与する
・粘膜保護作用が極めて強く、胃粘膜の炎症/潰瘍を保護する
・副作用はないが、必ず食事やその他の薬とは別々に投与する
プロナミド(モサプリド/ガスモチン)
成分名:モサプリド(セロトニン5HT4作動薬)
用法:1日2回の経口投与
用量:1kgあたり0.25mg~1mg
・胃~小腸の消化管運動を促進する
・制吐作用はない(吐き気止めではない)
・プリンペランよりも効果が高い
・犬猫ともに副作用は特になく安全性高い
・併用できない薬はない
プリンペラン
成分名:メトクロプラミド
用法:1日1回の経口投与または皮下(点滴)注射
・胃運動促進作用と吐き気止めの作用を併せもつ
・胃を休ませるべき際(消化管出血など)には使用しない
フラジール
成分名:メトロニダゾール
用法:1日2回の経口投与
・消化管に用いる抗生剤で、下痢の原因や結果としてみられる腸内細菌叢の乱れを改善する
・ジアルジア症などの消化管寄生虫にも有効で治療可能な下痢は多く、臨床医が最もよく使う治療薬のひとつ
・副作用は少なく安全な薬ですが、用量や投与期間が多いと稀に神経症状を認める場合がある
・一番の難点は苦くて投薬が難しいこと
胃腸の病気を治療するためには、継続的な内服が不可欠なのでなんとか内服させなければいけません。
その際に使える秘技をまとめていますので、悩まれている場合は参考にしてください。
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まとめ
今回は犬猫でよく処方する薬の効能と注意点をまとめました。
その目的は、処方している理由と注意点をわかった上でしっかり内服していただきたいためです。
また、セカンドオピニオンに行かれる際にも、
過去や現在の投薬内容を把握され、伺えることでお話しがとてもしやすくなるためです。
犬猫は言葉が話せないので、さまざまな知識を飼い主様が理解いただければと思っています。
その中で日々知っていただきたいと思ってることをこれからもお伝えしていこうと思います。
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