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獣医師が伝える犬猫の病気や治療の考え方

犬の扁平上皮癌(SCC)の手術|治療方法・切除範囲・再発率・予後

更新日:2025/12/6

犬が高齢になると口の中にできものができることは少なくありません。

犬の悪性の口腔内腫瘍にはトップ2が存在し、

ひとつは有名なメラノーマ(悪性黒色腫)で、

もうひとつは扁平上皮癌です。

扁平上皮癌は早期に発見し外科的切除を行うことで完治することも可能です。

扁平上皮癌(SCC:Squamous Cell Carcinoma)は、
犬の皮膚・口腔・指先・眼周囲など、日常的に触れられる部位に発生しやすい 悪性腫瘍 です。

SCCは周囲組織への浸潤力が強く、放置すると大きく広がることがあり、
手術が治療の中心となる代表的な腫瘍のひとつ です。

ただし部位や進行度によって治療選択が大きく異なるため、
「どこまで切除するべきか」「手術後の予後はどうなるのか」
といった不安を抱える飼い主の方は多くいらっしゃいます。

この記事では、犬の扁平上皮癌について、
手術適応・切除範囲・再発リスク・術後ケア・予後 をわかりやすくまとめています。

上顎の扁平上皮癌を外科切除し完治した犬~症状と肉眼(外貌)~

前述のとおり扁平上皮癌の症状のメインは痛みと口からの出血やよだれです。

見た目は、メラノーマが黒色のできものに対して、

扁平上皮癌は下の写真のようなピンク色をしています。

この子は口の痛みにより食欲が低下し口のなかを覗くことで見つかりました。

診断

診断には細い針を用いた細胞診検査を実施し仮診断したのち、生検検査を行うことで確定診断されます。

多くの扁平上皮癌は診断された時点で骨を破壊していることが多いので、レントゲンやCT検査も併せて行います。

この腫瘍は数週間もあればどんどん進行しますので、早くに診断治療を行います。

治療選択肢

扁平上皮癌の治療選択肢は

①外科的切除

②放射線治療

③抗がん剤(パラディア、カルボプラチン)

がありますが、可能な限り外科的な切除が望まれる腫瘍です。

その理由は、転移が少なく、局所で悪さをする腫瘍だからです。

この子も、症状が出て2週間で細胞診と生検検査で診断し、CT検査で腫瘍の広がりを確認したのち外科的な切除を行いました。

下は外科的な切除後の写真です。

この切除によってこの子は扁平上皮癌を完治し、その後も元気に過ごしています。

手術の有無にかかわらず、強い痛みが避けれない腫瘍になるので、なにより鎮痛治療が大切になりますので、

手術をする前、しない場合には下記の内容を参考にしてください。

【重要】犬猫の鎮痛治療

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扁平上皮癌(SCC)とは

扁平上皮癌は「表皮・粘膜の上皮細胞」ががん化した腫瘍で、
局所浸潤性が強い(深く広がる) のが特徴です。

転移の頻度は部位により異なります。

  • 皮膚型:転移は少なめ
  • 指先・口腔・鼻腔:転移しやすい傾向あり

早期であれば手術により完治を狙える腫瘍です。

好発部位とそれぞれの特徴

● 手足(特に指)

  • 進行が早く、骨まで浸潤することがある
  • 指全体の切除が必要になるケースも多い

● 鼻の頭(鼻鏡部)

  • 日光曝露が原因となることが多い
  • 表面がただれたり、かさぶたを繰り返す

● 口腔内(舌・歯肉)

