更新日:2025/12/9
ヒトと比べ犬猫において目が白くなることはとても多いです。
しかし、眼が白くなるのは白内障などの病的な場合もあれば、
核硬化症という老齢性変化で視力に影響しないものもあります。
昔と比べ眼は白くなっていませんか?
眼はよく見えていますか?
白内障は、目の中にある「水晶体(レンズ)」が白く濁り、ものが見えにくくなる病気です。
犬ではとてもよくみられる病気で、高齢になるほど発生率が上がります。
猫では犬ほど多くはありませんが、糖尿病やぶどう膜炎など、別の病気が原因で起こることもあります。
白内障は放っておくと、
・視力低下・失明
・ぶどう膜炎
・緑内障(強い痛み・失明)
などを起こすことがあり、早期発見と適切な治療・生活管理が重要です。
この記事では、犬と猫の白内障について
「どんな病気か」「どのように進行するのか」「治療や手術の考え方」「手術をしない場合の注意点」
を獣医師の立場からわかりやすくまとめました。

目が白くなる病気
目が白くなる病気=白内障と思われている方がよくおられます。
実は、年をとって目が白くなってきているのは多くの場合は白内障ではなく核硬化症と呼ばれる病態であることが多いです。
核硬化症は、生理的な老化現象として生じ水晶体の一部の透明度が低下する病態ですが、視力の低下は伴いません。
そのため、核硬化症であれば目が白くても気に知る必要はなく、治療法もありません。
しかし、白内障は病的に水晶体の透過性が強く低下するため最終的には視力がなくなりますので、視力温存のためには治療が必要となります。
では、白内障はどのような原因で、どのような品種で起こりやすいでしょうか?
白内障とは?
白内障は、目の中でレンズの役割をしている「水晶体」が白く濁る病気です。
健康な水晶体:
・透明で、光をよく通す
・網膜にくっきりと像を結べる
白内障:
・白く、または灰色に濁る
・光がうまく通らず、ぼやけて見える
・進行するとほとんど見えなくなる
犬では加齢とともに少しずつ進行することが多く、
猫では他の病気に伴って起こることもあります。
白内障と「老齢性核硬化症」の違い
高齢の犬や猫では、白内障とよく間違えられる「老齢性核硬化症」という状態があります。
老齢性核硬化症とは:
・水晶体の中心部が青白く、またはグレーがかって見える
・加齢に伴う変化で、多くは視力に大きな影響はない
・白く濁るというより「うっすら青く曇る」イメージ
白内障との違い:
・白内障は“真っ白〜乳白色”に濁る
・進行すると明らかな視力低下を起こす
・老齢性核硬化症はほとんどの場合、手術は不要
見た目だけで判断するのは難しいため、
「目が白いかも」と感じたら、早めに動物病院で確認することが大切です。
白内障の原因
白内障の原因は、
・遺伝性
後述する品種で遺伝的に発症する
・代謝性
糖尿病が原因となることが多い
・外傷性
眼に傷ができ、水晶体に損傷が至ることで発症する
・薬物性
抗真菌剤が白内障を誘発する薬剤として知られている
・加齢性
10歳以上の老齢動物で緩徐に進行する
犬と猫で異なる主な原因
犬と猫では、白内障の原因や背景となる病気に違いがあります。
犬で多い原因:
・加齢(老齢性白内障)
・遺伝性(特定の犬種)
・糖尿病性白内障
・外傷(打撲や刺し傷など)
・ぶどう膜炎に続発する白内障
特に犬では、糖尿病になると急速に白内障が進行することがあり、
「急に両目が真っ白になった」というケースもあります。
猫で多い背景:
・ぶどう膜炎に続発する白内障
・外傷
・重度の全身疾患に伴う変化
猫では、純粋な“老齢性白内障”は犬ほど多くありません。
そのため、猫で水晶体の濁りが見つかった場合は、
同時に「原因となる別の病気」がないかを丁寧に調べることが重要です。
白内障が多い品種
犬では、
