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獣医師が伝える犬猫の病気や治療の考え方

若い犬が噛む原因と正しいしつけ|甘噛みから本気噛みになる前にできる対策を獣医師が解説

更新日:2025/12/9

子犬や若い犬が「噛む」行動は珍しいものではありません。
しかし、そのまま大きくなると 本気噛みにつながる危険性があるため、早い段階のしつけがとても重要 です。

この記事では、
子犬が噛む理由・放置のリスク・正しい教え方・やってはいけないNG対応・社会化トレーニングの方法
を獣医師がわかりやすくまとめます。

犬の性格は遺伝と環境の影響を受けます。

飼い主を噛んでしまったり、他人にガウガウ吠えてしまったりするのは、

多くはその社会化や思春期の時期の過ごし方に問題があります。

この時期にしっかりと教育ができた場合はとても飼いやすく、いい子に育ちます。

生後3カ月までの過ごし方

ブリーダーさんによっては早期から親離れをさせる方がおられますが、

生後2か月(厳密には8週)までは愛情深い母親と同居し、兄弟間で遊びを行うべきです。

これらの環境は精神的に安定した子犬になるために重要であり、

早期母子分離は将来的に様々な問題を引き起こします。

そのため、子犬を検討されている方や、お家で生まれた子犬は2カ月まではぐっと我慢し親と過ごさせます。

社会化期(生後3ヵ月)の過ごし方

社会化期は、社会的関係の構築や異種動物を受け入れる大切な時期となります。

この時期の過ごし方に問題があると将来的に飼い主や,他の動物を受け入れることができなくなります。

この時期にまず行うべきことは、

社会に慣れること

ワクチン接種が終わるまでは部屋から出してはいけないという獣医師もいますが、

心の成長において、この時期にしっかり社会を経験し人と共に様々な経験をすべきです。

他の動物との接触に注意し社会に慣れてもらいます。

体罰をしない

しつけには正の報酬と負の罰という方法があります。

つまり、正しくできた時にご褒美、ダメなことをした場合に叱ることです。

しかし、子犬のしつけにおいてこの体罰は、ほとんどの場合何が悪かったか理解できず、

信頼関係の構築に支障をきたし、学習能力が低下します。

子犬への体罰は行ってはいけません。これはとても大切です。

共通のコマンドを覚えてもらう

つまり、『お座り』『待て』『伏せ』です。

これにより、ヒトと犬との共通の言語をもちコミュニケーションをはかることができます。

単に芸を覚えてもらうことが目的ではありません。

下のサイトにも専門家のレクチャーがまとまっていますのでご参考まで。

かみぐせを治す方法

先述したように、『噛んだら叱る』は絶対にしてはいけません。

この方法ではなぜ叱られるのか理解できず信頼関係が崩れます。

犬にとって噛むことは犬の正常な伝達手段で、自己表現です。

噛まない犬に育てるために以下の2つのポイントを訓練します。

咬みつきの抑制

乳歯が生えそろい永久歯に生え変わる頃までは、歯がむずがゆくどうしても甘噛みをしてしまいます。

甘噛みをする場合は、無視しその場を立ち去ります。

本人が咬むことは嫌われることだと気が付くまで続けます。

これは2~3週間必要でありお互いの忍耐勝負です。

その次に、咬んだ時に「痛い」と大声で叫びます。いままでの子犬との生活で一番大きな声をだすことで、咬むことはいけないことだと気付かせます。

子犬とはいつも穏やかに接し、「痛い」という声に子犬が敬感に反応するようにします。

この際、犬を叱ったり体罰を与えるのではなく犬自身に学習してもらいます。

犬はとても賢いので、辛抱強く反復することでかならず学習します。

アウト&フェッチ

犬は基本的に一度口にくわえたものを離そうとはしません。

特に捕食性の強い犬や、支配性の強い犬は教わらなければ口にくわえた物を離すことができません。

そのため、社会化期から成犬になるまでの間に、咬んでいる力を意識して抜くことを学習させます。

咬んだ物を離すことを「アウト」、くわえることを「フェッチ」とし号令をかけて練習します。
(1)犬がくわえたがるポールやオモチャをくわえたらフェッチと号令する。
(2)犬がくわえているボールやオモチャの横に、犬がもっと関心をよせる食べ物等を置き、犬がすすんでくわえている物を離したら、アウトと号令する。

ここで重要なのは、犬の自発性にまかせ、強制的に取り上げないことです。

咬むことは決して本人が悪かったり性格のせいではありません。

本能としての『咬む』行為に間違った生活習慣(しつけ)が続くことで咬み癖につながるのです。

しつけ教室

ここまでまとめてきたように、1歳までのしつけはその後の犬生に大きく関わります。

逆に言うと1歳までの飼い方でその子のほとんどすべてが決まります。

そのため1歳までの短期間だけのしつけ教室はとても有意義であると言えます。

近くの動物病院などが行っている場合がありますので、積極的に参加すべきです。

また獣医師監修で行っているしつけ教室の

【こいぬすてっぷ】

は在宅で行えるので受講しやすく、

ご都合の合わない子犬の飼い主様にはお勧めしています。

若い犬が噛む理由(必ず原因がある)

子犬は成長の過程でさまざまな理由から噛む行動を見せます。
行動原因を理解することで、しつけが格段にスムーズになります。

主な理由

  • 甘噛み(歯の生え変わり時のムズムズ)
  • 遊びの延長
  • 飼い主の反応が楽しい(注意がご褒美になっている)
  • 社会化不足(他の犬と遊ぶ経験が少ない)
  • 噛む力のコントロールを学べていない
  • 興奮しやすい性格
  • ストレス・要求行動(かまって、遊んで、抱っこして)
  • 恐怖心・不安

