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獣医師が伝える犬猫の病気や治療の考え方

心臓と肺の関係|咳・呼吸が苦しそうになる理由を獣医師がわかりやすく解説

更新日:2025/12/7

肺水腫は犬猫が急に呼吸困難になり、緊急を要するとても発生率が高い病態です。

高齢犬や心筋症の猫ちゃんは肺水腫になることが少なくありません。

また、肺水腫は心臓病以外の原因においても発生することがあるので注意が必要です。

犬や猫で「咳が出る」「呼吸が速い」「息が苦しそう」といった症状が見られると、
肺の病気に見えますが、実は 心臓病が原因 で起きていることも多くあります。

心臓と肺はすぐ近くに位置し、
血液を送り出す・酸素を取り込むという大切な役割を分担しているため、
どちらかが悪くなると お互いに強く影響し合う 仕組みになっています。

この記事では、「心臓病があると肺に何が起こるのか」「咳や呼吸症状とどう関係するのか」を獣医師が分かりやすく解説します。

肺水腫とは

肺水腫は心臓含め様々な原因で肺に水が溜まり換気ができなくなり呼吸困難になる病気です。

胸水との違いは、

胸水は肺の周りの胸腔内に水が溜まるのに対し、

肺水腫は肺自体のなかの肺胞と呼ばれる酸素交換を行うところに水が溜まることを指します。

つまり、溺れているような状態で極めて苦しく、命に関わります。

犬猫ともに多くの原因は心臓病であり、

心臓の拍出が不十分のために、肺に負荷がかかり水が滲みだしてしまいます。

心臓の力が弱まり、血液を十分に送り出せなくなると、
肺の血管に血液が滞り、血管から水分がしみ出して 肺に水がたまります

これを 心原性肺水腫 と呼びます。

肺水腫が起こると、

  • 息が苦しそうに大きく動く
  • 呼吸が速い
  • 泡のような咳
  • 横になれず座ったまま荒い呼吸
  • ぐったりする

などの症状が出て、命に関わります。

緊急治療として

  • 酸素吸入
  • 利尿剤
  • 心臓の薬
  • 点滴調整

などが必要です。

肺水腫の原因

急に肺水腫を引き起こす原因として下記のものがあります。

心臓病ー犬で慢性弁膜症、猫で心筋症が最多

・肺炎

・全身性の炎症反応(SIRS)

輸液過剰、過水和(人為的)

・発作や熱中症後

・上部気道閉塞 など

臨床上多く遭遇するのはほとんど心臓に起因しますが、他にも原因はありますし、肺炎などと混在していることも多いです。

また、腎不全など何らかの理由で点滴を行っている子は輸液過剰に伴う過水和にも注意が必要となります。

心臓と肺はどのように関係している?

心臓と肺は “血液を酸素化して全身に届ける” という共通の仕事をしています。

  • 心臓 → 血液を肺へ送る(右心系)
  • 肺 → 血液に酸素を取り込む
  • 心臓 → 酸素を含んだ血液を全身へ送る(左心系)

そのため、心臓が弱ると血液の流れが滞り、
肺に 水がたまる(肺水腫)、肺が圧迫される、呼吸が苦しくなる…
という症状につながります。

心臓病で起こる咳・呼吸の変化

代表的な心臓病である 僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁逆流) では、
左心房に血液が逆流し、肺に負担がかかります。

その結果、

  • 呼吸が速い
  • 呼吸が荒い(パンティング)
  • 寝ていても息が苦しそう
  • 運動を嫌がる
  • 夜に咳が出る
  • 舌が紫っぽい(チアノーゼ)

などの症状が現れます。

特に 呼吸が速い(安静時 30回/分以上) は危険なサインです。

咳の原因は心臓?肺?見分け方

咳だけでは 心臓由来か肺由来かは区別できません

心臓病で起こる咳の特徴

  • 呼吸が速い
  • 寝ていても息が荒い
  • 夜や早朝に咳が出る
  • 運動で悪化する

肺の病気(気管支炎・肺炎など)の特徴

  • 発熱を伴うことがある
  • 黄色い痰のような咳(犬猫は飲み込むため見えにくい)
  • 若齢~中齢でも発生
  • 気管虚脱はガーガーという咳

心臓か肺かは、レントゲンと超音波検査が必要です。

肺水腫の症状と診断

肺水腫は急に発症します。

裏返すと、

心臓病は進行していても症状を出さず、限界になって突然症状を呈します。

なので、無症状のうちにいかに心臓病を見つけ、進行段階を評価しメンテナンスしてあげることが重要なのです。

話を戻して、

症状は

継続的な呼吸促拍 ー 安静にしている時に1分間に40回以上

です。

犬の場合は伏せや犬座姿勢で斜め上を向いて苦しそうにしたり、

猫は口を開けて呼吸したりします。

上記のような症状の場合は様子を見ず近くの動物病院に駆け込んでください。

診断は胸のレントゲン検査と心臓のエコー検査ですぐに診断されます。

肺水腫になると最終的にどうなる?

