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獣医師が伝える犬猫の病気や治療の考え方

猫の鼻腔腫瘍と放射線治療|最も効果が高い治療法・症状・診断・予後~リンパ腫?腺癌?扁平上皮癌?~

更新日:2025/12/5

犬猫問わず鼻の中(鼻腔内)に腫瘍が発生することは少なくありません。

高齢の犬猫において長い期間鼻血が出ている場合などは鼻腔内に腫瘍が発生している可能性も考える必要があります。

その中でも、猫ちゃんの鼻腔内で発生する腫瘍はリンパ腫と扁平上皮癌(または腺癌)

がほとんどを占め、そのメインの治療に放射線治療が推奨されてます。

おうちの子が急に鼻の中に腫瘍が見つかり、

『放射線治療が必要です』や

『近くには放射線を当てる施設がありません』など、どうしてあげたらいいのかわからなくなってしまう飼い主様も多いのではないでしょうか。

猫の鼻づまり・くしゃみ・鼻血が長引くときに
最も疑わないといけない病気が 鼻腔腫瘍(びくうしゅよう) です。

猫の鼻腔腫瘍は

  • 約50〜70%がリンパ腫(悪性リンパ腫)
  • 続いて腺癌・扁平上皮癌などの“上皮系腫瘍”
  • 高齢猫に多い
  • 発見時には大きくなっていることが多い

という特徴があります。

そして、

✔ 猫の鼻腔腫瘍は 放射線治療が最も効果の高い治療法

(世界中で“一番効く”とされている)

この記事では腫瘍科医として、
症状・診断(CT/内視鏡)・放射線治療の適応・抗がん剤との併用・予後(生存期間)
をわかりやすく紹介します。

猫の鼻腔腫瘍とは?

鼻腔・副鼻腔にできる腫瘍の総称。

🟥 放置すると

  • 鼻づまり
  • 破壊性の骨浸潤
  • 眼の突出
  • 神経症状
    を起こす。

呼吸が荒く酸素室が必要なことも多いです。
そのような状況の場合は以下を参考にしてください。

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🟧 年齢

10歳以上の高齢猫に圧倒的に多い。

よくある症状(“長引く鼻づまり”は要注意)


鼻が片側だけつまる

鼻血(特に片側)

くしゃみが続く

膿のような鼻汁

目がしょぼしょぼ

呼吸音がゴロゴロ

食欲低下

顔が腫れる(進行例)

※“抗生剤で改善しない鼻炎”は鼻腔腫瘍の典型パターン。


この症状は鼻の中局所の問題で引き起こされるので、

気づいて診断されるときにはまだ比較的早期であり、腫瘍が鼻腔内に限局していること
が多いと考えられます。
つまり、この腫瘍をやつけるためには腫瘍治療の3本柱【外科・放射線・抗がん剤】の中で強力な局所治療である外科か放射線が効果が高いとされます。

ただ、鼻の中の腫瘍を外科によってすべて摘出することは困難でありかつ強い侵襲を伴うため適応されることはほとんどありません。

そのため、鼻腔内の腫瘍をやつけるために放射線治療は欠かせない治療になるのです。

とはいっても、聞きなれない放射線治療は、どこで、どのように、どのくらいの期間、いくらくらいで可能なのかさっぱりわからない飼い主様がほとんどで、

選択肢として提示されても選択できないことも多いと思います。

鼻腔腫瘍の種類(猫はリンパ腫が最多)

種類頻度特徴
🟥 リンパ腫(50〜70%)最多放射線との相性が非常に良い
🟧 腺癌次に多い局所浸潤しやすい
🟨 扁平上皮癌少なめ進行は中等度
🟦 その他(肉腫など)まれ放射線効果は腫瘍により異なる

診断方法(レントゲン・CT・内視鏡)

✔ ① レントゲン

骨の破壊が見えることもあるが
診断には不十分。

✔ ② CT検査(最重要)

放射線前には必須レベル。

CTで分かる

  • 腫瘍の範囲
  • 骨の浸潤
  • 眼・脳への広がり
  • 放射線のターゲット設定
  • 反対側の鼻腔の状態

✔ ③ 内視鏡・組織検査

確定診断に必要。
鼻腔から腫瘍の一部を採取(生検)する。

まず放射線治療とは❔放射線治療が“最も効果的”な理由

猫の鼻腔腫瘍は 放射線感受性が高い

🟩 効果

  • 腫瘍が縮小
  • 鼻づまり改善
  • 鼻血が止まる
  • 食欲が戻る
  • 生活の質が一気に上がる

🟥 特にリンパ腫は 劇的に良くなる

1〜3回の照射で改善が見られることもある。

犬猫の腫瘍治療の3本柱のひとつである放射線治療がどのようなものか詳しくまとめていますので、ご不明な場合はまず下記のコラムをお読みください。

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治療計画(分割回数・麻酔)

目的や施設により違うが:

◆ よくあるスケジュール

  • 週1 × 4〜6回の寡分割照射
  • もしくは 週5 × 15〜20回の通常分割照射

◆ 麻酔

猫は動くため 毎回軽い麻酔が必要
時間は10〜20分程度。

抗がん剤との併用

腫瘍の種類により併用する。

🟥 【鼻腔リンパ腫】

放射線+抗がん剤(CHOP or L-アスパラギナーゼ)
が最も生存が長いと言われている。

🟧 【上皮系腫瘍(腺癌・扁平上皮癌)】

→ 抗がん剤の効果は限定的
→ 放射線が中心治療

副作用(急性/晩発)

🟥 急性(治療中〜数週間後)

  • 鼻の炎症
  • 涙が増える
  • 皮膚の赤み
  • 鼻汁の悪化

🟧 晩発(半年〜数年後)

  • 皮膚の変色
  • 口腔内の変化
  • まれに神経症状(非常に稀)

生存期間(予後データ)

腫瘍の種類により予後が変わる。

腫瘍タイプ放射線のみ放射線+抗がん剤
🟥 リンパ腫約12〜18ヶ月18〜30ヶ月以上
🟧 腺癌8〜14ヶ月追加で+数ヶ月
🟧 扁平上皮癌8〜12ヶ月劇的な差は少ない

※治療しない場合は数週間〜数ヶ月で悪化。

放置するとどうなる?