  • 進行が早く、出血・よだれ・口臭が出やすい
  • 手術の難易度が高い部位

● 眼瞼・顔周囲

  • 切除すると見た目が大きく変わる可能性がある
  • 再建手術を併用することもある

部位によって治療の考え方が大きく変わる腫瘍です。

手術が推奨される理由

理由はシンプルで、
SCCは「局所で破壊的に広がる」タイプの腫瘍だから です。

  • 周囲皮膚、筋肉、骨まで侵入
  • 表面のびらん・潰瘍を繰り返しやすい
  • 放置すると生活の質が著しく下がる

手術で“広めに切除”することができれば、
完治または長期のコントロールが可能 です。

手術前に行う検査

  • 触診・視診
  • X線(肺転移の確認)
  • CT(部位による浸潤の深さ評価)
  • 血液検査(麻酔リスクの確認)
  • 細胞診または組織検査

特に 指・鼻・口腔・眼周囲のSCCではCT検査が有用 です。

腫瘍切除に十分なマージンが取れるか判断します。

手術の切除範囲(マージン)

SCCでは、「見えている腫瘍」の外側にある 健康な組織も含めて切除 する必要があります。

一般的には:

  • 皮膚型:0.5〜1.0cm
  • 口腔型・指・深部浸潤型:1〜2cm以上

しかし実際は部位により異なり、
十分なマージンを取れない場合は再発率が高くなる ため注意が必要です。

部位別の治療方針

■ 指の扁平上皮癌

  • 最も多い発生部位
  • 骨浸潤を伴うことが多く、指の断趾術 が一般的
  • 切除で長期生存も可能

■ 口腔(舌・歯肉)

  • 進行が早い
  • 顎の骨を一部切除する必要があることも
  • 再発リスクは高め

■ 鼻の頭(鼻鏡部)

  • 比較的ゆっくり進行
  • 初期であれば表層切除+再建可能
  • 放射線治療が有効なことがある

■ 眼瞼

  • 切除範囲により見た目が変わる
  • 再建手術やフラップが必要になる場合も

部位によって治療戦略は大きく変わります。

手術以外の治療(補助療法)

手術で取り切れない場合、または再発予防として:

● 放射線治療

  • SCCは放射線に比較的反応しやすい
  • 切除困難な部位で有効

● 化学療法(抗がん剤)

  • 全身転移がある場合
  • 再発抑制目的

● 分子標的薬(トセラニブなど)

  • 部位・進行度によって選択される

● PDT(光線力学療法)

  • 一部の表在性腫瘍に選択肢となる

腫瘍科では 「手術単独か、併用が必要か」 を症例ごとに判断します。

術後の経過と再発率

● 再発率について

マージンが十分に取れた場合 → 再発しにくい
マージンが不十分だった場合 → 再発しやすい

特に 口腔・指・眼瞼 のSCCは再発率が高めです。

● 術後管理

  • 痛み止め
  • 抗生剤
  • エリザベスカラー
  • 創部の消毒
  • 定期再診(2〜3ヶ月ごと)

予後(生存期間の目安)

予後は部位と進行度で大きく異なります。

  • 皮膚型:良好、数年生存する例も多い
  • 指:切除できれば良好、未治療・再発時は短縮
  • 鼻鏡部:ゆっくり進行、治療次第で長期管理可能
  • 口腔型:再発・転移が多く、予後は不良な傾向

早期発見と十分な切除が予後を大きく左右します。

術後に家庭で気をつけること

  • 創部を舐めさせない
  • 散歩は控えめに
  • 食事は普段通りでOK(口腔切除時は柔らかい食事)
  • 炎症が続く場合は早めに病院へ
  • 傷が治った後も2〜3ヶ月に一度は再診

腫瘍の早期再発は見逃しやすいため、
「いつもと違う腫れ・赤み」があればすぐ受診してください。

よくある質問(FAQ)

Q. 全身麻酔は高齢でもできますか?
→ 可能です。麻酔リスクは年齢より“全身状態”が重視されます。

Q. 手術だけで治りますか?
→ 初期なら治る可能性があります。進行例では補助治療が必要です。

Q. 口の中のSCCはなぜ予後が悪い?
→ 深部へ広がりやすく、マージンを十分に取れないためです。

Q. 放射線治療は痛い?
→ 痛みはなく、眠っている間に行う治療です。

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