ボストン・テリア、フレンチ・ブルドッグ、シェパード、ブル・テリア、
トイ・プードル、柴犬、アメリカン・コッカー・スパニエル、
ミニチュア・シュナウザー、スパニエル系 が多く
猫では、
バーマン、ヒマラヤン、シャム、ペルシャ、アメリカ在来短毛種で報告がおおいですが、一般的に猫は少ないです。
白内障の症状
白内障によって生じる問題は大きく2つに分けられます。
1つ目は視覚障害・喪失です。
片眼の視覚障害では、一般的な生活環境の中では「ぶつかる」などの行動の異常を示しません。
また、室内飼育の動物では両眼とも視覚喪失していても、日常生活では行動異常があまりみられないこともあります。
わんちゃんは、視力以上に嗅覚など五感が発達しており日常生活に支障をきたさないことも多いです。
そのため,生活上は不便がない場合には、視覚障害を起こしている白内障に対して積極的な治療を望まない飼い主さまも少なくありません。
白内障の進行段階によって、症状や見え方が変わります。
初期:
・目の奥がわずかに白っぽく見える
・段差や暗い場所で少し戸惑う程度
・普段の生活では気づかないことも多い
中期:
・白い濁りがはっきりわかる
・物や人にぶつかることが増える
・薄暗い場所が苦手になる
・表情がぼんやりして見える
重度:
・水晶体がほとんど真っ白に
・視力がほとんど失われる
・家具の位置が変わると動けなくなる
・音や匂いだけを頼りに行動しているように見える
犬や猫は、嗅覚や聴覚が優れているため、
視力がかなり落ちていても、慣れた家の中では意外と普通に見えることもあります。
ただし、新しい環境や段差、夜間の行動で不自由が目立つことが多くなります。
また,2つ目の問題は白内障による合併症です。
白内障から生じる合併症には、
・水晶体起因性ぶどう膜炎(炎症で眼が充血する)
・水晶体脱臼
・緑内障
・網膜剥離
の4つが代表的です。
これらを引き起こすと眼が痛くなったり、不快感を引き起こします。
動物病院で行う検査
白内障かどうか、また手術が可能かどうかを判断するために、以下のような検査を行います。
・眼科検査(スリットランプなどで水晶体の状態を確認)
・眼底検査(網膜の状態を確認)
・眼圧測定(緑内障の有無)
・血液検査(糖尿病・腎臓病・肝臓病など全身状態の把握)
・場合によっては超音波検査(網膜剥離や眼内出血の確認)
白内障の手術を検討する場合は、
「目以外の臓器がどれくらい健康か」も非常に重要なポイントになります。
白内障の治療
白内障そのものを“元どおり透明に戻す薬”は、現時点では存在しません。
白内障の治療は大きく分けて、
・進行や合併症(ぶどう膜炎など)を抑える内科的管理
・見え方を改善させるための外科手術(白内障手術)
の2つです。
内科的管理:
・ぶどう膜炎を抑える点眼・内服
・眼圧が高い場合の薬物治療
・糖尿病がある場合は血糖コントロール
ただし、点眼薬だけで白内障が治ることはありません。
主な役割は「炎症や合併症を抑えること」です。
白内障手術:
一般的には、人と同じように
・濁った水晶体を取り除き
・人工レンズ(人工水晶体)を挿入
する手術が行われます。
手術により視力改善が期待できる条件:
・網膜が生きている(機能している)
・緑内障や重度ぶどう膜炎がない、またはコントロールできている
・全身状態(心臓・腎臓など)が手術に耐えられる
手術には全身麻酔が必要です。
高齢や重い基礎疾患がある場合は、手術のリスクとメリットを慎重に比較する必要があります。
①内科治療
白内障そのものは内科的治療により治癒させることは不可能です。
ただし、白内障に対して外科的治療を実施しない場合でも、
先述した白内障によって生じる合併症に対しては、その都度内科的治療を行う必要があります。
②外科治療
