更新日:2025/12/9
リンパ腫(リンパ腫瘍)は、犬と猫で非常に多い悪性腫瘍の一つです。
血液腫瘍に分類され、リンパ球が全身のどこかでがん化して増殖する病気です。
発生部位が体のあらゆる場所・臓器に及ぶため、
症状は多彩で進行も早いタイプが多い のが特徴です。
しかし、治療により症状の改善や延命が期待できるケースも多く、
特に犬では化学療法(抗がん剤)が治療の中心となります。
この記事では、犬猫のリンパ腫について
種類・症状・診断・治療・余命・生活の注意点 を獣医師がわかりやすくまとめました。
リンパ腫とは?(どんながんか)
リンパ腫は血液のがん、つまり白血病の一種であり、犬猫ともに非常に多く認められ、多中心型(リンパ節中心)、消化管型(胃腸中心)、縦隔型(胸部中心)、皮膚型(皮膚や粘膜中心)、節外型(脳や腎臓などその他の臓器)などに分かれ全身のあらゆる部位で発生します。
血液中のリンパ球ががん化し、
リンパ節や臓器で異常増殖する悪性腫瘍で,白血病と同じ「血液のがん」に分類され、実際には全身病として扱われます。
発生する場所や増殖スピードによって、治療方針も大きく変わります。
発生した場所によっておこる症状が異なり、また、治療への反応や経過が異なることが分かっています。
犬にできるリンパ腫の約80%が体のリンパ節の複数が腫れる多中心型と呼ばれ、 皮膚の下にあるリンパ節の腫れに気付いて動物病院を受診されるケースが多く、動物病院の診察において偶発的に見つかることもあります。
のどのリンパ節が腫れると呼吸が苦しくなったり、いびきをかくようになります。初期にはリンパ節の腫れだけであっても、進行してくると体のあらゆるところのリンパ節が大きくなり、元気・食欲の低下や体重の減少が起こります。
無治療の場合の平均余命は1~2ヵ月とされていますが、ひとくちにリンパ腫といっても様々なタイプがあり、早期発見/治療ができるか、治療内容等を含めて数ヵ月~数年まで大きく異なります。
その悪性度を左右する要因としては、犬か猫か、高分化(低悪性度)か低分化(高悪性度)か、TかBか、発生部位などがあります。
犬と猫で異なるリンパ腫の特徴
■ 犬の場合
・「多中心型リンパ腫」が最も多い(リンパ節が腫れるタイプ)
・高グレード(進行が早い)が多く、治療で状態が変わりやすい
・抗がん剤(CHOPプロトコール)が標準治療
■ 猫の場合
・「消化器型リンパ腫」が最も多い
・T細胞性リンパ腫など難治性タイプもある
・治療効果は腫瘍の型や悪性度により大きく異なる
犬猫で発生部位・予後がまったく異なるため、治療は個別設計が必要です。
リンパ腫の主な種類(発生部位別)
■ 多中心型(犬で最多)
全身のリンパ節が腫れるタイプ。
首・わき・内股などのリンパ節がコロコロと触れるようになります。
■ 消化器型(猫で最多)
腸、胃、膵臓、腸間膜リンパ節などに発生。
嘔吐、下痢、食欲低下、体重減少が見られます。
■ 縦隔型
胸の中(縦隔)に発生。
呼吸が浅く早い、胸に水が溜まることもあります。
■ 皮膚型
皮膚のしこり、赤み、脱毛、痒みなど。
■ 中枢神経型(脳・脊髄)
発作、ふらつき、麻痺など。
■ その他
肝臓、脾臓、腎臓、鼻腔、眼などあらゆる臓器に発生します。
リンパ腫の症状
症状は発生部位により異なりますが、代表的なものは以下の通りです。
・リンパ節の腫れ
・食欲低下
・体重減少
・元気がない
・嘔吐や下痢
・呼吸が浅い・苦しい
・腹水や胸水
・発熱
・多飲多尿
急激に悪化することもあるため、早期の診断が重要です。
診断(どんな検査をすべきか)
診断はがん化したリンパ節や胃腸などの組織から細胞を取る検査(細胞診)を行い、