若いうちに正しく対処することで、多くの噛みつき行動は改善できます。


甘噛みと「問題の噛みつき」の違い

甘噛み(正常行動)

  • 歯のムズムズ解消
  • 遊びの一部
  • 力が弱い
  • 成長で自然に減る
    → 正しい教え方でコントロール可能

問題行動としての噛み

  • 本気で噛む
  • 威嚇を伴う
  • 興奮すると制御不能
  • 噛むと要求が通ると思っている
    → 放置すると本気噛みに発展する危険がある

甘噛みだから大丈夫 と放置すると、
成犬になって「力の加減ができない犬」になるため注意が必要です。


若い犬の噛みつきを“今すぐ改善する”基本方針

若い犬の噛みつき対策は、次の3本柱で行います。

1. 噛む対象を正しく教える

  • 手・足 → 絶対に噛んで良いおもちゃへ置き換える
  • 噛んだら即座に遊びを中断する

2. 興奮させすぎない環境づくり

  • 遊びを短時間に区切る
  • 過度なテンションにさせない
  • 家族全員でルールを統一する

3. 社会化トレーニング

  • 他の犬と遊ぶ経験
  • いろいろな音・人・環境に慣らす
  • 動物病院やトリミングの練習を早く始める

社会化不足は噛みつき行動の最大原因といわれています。


正しい噛みつき対策(しつけ方法)

噛んだ瞬間に「遊びを止める」

最も効果のあるしつけです。

  • 噛んだら、無言で距離を取る
  • 30秒ほど無視
  • 落ち着いたら再開

「噛むと遊びが終わる」というルールを学ばせます。

おもちゃへ噛む力を向けさせる

噛むこと自体は犬の正常行動なので、
正しい対象(おもちゃ)で発散させる ことが重要です。

おすすめ

  • デンタルコング
  • ロープおもちゃ
  • 噛む力に合わせた硬さのおもちゃ

興奮をコントロールする

興奮していると噛む行動が増えるため、
おすわり → ごほうび
などの落ち着くトレーニングが役に立ちます。

社会化期に多様な経験をさせる

  • 子ども
  • 他の犬
  • 車やバイク音
  • 来客
  • いろいろな床の素材

経験が不十分だと、恐怖から噛む行動につながりやすくなります。


やってはいけないNG対応(悪化の原因)

  • 大声で叱る
  • 口をつかむ、押し倒す
  • マズルコントロール(口を押さえつける)
  • 叩く
  • 噛まれた手を動かして挑発する
  • 足で押しのける

これらはすべて 犬を興奮&恐怖させ、噛みつきを悪化させる原因 になります。
しつけではなく 力で抑える行為にすぎず逆効果 です。


子犬期から始めたい「噛まない犬」を育てるトレーニング

触られる練習(ハンドリング)

  • 足先
  • 口周り
  • 背中
  • お腹

「触られても嫌じゃない」という経験が噛み予防になります。

動物病院やトリマーに慣らす

子犬の頃から

  • 病院に入る
  • 体重測定だけする
  • 診察台に乗る
    などの軽い経験を積ませると本気噛みの予防になります。

クレートトレーニング

安心できる場所を作っておくと、興奮を鎮めやすくなります。


咬みつきを放置するとどうなる?

  • 成犬になり力が強くなる
  • しつけが入りにくくなる
  • 人への攻撃がクセになる
  • トリミング・病院で手に負えなくなる
  • 家族の生活に支障が出る

子犬時代の噛みつきは“自然に直る”ものではありません。
正しいしつけをしなければ、そのまま本気噛みにつながります。


病院に相談すべきケース

以下のような場合は専門的な相談をおすすめします。

  • 威嚇しながら噛む
  • 完全に制御できない興奮
  • 体に触ると怒る
  • 子どもを狙って噛む
  • 急に噛むようになった(痛みの可能性)

噛みつき行動には 行動学的治療や医療的介入が必要な場合 があります。


よくある質問(FAQ)

Q. 子犬の甘噛みはいつまで続きますか?

A. 多くは生後4〜6ヶ月で落ち着きますが、しつけが必要です。

Q. 噛んだら「痛い!」と大声を出したほうがいい?

A. 効果がある犬もいますが、興奮が上がって逆効果になる例も多いです。

Q. 噛むおもちゃは必要?

A. 必須です。噛む欲求を正しく満たすための道具です。

Q. 子犬同士の遊びは必要?

A. 社会化のため非常に重要です。


まとめ

  • 若い犬の噛みつきは原因を理解すれば改善できる
  • 甘噛みでも放置すると本気噛みに発展する
  • 正しい噛む対象を与えることが最重要
  • 社会化不足は噛みつきの大きな原因
  • 興奮コントロールとハンドリング練習が噛み予防に効果的
  • 叱る・押さえつけるなどの力のしつけは逆効果
  • 症状が重い場合は専門家に相談を

若いうちに正しいしつけをすることで、
将来の噛みつきトラブルを確実に防ぐことができます。

犬と一緒に生活していると様々な問題行動に頭を悩ませることがあります。

しかし、そのような問題行動のほとんど(すべて)は後天的なものであり、

特に今回お話しした子犬の社会化期に問題があることが多いです。

犬はヒトとの関係は長い歴史があり、犬はオオカミと違いヒトに従順です。

犬と共に生活されている方は、犬の本能に関して正しい知識を持ち、犬の心を正しく理解し生活することができれば、

必ず犬とヒトは良好な関係を構築できます。

ヒトと犬がより双方にとって幸せな日々になるように、少しでも参考になりましたら幸いです。

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愛情が深ければ深いほど患います。

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