更新日:2025/12/9
知らないうちに部屋が散らかっている!
ティッシュを食べてしまった!
今何か拾い食いした?!
ひやりとした経験はありませんか?
若い犬猫、特に1歳前後の子はとても好奇心が旺盛であるので、
普通は口にしないようなものを口に入れてしまったり、思わぬ誤飲をしてしまうことはよくあります。
誤飲は手遅れになると命に関わることもあり、誤飲で命を落とした子も悲しいですが拝見します。
場合によっては 腸閉塞・穿孔・中毒・命に関わる状態 に進行することもあります。
誤飲は「様子見で大丈夫なケース」と「すぐ病院へ行くべきケース」があり、
判断を誤ると危険な結果につながります。
この記事では、
犬猫がよく誤飲する物・危険なサイン・診断・治療・家庭での対処法 を獣医師がわかりやすく解説します。

どんな異物が多い?
犬猫はあらゆるものが誤飲の原因のなります。
経験上、手術して出てきた異物として多いものを挙げると、
・食べ物の種(梅干し、桃などの果物)
・ヒモ、輪ゴム(猫)
・犬猫用のおもちゃの一部(噛みちぎれるもの)
・トウモロコシの種
・マタタビの種
などです。
この中でも圧倒的に多いのが赤文字にしているもので、特にヒモや布系のものは盲点になりやすく発生が多いです。
ヒモ遊びをよくする猫ちゃんは特に要注意です。
犬と猫がよく誤飲するもの一覧
■ ① 食べ物系
- 骨(鳥骨・豚骨)
- トウモロコシの芯
- 果物の種
■ ② 布・ひも・おもちゃ
- 靴下
- タオル
- ひも(猫で特に危険)
- ペット用ぬいぐるみの中身
■ ③ 家庭用品
- 竹串
- ビニール
- 輪ゴム
- ボタン電池
- 飼い主の薬
■ ④ 園芸・屋外の異物
- 石
- 細い枝
- プラスチック片
特に ひも状異物・尖った物・電池 は命に関わる危険性が高い異物です。
誤飲の症状(初期〜重度)
異物の種類・大きさ・位置によって症状は変化します。
■ 初期症状
- 落ち着かない
- よだれ
- 嘔吐・吐こうとする
- いつもと違う鳴き方
■ 進行した症状
- 繰り返す嘔吐
- 食欲不振
- 元気低下
- 便が出ない
- お腹の張り
- ぐったりする
これらが続く場合は、腸閉塞が疑われます。
■ 猫での特徴
猫は ひも状異物(線状異物) を飲み込みやすく、
腸が絞られ、腸穿孔を起こす危険が非常に高いです。
特に危険な異物
■ ① ひも・糸・リボン
→ 猫で最も危険。腸が波打つように引き込まれ穿孔しやすい
→ 緊急手術が必要になることが多い
■ ② ボタン電池
→ 胃や食道で化学反応を起こし 数時間で穴があく
→ 直ちに病院へ
■ ③ 竹串・針・硬い骨
→ 消化管を刺して穿孔のリスク
→ レントゲン・CTで確認して処置が必要
■ ④ トウモロコシの芯・果物の種
→ 吸収されず腸閉塞になりやすい
誤飲を目撃したら?
目の前で上記のような異物を誤飲をした場合は、すぐに身支度をしてください。
すぐに動物病院に連れてきてください。
その理由は、胃内異物と腸閉塞には大きな差があるからです。
胃の中に入ったものは、体の大きさや胃の空虚率にもよりますが、数時間以内に胃から流出を開始します。
胃から流出する前にいかに治療を開始できるかがポイントです。
自然に出る?病院へ行くべき?