がん化したリンパ球細胞を検出します。
典型的なリンパ腫細胞であれば診断可能な獣医師であればその場ですぐに確定診断できます。
■ ① 細胞診(針で細胞を取る)
犬猫のリンパ腫では最も一般的な検査。
リンパ節やしこりから細胞を採取して、がん細胞の有無を調べます。
短時間ででき、体への負担も少ない検査です。
■ ② 血液検査
・貧血
・白血球異常
・カルシウム上昇(高Ca血症)
などを確認します。
■ ③ 超音波検査・レントゲン
臓器への浸潤、胸水・腹水の有無、腸の肥厚を確認。
■ ④ 遺伝子検査(PARR)
リンパ腫かどうかの判定を補助する検査。
特に猫の小細胞性リンパ腫の鑑別に有用。
■ ⑤ 組織生検
必要に応じて、より正確な診断のために行われます。
リンパ腫の細胞診

さらに血液検査やレントゲン検査、超音波検査で病気の進行度を確認していきます。様々な場所で発生するため、時に組織をとる生検や内視鏡検査、CT・MRI検査、遺伝子検査などが必要になることもあります。以下が各検査において確認すべき内容です。
・血液検査―貧血の有無や内臓の状態などを調べる。
・血液凝固系検査―きちんと血が止まるかなどを調べる。
・レントゲン/超音波検査―胸やお腹に腫瘍の広がりや他の病気がないか調べる。
・尿検査―腎臓の状態などを調べる。
・肝臓/脾臓針吸引検査―肝臓、脾臓に転移が無いか調べる。
・骨髄検査 ―※麻酔 骨髄に転移が無いか調べる
・クローナリティ検査―リンパ腫のタイプ(B/T)を調べる。
治療(どんな治療法があり、何が最善か)
血液に存在するリンパ球のガンであるため全身療法である抗がん剤での治療が必要です。
いくつかの抗がん剤を組み合わせる治療が主体で、ご家族やその子の状況によって選択していきます。
あるデータではリンパ腫で無治療の場合、ほとんどの犬が4~6週間後に死亡することが報告されています。
リンパ腫の治療は根治(完治)目的ではなく、リンパ腫によって起こる悪影響、全身症状を改善して、見た目上腫瘍がいない状態(寛解)を目指し、リンパ腫と付き合いながら、できる限り生活の質を維持していくことが目標になっています。
【化学療法】
リンパ腫は血液のガンであるため、全身に効く治療方法である化学療法(抗がん剤)が主体となります。使用される抗がん剤は多種多様であり、動物の全身状態やリンパ腫の種類(分化型、TあるいはB細胞性、解剖学的部位、臨床ステージ)によって調整します。基本的には数種類の抗がん剤を組み合わせ、きちんと計画された間隔で薬剤を投与することが多いですが、通院や治療のコスト、治療効果、副作用のコントロール、予後などを相談して行います。
例)
① ステロイド単剤治療:
メリット:1日1回の内服、治療通院は2~3週ごとなので続けやすい
デメリット:数カ月間効果が期待できるがいずれ(約3か月ほど)効果は落ちてくる。副作用は軽度で、多飲多尿が生活上少し大変になる可能性がある。
② 抗がん剤治療(化学療法):主に2つのプロトコール
A) CHOP療法:約半年間、週に1回毎週抗がん剤を点滴する。
メリット:最も抗腫瘍効果が期待できる、1年生きることをまず目標にする。反応性や個体差により様々。
デメリット: 通院が週に1回以上必要で、抗がん剤の副作用として食欲不振や下痢、嘔吐などが投与ごとに起こる。ときに(約5%)致命的な副作用がでる。
費用:抗がん剤、検査、内服薬含めTotal数万円/毎週
B)抗がん剤単剤療法(L-CCNU、ドキソルビシンなど):3週間ごとに1回の抗がん剤投与
