更新日:2025/12/9
肥満細胞腫は悪性の腫瘍ですが、猫の肥満細胞腫の多くは良性の挙動(高分化)をとります。悪性度が高い場合転移再発を繰り返しますが、猫においては非常に稀です。ただし、悪性度が低くても、いたちごっこのように再発や違う部位にできることも多く(約20%)注意が必要になります。
猫の肥満細胞腫(Mast Cell Tumor:MCT)は、
皮膚・脾臓・腸などに発生する腫瘍で、猫では比較的よく見られる腫瘍のひとつ です。
皮膚にできるしこりとして見つかることもあれば、
脾臓や腸に発生して 嘔吐・食欲不振・貧血 といった内臓症状で発見されることもあります。
猫の肥満細胞腫は、犬の肥満細胞腫とはまったく異なる振る舞いを示すため、
猫に特化した理解と治療が必要です。
この記事では、
皮膚型・内臓型それぞれの特徴、症状、診断、治療、予後 をわかりやすく整理しました。
猫の肥満細胞腫とは?
肥満細胞という免疫細胞が腫瘍化したもので、
皮膚、脾臓、肝臓、腸など さまざまな場所に発生します。
猫のMCTは犬と異なり、
- 皮膚型:比較的おとなしい
- 内臓型:悪性度が高いこともある
という特徴があります。
猫に多い2つのタイプ
■ ① 皮膚型肥満細胞腫(cutaneous MCT)
- 最も一般的
- 頭部・首・体幹に多い
- 小さめのしこりとして気づかれやすい
- 多くは外科切除で良好な経過
■ ② 内臓型肥満細胞腫(visceral MCT)
- 脾臓・肝臓・腸 に多い
- 全身症状が出ることが多い
- 悪性度が高いケースも
- 外科+内科治療が必要なことが多い
特に 脾臓MCT(脾臓肥満細胞腫) は、猫の内臓腫瘍の中でも比較的よく見られます。
皮膚型 MCT の特徴・症状
- 小さなしこり(1cm前後)
- 色は皮膚と同じか、やや赤み
- かゆみはないことが多い
- ゆっくり大きくなる
- 多発する場合もある
猫の皮膚型 MCT は、良性に近い振る舞い を示すことが多く、
完全切除により治癒が期待できます。
内臓型 MCT の特徴・症状
■ 脾臓MCT
- 食欲不振
- 体重減少
- 嘔吐
- 下痢
- 貧血
- 腹部の張り
- 元気の低下
脾臓が腫大し、血液検査で 貧血・白血球増多 が見られることもあります。
■ 腸(消化管)MCT
- 嘔吐
- 下痢
- 食欲不振
- 黒色便(消化管出血)
- 腹痛
消化管MCTは、腸閉塞を起こすこともあり注意が必要です。
■ 内臓型は危険性が高い理由
内臓型は血液を通じて全身に広がる可能性があるため、
脾臓・肝臓・骨髄への浸潤が起こることがあります。
診断(どんな検査をすべきか)
- 針吸引細胞診(FNA)
- 組織検査(生検)
- 血液検査
- 超音波エコー(脾臓・肝臓・腸の評価)
- レントゲン(転移の有無)
- CT検査(広がりの評価に有用)
皮膚型MCTはFNAで診断可能なことが多いですが、
内臓型は画像検査が非常に重要です。
細い針をできものに刺して顕微鏡で確認する細胞診検査ですぐに診断できます。
複数箇所に肥満細胞腫が発生していることも多いので他にできものがないか確認します。
複数発生している場合は、脾臓や近くのリンパ節のエコー検査に加えて細胞診検査を行い、肥満細胞腫の全身への広がりを確認します。
脾臓型の肥満細胞腫が皮膚に多発することもあるためです。

治療(どんな治療法があり、何が最善か)
■ ① 外科手術(第一選択)
- 皮膚型:腫瘤切除で完治が期待できる
- 脾臓型:脾臓摘出(スプリーンネクトミー) が標準治療
- 腸型:病変部の切除+吻合
手術により症状の改善が見込めることが多いです。
■ ② 抗がん剤治療
- ロムスチン(CCNU)
- ビンクリスチン
