夏は人々に熱中症緊急アラートが発令されますが、
わんちゃんはもっともっと要注意になります。
自分の動物病院でも1年に1頭は熱中症で命を落とすわんちゃんを目の当たりにし胸が痛みます。
夏はわんちゃんこそ【熱中症緊急アラート】です!
熱中症になるとどうなるのでしょうか?
今回は、熱中症で命を落としたわんちゃんのお話をします。
熱中症になった原因
白いフレンチブルドッグの3歳の子でした。
来院された際はほとんどもう意識はなく、ヨダレとパンティングがひどく駆け込んで来られました。
このようになった理由を尋ねると、
お盆でわんちゃんと一緒にお墓参りに行かれたとのことでした。
しかし、熱中症には十分注意し、クーラーのきいた車で、こまめに水分補給も行っておられましたが、
炎天下のお墓に数分外に出て、車に戻ってきてからおかしくなったとのことでした。
特にフレブルやパグ以外にも、チワワやシーズー、ペキニーズなどのわんちゃんは体温調節が極めて苦手ですので、
短時間でも今の異常な暑さでは熱中症の引き金になります。
また、もともとの体調や朝からの水和状態もわからないし、外に出る時間以外も車のストレスや車酔い等、気づいてないことも多いでしょう。
駆け込み~症状
来院され熱中症を疑い体温を測ると41.6℃でした。
すぐに気管に管を通し、人工呼吸をつなぎ、
体を水と氷で冷やし、血液検査を行いました。
お尻からは赤黒い下痢があふれでてきました。
体温は30分ほどで39.0まで下がりましたが、
意識は回復してきませんでした。
血液検査と後遺症
血液検査では重度の脱水症状と、ショック状態により重度の腎不全を引き起こしていました。
また、神経の検査を行うと重度の不可逆的な(回復する見込みが乏しい)脳障害を引き起こしていました。
また、赤黒い下痢が止まることなく肛門からで続けていました。
この理由は、熱中症により重度の脱水、循環不全、高体温により血流が豊富な臓器である脳や腎臓や消化管が強いダメージをうけ、
不可逆的な損傷を負ってしまったからです。
腎臓や脳は強いダメージを受けると回復できずに命に関わる臓器です。
熱中症も軽度や短時間であればすぐに回復しますが、少しでも対応が遅れたり、
重度の場合はこのように急激に多臓器不全に陥ります。
熱中症の最期
このフレブルちゃんは数時間人工呼吸を行い集中治療を全力で行いました。
しかし、意識は回復せず(回復の見込みがない神経症状)、尿が全く作られなくなりました。
その後体のバイタルサインが悪くなり、予後不良となり亡くなりました。
まとめ
人は暑いなぁとか、喉が乾いたとか言葉に出し、
熱中症にならないように塩分をとったり、
無理やり水分をとったりします。
わんちゃんはそのようなことはできませんし、
言葉を発することもできません。
また、今回の飼い主さまのように熱中症に十分注意していても熱中症になることがあります。
しかし、専門的な立場で見ると防げるポイントはあったし、小さなサインは出ています。
ポイントは正しい知識をもって生活を管理してあげるかが大切です。
素人判断であることが多いと日々感じます。
熱中症の細かな知識に関しては下記のコラムをご覧ください。
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