■ 自然に出る可能性があるケース
- 小さな布片
- 小さいビニール
- 1〜2cm程度の柔らかいもの
- 誤飲後も元気・食欲がある
※ ただし 無症状でもレントゲンが必要 なケースは多いです。
■ すぐ病院へ行くべきケース
- ひも、糸、リボン
- ボタン電池
- 竹串・針など尖った物
- 大きな果物の種
- 嘔吐が続く
- ぐったりしている
- 猫での誤飲全般
誤飲は 時間が最も重要 です。
早く対処するほど安全に取り出せる可能性が高くなります。
動物病院で行う検査
- レントゲン
- 超音波検査
- CT検査(奥に隠れた異物の評価に有効)
- 血液検査(脱水・電解質異常の評価)
異物の位置・形状・素材により治療方法が変わります。
胃内異物の治療
胃の中に異物がある場合は、本人はとても元気であるので、見た目で気づくことはできません。
胃内異物が胃を荒らしたり胃の運動性を下げると嘔吐をすることもありますが無症状であることも多いです。
異物を誤飲したのを目撃したもしくはレントゲン等で胃の中に異物を認めた場合は、まずその異物の大きさが消化管を流れるかどうかを判断します。
小型犬や猫の場合は梅干しの種のサイズは腸に詰まります。
胃内の場合はまず、催吐処置によりはきだしてくれるか試みます。
ここで吐いてくれない場合は、内視鏡によって摘出可能か試みます。
内視鏡は異物の大きさや形状によっては摘出できないこともあります。
その場合は開腹手術を行い、胃切開によって異物を摘出します。
胃内異物であればたとえ手術になったとしても、命に関わることはほとんどなく、回復は早いです。
催吐処置で約1万円弱、内視鏡や開腹手術の場合は約10万円弱の費用が相場でしょう。
腸閉塞の治療
異物を食べてから時間が経過している場合は、胃から腸に流出し、腸閉塞を引き起こします。
ヒモの場合も腸に引っかかってしまい流れなくなります。
その場合は、初期の症状は、元気で食欲もありながらゲロゲロと吐き続けます。
異物の場合の嘔吐は1回や2回ではありません。
若くしてゲロゲロ吐いてる元気な子は、異物の危険性大です。
さらに時間が経つと腸に穴が開いてしまったり(腸穿孔)、
激しい腸炎や腸の壊死を引き起こし命の危険にさらされます。
画像検査にて腸閉塞が疑われる場合は、有無を言わさず緊急開腹手術しかありません。
本当に詰まっているのであれば様子を見ることは命取りになります。
しかし、腸閉塞の画像検査は十分な施設や獣医師でなければ判断が難しいことがあるので注意します。
開腹手術によって異物が摘出された後は、数日間入院が必要となります。
開腹手術+入院の場合、必要な手術の程度にもよりますが、費用は約20万円前後かかります。
治療方法まとめ
■ ① 催吐処置(吐かせる治療)
- 飲み込んですぐ(数時間以内)
- 鋭利なもの以外
- 猫では安全性の問題から実施が難しいことが多い
■ ② 内視鏡で取り出す
- 胃内の異物に最適
- 手術より体への負担が少ない
- ボタン電池や小物に有効
■ ③ 開腹手術
- 腸閉塞
- ひも状異物
- 穿孔が疑われる場合
- 内視鏡で届かない位置の場合
手術は命を救うために必要な処置です。
家庭で絶対にやってはいけないこと
- 無理に吐かせようとする
- 口の奥を触る
- 様子見を続ける
- 油・牛乳を飲ませる
- ひもを引っ張る
特に猫のひも誤飲で ひもを引っ張るのは絶対に禁止 です。
よくある質問(FAQ)
Q. 何時間までなら様子を見ていいですか?
→ 嘔吐や元気低下がある場合は、時間を空けず受診を。
Q. 食べてから元気なら大丈夫?
→ 無症状でも腸で詰まっていることがあります。検査が必要です。
Q. 家庭でできる予防法は?
→ ひも・おもちゃの管理、届く範囲に物を置かないことが重要です。
まとめ
- 誤飲は犬猫で非常に多いトラブル
- ひも・電池・尖った物は特に危険
- 嘔吐・元気低下・お腹の張りは腸閉塞のサイン
- 診断にはレントゲン・超音波・CTが有効
- 治療は催吐、内視鏡、手術から選択
- 猫のひも誤飲は緊急度が高い
- 判断に迷うときは早めの受診が最も安全
誤飲の最大のポイントは
・元気はどうあれ若い子が何度もゲロゲロ吐いてるのは異物をまず考える
・誤飲は発見、治療が遅れれば遅れるほど危険性も費用も上がる
・ヒモや輪ゴムなど予想外のものが思わぬ落とし穴
です。
若いうちは好奇心旺盛でなんでも口にしてしまうのは仕方ありません。
誤飲は動物のせいでは決してありません。
若いうちや誤飲癖がある子は、よくよく注意し、生活環境や食生活を整えて頂ければと思います。
以下に獣医師の視点から、
治療中の犬猫に現実的に選ばれているフードをまとめまています。
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