- プレドニゾロン
猫のMCTは犬と異なり、抗がん剤の効果が一定ではありません。
内臓型では必要に応じて検討します。
■ ③ ステロイド(補助的)
腫瘍の腫れを一時的に抑えることがありますが、根治治療ではありません。
できものがひとつであれば、皮膚の腫瘤を切除しますが、部位によっては大きく切除するのが困難なことが多く、犬のように大きな傷で切除する必要はありません。
大きなできものや外貌の変化を伴う場所の場合は、手術前に腫瘤の位置をマーキングし、手術前後にステロイドを使用して、可能な限り最小限の傷で取り切ることを目的に切除することもあります。
病理検査で万が一悪性度が高く、取り残りや再発を繰り返す場合は大きく切除する必要がありますが、猫では極めて稀です。
予後(今後どうなるのか)
よくお受けするご質問にお答えしていきます。🔘切除後、再発しない子もいるんでしょうか?↪一度の切除で治る子もいれば、新たな部位に発生することも少なくありません
■ 皮膚型 MCT の予後
- 非常に良好
- 完全切除で再発率は低い
- 多くは長期生存が期待できる
■ 脾臓 MCT の予後
- 手術で大きく改善することが多い
- 手術後の生存期間:数ヶ月〜数年と幅がある
- 骨髄浸潤がある場合は予後不良
■ 腸型 MCT の予後
- 皮膚型より悪性
- 穿孔・閉塞を起こす場合は注意
- 治療しても再発することがある
腫瘍の“型”と“広がり”によって大きく異なるため、
治療前の評価が特に重要です。
よくある質問(FAQ)
Q. 猫の肥満細胞腫は治りますか?
→ 皮膚型は手術で完治を目指せます。内臓型は改善は可能ですが、経過には個体差があります。
Q. 良性ですか?悪性ですか?
→ 猫のMCTは「悪性・良性」で単純に分けられず、部位によって性質が異なります。
Q. 何歳に多い?
→ 中齢〜高齢で多いですが、若い猫でも発生します。
Q. 手術しないとダメですか?
→ 皮膚型は手術が最も有効です。内臓型は手術が予後を大きく改善します
Q.肥満細胞腫により命を落とす可能性はあるんでしょうか?
→悪性度の高い一部の肥満細胞腫では脾臓や肝臓、リンパ節に転移すると命に関わることもありますが、猫では稀です。
Q.切除後、傷がなおるまでどのくらいかかるものでしょうか
→一般的には1週間後には傷は治り切り抜糸して終了になりますが、縫い方や傷口によっては数週間治癒にかかることもあります。
Q.投薬治療について、薬の合う合わないなどはありますよね?
合わない時は逆に体にどのような負担となりますか?
→ステロイドなどの場合、内臓に負担がないかを考慮(検査)して投薬しますが、長期間や高用量でなければ問題にならないことが多いです。
Q.人間と同じように抗がん剤で相当体に負担がかかるものなんでしょうか
→負担の強い抗がん剤もありますが、猫の肥満細胞腫でそのような治療になることは稀です。
Q.薬を飲むのが本当に苦手な子で、(むしろ吐き出すのがとても上手で) 投薬はどのくらいの期間続けるものなんでしょうか?
→多くの場合は手術前後のみの数週間で終えますが、抗がん剤の内服を続ける場合は終生飲むこともあります。
肥満細胞腫は数多く遭遇し、悪性腫瘍のため悩ましい腫瘍ですが、猫ちゃんの場合はほとんど乗り越えることができます。
まとめ
・予後は腫瘍の部位・広がりで大きく左右される
・猫の肥満細胞腫は皮膚型と内臓型で性質が大きく違う
・皮膚型はおとなしいことが多く、手術で完治が期待できる
・脾臓・腸のMCTは症状が重く、早期診断が重要
・診断には細胞診・画像検査が必須
・外科手術が最も中心となる治療
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