白内障に対する有効な治療法は超音波乳化吸引術を用いた外科的治療です。
白内障手術により,視覚の回復・維持を高い確率で望むことができ、白内障の進行にともなう合併症の発症率を下げることが期待できます。
一般的に犬の白内障手術による視覚回復・維持率は,術後3カ月以内では90%以上といわれています。
しかし、この手術は眼科を専門に診ている獣医師かつ施設でのみ実施可能であり、
費用はおよそ50万円前後とかなり高額になります。
眼科用サプリメント
ヒトにおいてもよく用いられる眼に良いビタミンやブルーベリーに含まれるアントシアニンなどを含むサプリメントです。
白内障の二次的な眼の合併症から眼を守るためのサプリメントであり、白内障を治すことはできません。
犬の眼をケアするサプリメントは飼い主さまはよく内服されています。

手術をしない場合の経過と生活の工夫
何らかの理由で白内障手術を選択しない場合、
・視力は少しずつ低下
・最終的には光を感じる程度になる
・ぶどう膜炎や緑内障を起こすリスク
などが考えられます。
そのため、手術をしない場合でも、
・定期的な眼科検査
・炎症を抑える点眼や内服
・眼圧チェック
などが重要です。
生活面でできる工夫:
・家具の配置を頻繁に変えない
・床に物を散らかさない(つまずき防止)
・階段や危険な段差にはゲートをつける
・夜は薄暗い照明をつけておく
・声かけや音の合図を増やして安心させる
視力を失っても、
嗅覚・聴覚がしっかりしていれば、多くの犬や猫は
環境とサポート次第で、十分に快適な生活を送ることが可能です。
よくある質問(FAQ)
Q. 白内障は必ず手術しないといけませんか?
A. 必ずしもそうではありません。年齢、全身状態、生活の様子、家族の希望を総合して決めます。手術を行わず、点眼や生活環境の工夫で穏やかに過ごす選択もあります。
Q. 点眼薬だけで白内障は治りますか?
A. 現在のところ、白く濁った水晶体を透明に戻す点眼薬はありません。点眼は主に炎症予防や合併症予防が目的です。
Q. 高齢でも白内障手術は可能ですか?
A. 年齢だけではなく、心臓・腎臓・肝臓など全身状態で判断します。高齢でも元気であれば手術が可能なケースもあります。
Q. 白内障は両目とも進行しますか?
A. 多くの場合、両目とも進行しますが、進行の速さや左右差には個体差があります。
Q. 視力がなくなっても、犬や猫は幸せに暮らせますか?
A. はい。環境を整え、家族がサポートすることで、視力を失っても十分に快適に暮らしている犬猫はたくさんいます。
まとめ
・白内障は水晶体が白く濁る病気で、視力低下・失明の原因になる
・犬では加齢・遺伝・糖尿病が主な原因、猫では他疾患に続発することが多い
・老齢性核硬化症と白内障は見た目が似ており、専門的な検査が必要
・根本的に見え方を改善できるのは白内障手術だが、全身状態の評価が必須
・手術をしない場合でも、炎症や緑内障の予防と定期検査が重要
・家具の配置や生活環境を工夫することで、視力が低くても快適に暮らすことは十分可能
眼が白くなる病気でまずポイントなのは、
白内障なのか核硬化症なのかです。
これを見分けるのは実は難しく、病院の検査によって見分けます。
また、眼が見えてるのかどうかが重要で、
眼が見えなくなると壁に当たったり、ものを追えなくなったりするのでわかります。
小さな変化に気をつけて観察していただければと思います。
また、わんちゃんは五感が鋭く、眼にばかり頼って生活していないので、日常生活に支障を来さないことも多いです。
以下に獣医師の視点から、
治療中の犬猫に現実的に選ばれているフードをまとめまています。
▶︎ 犬猫に配慮したフードの考え方を見る
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