更新日:2025/12/12
お家の子は栄養は足りていますか?
犬猫は言葉を話せません。
犬猫が十分な栄養摂取ができているかは正確な知識をもって、
客観的に評価する必要があります。
なぜ『栄養』のことを取り上げるかというと、特に、
病気を患っている犬猫は栄養不足であることが多く、
特に腫瘍を患う犬猫ではその傾向がとても強くなるとわかっているからです。
※本記事は、獣医師の立場から
腫瘍(がん)と診断された犬・猫の食事と栄養管理の考え方について、
できるだけ分かりやすく解説しています。
腫瘍と診断されたとき、食事で悩むのは自然なこと
腫瘍と診断されたあと、多くの飼い主さんが次のような疑問を持ちます。
- 「今までのフードを続けていいの?」
- 「肉は腫瘍を大きくしない?」
- 「糖質は減らした方がいい?」
- 「何を信じたらいいのか分からない」
ネットにはさまざまな情報があふれており、
不安になるのは当然です。
獣医師としてまずお伝えしたいのは、
👉 「腫瘍=この食事が正解」という単純な答えは存在しない
ということです。
大切なのは、
**その子の状態に合った“現実的な栄養管理”**を考えることです。

犬と猫は“肉食寄り雑食”|基本の食性
◆ 猫 → 完全肉食寄り
- 高たんぱく必須
- タウリンなど、肉に多い栄養が不可欠
- 穀物・野菜だけでは絶対に不足する
◆ 犬 → 雑食寄りだが“肉メイン”の方が体に合う
- たんぱく質は重要栄養源
- 消化酵素も動物性に適応
肉は犬猫にとって重要な食材であり、
「肉自体を与えるのはOK」
ただし
“どう扱うか”で健康が大きく変わる。
栄養管理の重要性
病気を患う犬猫は栄養不足になっていることが多く、
特にがんを患う犬猫は大幅な栄養不足により痩せてしまうことが多いのです。
アメリカの高度医療を行う動物病院における調査では、
集中管理(ICU入院)をしている入院犬276頭のうち73%は栄養不足に陥っているとの報告されており、
入院での集中管理であっても栄養が足りていないことがわかります。
十分な栄養管理を行うことは以下の効果があることがわかっています。
・免疫機構の改善
・創傷治癒の促進
・治療反応性がよくなる
・回復時間の短縮
・生存期間の延長
飢餓や生理的なストレスはこれらの逆の働きをしますので、
適切かつ十分な栄養管理がなにより望まれます。
腫瘍と栄養の基本的な考え方
「腫瘍は糖を使う」は事実だが、単純ではない
腫瘍細胞が糖を利用しやすい(いわゆるワールブルグ効果)
という考え方は、獣医学的にも知られています。
ただし、
- 糖を完全に断てば腫瘍が小さくなる
- 糖質=すべて悪
という単純な話ではありません。
極端な糖質制限は、
- 食欲低下
- 体重減少
- 筋肉量の減少
を引き起こし、
結果的に体力を落とし、予後を悪くすることもあります。
腫瘍の犬猫で最優先すべきこと
獣医師として最も重視しているのは、次の点です。
「体重と筋肉量を維持できているか」
腫瘍の犬猫では、
- 食欲不振
- 体重減少
- がん悪液質
が進行すると、
治療の選択肢が狭まり、生活の質も低下します。
👉 「何を食べるか」より
👉 「ちゃんと食べられているか」
これが、栄養管理の大前提です。
タンパク質は「量」より「質」
腫瘍の犬猫では、タンパク質を極端に制限する必要はありません。
重要なのは、
- 消化吸収が良い
- 高品質な動物性タンパク
- 適切な量
です。
粗悪な高タンパクよりも、
質の良いタンパクを無理なく摂取できることが重要です。
犬と猫で考え方は異なる
犬の場合
- 雑食性に近い
- 極端な制限は不要
- 消化性・嗜好性・体重維持を重視
👉 「食べられるフードを続ける」ことが最優先
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猫の場合
猫は完全な肉食動物です。
- 食べない時間が続くと危険
- 高タンパクは基本的に必要
- 食欲低下は即リスク
👉 猫では「食べない」こと自体が最大の問題になります。
※腎臓疾患がある場合は別途配慮が必要ですが、
腫瘍があるからといって過度にタンパクを避ける必要はありません。
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栄養管理の方法
まず犬猫が積極的な栄養管理やサポートを必要としているかの判断するポイントをまとめます。
これが客観的な評価です。
・食欲の低下が3~5日続いている
・皮下脂肪が少なく肋骨がうき上がり、くびれている
・5%以上体重が減った
・アルブミン(血液検査)値が低い
これらをひとつでも満たす場合はすでに体は飢餓状態であり、
エネルギーは体の脂肪や筋肉を分解して得られている状態ですので、
積極的に栄養サポートをするべきです。
栄養管理のポイントは2つ
①栄養の給餌方法
②与える栄養の内容
①に関して、自分から食べる場合は②を強化してサポートします。
①強制給餌による栄養管理
自分から食べない場合は、強制給餌を行う必要があります。
強制給餌は、ごはんをミキサーにかけ団子状や泥状にしてシリンジなどを用いて与えるかもしくは、
病院で給餌ルートを設置します。
比較的よく設置する給餌ルートは
鼻チューブ、食道チューブ、胃ろうチューブ
があります。
鼻のチューブは麻酔かけずに簡単に設置でき非侵襲的で最もよく用いますが、
くしゃみで抜けてしまったりするので長期間の管理には向きません。
胃チューブや食道チューブは長期的な栄養管理には最適であり、
本人の不快感なく給餌することができますが設置する際に短時間の麻酔が必要となります。
②給餌すべき食事内容
給餌すべき内容は各病態により異なります。
腎臓病の場合は低Pや低蛋白、消化管の病気の場合は低脂肪などさまざまです。
その子その子で最適な食事内容は大きく異なります。
おうちの子がどのような食事が望ましいか考えオーダーメイドに食事を選択することが最適です。

腫瘍患者の栄養管理
腫瘍は成長に多くのエネルギーを使用するので、
しっかり食べていても腫瘍に栄養が奪われてしまうのでどんどん痩せてしまいます。
そのため腫瘍を患っている犬猫はより十分な栄養管理が必要となります。
その際のポイントは
エネルギー源はなるべく
良質なタンパク質と脂肪です!