メリット:ステロイド単剤よりも効果が期待できる。食欲不振や嘔吐などの副作用が軽度。投与頻度や負担がA)より少ない。
デメリット: A)よりは少し薬剤強度落ちる。
費用:抗がん剤、検査、内服薬含めTotal数万/月
【外科療法】
リンパ腫は全身性疾患であるため、通常は外科療法の適応ではありません。しかし、皮膚や腸に孤立して腫瘤を形成していたり、眼球や腹腔内でも孤立して病変をつくっている場合には、手術により大きなリンパ腫の病変を取り除き、がん細胞の数を減らすことは有効になります。しかし、外科手術のみの治療で終わらず、補助療法として化学療法や放射線療法を併用し、全身に対する治療を施すことが必要になってきます。
【放射線療法】
リンパ球は放射線に対しての感受性が高いことから、腫瘍が限局している場合は局所への照射も効果的と考えられます。。
予後(今後どうなるのか)下記の予後因子により様々です。
リンパ腫はタイプ・治療法・悪性度によって大きく変わります。
■ 犬の多中心型リンパ腫
CHOP治療あり:1年前後(中には2年以上)
ステロイドのみ:1〜3ヶ月
■ 猫の消化器型リンパ腫
小細胞性:数年生存も可能
大細胞性:数ヶ月〜1年
■ 鼻腔型(猫を含む)
放射線治療で1〜2年ほど安定する例が多い
■ 進行が早いタイプ
縦隔型、T細胞性などは予後が短い場合があります。
・サブステージ=臨床症状の有無:サブステージb(症状あり)はサブステージaより予後が良くない。
・T/B細胞:B細胞性リンパ腫はT細胞性リンパ腫より予後が良い
・解剖学的部位:多中心型は比較的予後が良い
・ステロイド投与歴:化学療法開始前にステロイド投与を行った患者は行わなかった患者より予後が良くない
・臨床ステージ:ステージ1,2はステージ5より予後が良い
・高カルシウム血症:高カルシウム血症は予後が良くない
・組織型:高分化型は低分化型より予後が良い
・体重:小型犬は大型犬より予後が良い
リンパ腫の子と暮らすうえで大切なこと
・食欲や排便、呼吸状態を毎日チェック
・食欲が落ちたら早めに受診
・体重管理
・ストレスをかけない生活環境
・検査・治療スケジュールの相談
リンパ腫は予後が大きく個体差の出る病気ですが、
早期治療と生活管理で、穏やかに過ごせる時間を延ばすことができます。
よくある質問(FAQ)
Q. リンパ腫は治りますか?
→ 完全治癒は難しいことが多いですが、寛解(症状がなくなる状態)を長期間保てるケースがあります。
Q. 高齢でも治療はできますか?
→ はい。体力や臓器の状態を見ながら無理のない治療を選べます。
Q. ステロイドだけではだめですか?
→ 一時的な改善は期待できますが、寿命は大幅に短くなる傾向があります。
Q. 症状が急に悪くなることはありますか?
→ はい。リンパ腫は進行が早く、急変するケースもあります。
まとめ
・リンパ腫は犬猫で非常に多い悪性腫瘍
・犬では多中心型、猫では消化器型が最も多い
・症状は発生部位により多彩
・診断は細胞診が中心、必要に応じて遺伝子検査も
・治療は化学療法が基本
・余命はタイプや治療によって大きく異なる
・治療と生活管理によりQOLの改善・延命が可能
数週間で命に関わることもあれば、抗がん剤治療により年単位で元気に過ごせることもあります。ただし、長生きするためには抗がん剤による治療は欠かせません。ポイントは抗がん剤の力を上手に借りて元気に過ごすこと。
以下に獣医師の視点から、
治療中の犬猫に現実的に選ばれているフードをまとめまています。
▶︎ 犬猫に配慮したフードの考え方を見る
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