肺水腫は一度治療してよくなっても、心臓が原因の場合はその後も継続的な治療を必要とします。

そして、また再発する可能性があり、定期検診により再発しないようにコントロールを試みます。

また、利尿剤を使い体の水分を絞るので、その代償として腎不全が引き起こされます。

肺水腫と腎不全は対極に存在する病気なので、両方をしっかり管理する必要があり、最終的に腎不全で命を落とすことも少なくありません。

また、肺水腫を繰り返し難治性になると、利尿薬などの効果が乏しくなり、肺水腫をコントロールできなくなります。

そのため、心臓病の犬猫は最終的に肺水腫に伴う呼吸困難または、その治療に伴う腎不全により命に関わることが多いです。

動物病院で行う検査

  • 聴診
  • レントゲン(心臓のサイズ・肺の状態)
  • 心臓超音波検査(弁の動き・逆流)
  • 血液検査
  • 酸素濃度測定
  • 呼吸数の評価

特に、レントゲンと心エコーのセット が診断に非常に重要です。

肺水腫の治療

肺水腫の治療は

薬を使って肺の水を抜くこと

です。

一般的に行う治療は、

・酸素室(重度では気管挿管)にて酸素吸入

・利尿剤(フロセミドなど)の投与

・強心薬(ピモベンダンなど)の投与

・排尿モニター

です。

まずは、心臓および肺の過剰な水分を尿として外に排泄できるかがポイントになります。

その治療反応や心臓の状態を見て利尿薬や強心薬を調整しまずは呼吸困難を乗り越えます。

呼吸が落ち着いた後は、上記の薬の内服薬を継続し、呼吸数と腎不全に注意をして治療を継続します。

呼吸数は安静にしている時に 1分間に40回以下 と覚えていてください。

治療方法(心臓・肺の両面から)

症状や病気の進行度により治療は変わります。

■ 心臓の治療まとめ

  • ピモベンダン(心臓の収縮力を補助)
  • ACE阻害薬(心臓の負担を減らす)
  • 利尿剤(肺の水を減らす)
  • 塩分管理
  • 体重管理

■ 肺の治療

  • 酸素吸入
  • 気管支拡張薬
  • 抗生剤(肺炎が疑われる場合)
  • ネブライザー治療

心臓と肺は密接に関係するため、
両者の評価が不可欠 です。

すぐ受診すべき危険なサイン

以下の症状がある場合は緊急性が高い可能性があります。

  • 安静時呼吸数が 30回/分以上
  • 苦しそうに肩で息をする
  • 横になれず座ったまま呼吸
  • 舌が紫(チアノーゼ)
  • 咳が止まらない
  • ぐったりして歩けない
  • 意識がぼんやりしている

これらは 肺水腫・重度の心不全 の可能性があり、早期の治療が命を救います。

まとめ

心臓と肺は近い位置で働いており、どちらかの異常がもう一方に影響しやすい

心臓病では咳・呼吸が速い・息苦しさなどの症状が出る

最も危険な状態は 心原性肺水腫

咳の原因は、心臓か肺かを見分けるのが難しく検査が必要

治療は、心臓の薬・利尿剤・酸素吸入などを組み合わせる

呼吸数が増えている・横になれない場合は緊急

持病がある子は、呼吸の変化を見逃さないことが重要

肺水腫は本当に苦しく、溺れたようになるので、犬猫にとっても、それを見ている飼い主様にとっても、

とても悩ましい病気のひとつです。

ただし、よく観察し、適切に診断治療を行うことで多くの場合(末期でなければ)は改善を見込むことができます。

また、お家での投薬と管理がとても重要になる病気でもありますので、少しでも参考になればと思います。

呼吸が荒く酸素室が必要なことも多いです。 そのような状況の場合は以下を参考にしてください。

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