  • 鼻づまり悪化
  • 鼻血
  • 顔の変形
  • 眼の突出
  • 痛み
  • 食べられない
  • 呼吸困難
  • 体重減少

生活の質が大きく低下し、猫自身がかなりしんどくなる。

飼い主が気づきやすいサイン

片側だけの鼻づまり

片側の鼻血

くしゃみが長引く

鼻汁のにおい

食べづらそう

いびき

顔が腫れてきた

一直線に息が吸えていない

治療前に正しい診断と評価

放射線治療などの治療はどうしても全身麻酔や侵襲が避けれません。

高齢の子にそのような負担をかけていいものか、と悩まれる飼い主様も多いと思います。

放射線治療を行う前には必ず正しく腫瘍の診断と進行状況の評価を行うためにCT検査と病理組織検査を実施します。

うちの子は何度も麻酔に耐えれれるのか、と不安な飼い主様は下記のコラムを参考にどうしてあげるべきか考えてあげてください。

鼻腔内リンパ腫の放射線治療

猫においてリンパ腫とは最も多い悪性腫瘍ですが、鼻腔内リンパ腫はあまり聞きなれないかもしれません。

リンパ腫については下記のコラム内でまとめています。

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まず鼻腔内リンパ腫の治療を考えるうえでは、放射線治療と抗がん剤が不可欠です。

もしそれぞれの治療のイメージがわかない場合は前のコラムでイメージがついたうえで読み進められることをお勧めします(難しい用語もありますので)。

まず、リンパ腫の場合は血液の腫瘍なので一般的には抗がん剤治療です。

しかし、鼻腔内リンパ腫の場合はリンパ腫が鼻腔内に限局していることが多いので、

①まず放射線治療を実施しその後抗がん剤治療を実施する

もしくは

②放射線治療と抗がん剤治療を並行して行う

このどちらかの治療が最も延命効果が高いとされています。

どちらを行うかは腫瘍の全身への広がりや進行具合で検討します。

実際に実施した場合の結果としては、

放射線治療を週に1~3回を1カ月間(合計照射量32Gy以上)続け抗がん剤治療も行った場合は平均3年近く元気に過ごすことができたというデータがあります。

この結果はもちろん平均ですので数か月の子もいれば3年以上の子もいるということになります。

貧血がある場合や脳の方へ腫瘍が浸潤している場合はこの治療成績は少し下がってしまいます。

鼻腔内扁平上皮癌(腺癌)と放射線治療

鼻腔の扁平上皮癌/腺癌はリンパ腫の次に猫の鼻腔内で多い腫瘍です。

この腫瘍はリンパ腫と異なり比較的ゆっくり進行することが多いため、お顔の変形な症状は伴うものの比較的長く生きることが多いです。

短命になってしまうのは、治療前からお顔の変形がある場合や脳に浸潤している場合、つまりすでに進行している場合ですが、鼻血などの症状で早期に見つかる場合が多いので手遅れなことは多くはありません。

リンパ腫と異なり扁平上皮癌(腺癌)は抗がん剤が効きにくいので基本的には放射線のみで治療します。

ただし、近年新たな治療薬が開発されたため選択肢は広がりつつあります。その内容に関しては下記のコラムでまとめます。

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扁平上皮癌(腺癌)の放射線治療は週に1回の治療を合計4~6回実施します。

この治療によって平均1年半元気に過ごすことができます。これもあくまで平均です。

短いように感じますが、猫ちゃんの1年半はヒトの7年近くに相当します。悪性の腫瘍を患いそれだけ元気に過ごすことができることは大きな価値があるといえます。

よくある質問(FAQ)

放射線は痛い?

→ 痛くない。麻酔で寝ている間に終わる。

Q. 高齢でも治療できる?

→ 全身状態が安定していれば可能。

Q. 手術はできる?

→ 猫の鼻腔腫瘍は手術はほぼ不可能(構造的理由)。

Q. 完治する?

→ 完全な完治より“長期間のコントロール”が目的。

まとめ

  • 猫の鼻腔腫瘍は 50〜70%がリンパ腫
  • 抗生剤で治らない鼻炎→最重要サイン
  • 診断には CT+生検 が必須
  • 放射線治療が最も効果の高い治療
  • リンパ腫なら“劇的に改善する”ことも
  • 抗がん剤の併用でさらに予後が延びる
  • 放置すると呼吸困難・顔面変形・QOL低下

“鼻づまりが長引く猫”は
必ず鼻腔腫瘍を疑って早めに検査を受けてほしい。

腫瘍は敵であるとともに自分の体の一部でもあります。

この腫瘍をやつけるためにはどうしても一部の自分の身体も攻撃することになってしまいます。

外科の場合は体にメスで傷をつけること。抗がん剤の場合は副作用。放射線の場合は放射線障害。

しかし、ここで考えるのはメリットとデメリットのバランスだと思います。

この治療が最終的にその子のためになるようにさまざまな観点から正しい知識をもって選択いただければと思います。

なるべくお家で過ごすことが何より大切かと思います。
そのような状況の方は選択肢の一つに以下も参考にしてください。

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