意外ですよね。
これは、炭水化物は腫瘍が成長に使用してしまうからです
また、脂肪はとてもエネルギー効率が高く、タンパク質は筋肉源になり、
腫瘍を大きくするのを抑える重要なアミノ酸を含みます。
また腫瘍を患う犬猫は、体重に対する食事量の1.5倍ほどの量を食べる必要があります。
栄養の豊富さと腫瘍治療成績は相関があるとの海外の報告もあり、とても大切なことです。
その1番の理由は腫瘍免疫にあります。
腫瘍は自身の身体にとって異物なので自己の免疫でやつけようとします。
この免疫力を上げることは直接的に腫瘍治療に関わるのです。
手作り食についての現実的な考え方
腫瘍と診断されると、
「何かしてあげたい」
「手作りの方が体に良いのでは」
と考える飼い主さんも多いです。
その気持ちはとても自然です。
ただし、治療中の犬猫では、
- 栄養バランスが崩れやすい
- 毎回内容が変わる
- 再現性が低い
といったリスクもあります。
獣医師としては、
👉 治療中は「安定して再現できる食事」
👉 信頼できる総合栄養食をベースにする
という考え方をおすすめしています。
腫瘍の犬猫で「現実的に選ばれているフード」
ここでは、
腫瘍治療中・シニア期で悩む飼い主さんが、
実際に選ぶことの多いフードの考え方を紹介します。
腫瘍があっても、
「食べられていること」そのものが治療を支えます。
フード選びで迷っている場合は、
獣医師の視点で整理した選択肢を参考にしてください。
🐶 犬|腫瘍治療中・体重維持が課題の場合
小型犬・シニア犬で食事に悩んでいる場合
- 食べやすい粒
- 嗜好性
- 長期継続しやすさ
👉 総合的なフード選びの考え方はこちら
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フード選びに迷っている場合
- 比較の基準がほしい
- 食いつきを重視したい
👉 プレミアムフードの基準点として
▶︎ モグワンドッグフードの獣医師レビュー
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食欲が落ちた犬に「まず食べてもらう」ための現実的な選択肢― マックアダムズ ドッグフード(チキン)
―腫瘍の犬や体調を崩している犬では、食欲が落ちるドライフードを急に食べなくなる食べられる量が極端に減るといったことがよく起こります。
この段階で一番避けたいのは、「理想的な栄養を追い求めるあまり、結果的にほとんど食べられなくなること」。
マックアダムズ ドッグフード(チキン)は、香りが立ちやすい噛んだときの食感が良いドライフードが苦手な犬でも受け入れられやすいという特徴があり、食欲不振・食ムラがある犬で選択肢になることがあります。
👉 食欲不振・食ムラが続く犬の選択肢として
🐱 猫|腫瘍治療中・食欲低下が気になる場合
筋肉量維持・高品質タンパクを重視したい
- 完全肉食動物に適した設計
- 動物性タンパク中心
👉 高タンパクキャットフードの考え方
▶︎ ジャガーキャットフード解説
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食べにくそう・口を気にしている場合
腫瘍の猫では、
- 口腔内トラブル
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が原因で、食欲が落ちているケースも少なくありません。
👉 歯と口腔ケアから見直す選択肢
▶︎ デンタルケア特化キャットフード
※本記事は、獣医師の立場から猫の歯周病と全身の健康との関係、そして 毎日の食事でできる口腔ケアについて解説します。猫の歯のトラブルは「とても多い」猫は、歯磨きが難しい口の中を見せてくれない[…]
よくある質問
Q. 腫瘍の犬猫に肉はあげていい?
基本的には問題ありません。
食べられていることが最優先です。
Q. 糖質は減らすべき?
極端な制限はおすすめしません。
体重・筋肉量を維持できているかを重視してください。
Q. サプリは必要?
必須ではありません。
フードで安定した栄養が摂れているかが重要です。
まとめ|腫瘍の食事で一番大切なこと
腫瘍の犬猫の食事で、
獣医師として一番お伝えしたいのは次の言葉です。
「正解のフード」より、
「その子が、今日もしっかり食べられること」
栄養管理は、
治療を支える土台です。
迷ったときは、
「難しいことをやりすぎていないか」
を一度立ち止まって考えてみてください。
【病気別】犬猫のオーダーメイド食事管理
若くから生活習慣病として様々な病気に罹患する犬猫ちゃんはなによりオーダーメイドな食事が大切です。少しでも参考になりましたら幸いです。
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