更新日:2025/12/5
猫ちゃんは腎臓が弱い。
一度は耳にしたことがあるかと思います。
猫ちゃんの人生は腎生に等しい。
間違いではないような気がします。
飼い主さんにとって、ペットの「腎臓病」はとても不安な言葉かもしれません。
しかし、腎機能の異常は、時に “見た目には分かりにくい小さな変化” から始まり、気づいたときには進行している――そんなケースが少なくありません。
大切なのは「早く気づくこと」「適切に診断すること」「生活を整えること」。
この記事では、犬と猫における腎臓病(急性腎障害・慢性腎不全)について、症状から診断、治療、在宅ケアまでを、飼い主さんでもわかりやすくまとめました。
そんななかで若くして腎不全になりおしっこがでなくなり生死をさまよう中で透析治療で助かった猫ちゃんをまずご紹介します。
腎不全の原因
その猫ちゃんは3歳のスコティッシュフォールド。
特に原因はわからないが急におしっこがでなくなり、
食欲不振、嘔吐を繰り返し病院に来ました。
血液検査で腎臓の数値が
BUN140以上 CRE12.0と極めて高く命が脅かされていました。
エコー検査など検査をしても腎不全の原因はわかりません。
何度も飼い主様にお話しを聞き直すと原因が明かになりました。
お家に飾ってあるゆりの花粉です。
つまり中毒物質を摂取したことで急性腎不全を引き起こしたのです。
犬猫はタマネギやチョコレートなど有名なもの以外に、
あまり知られていないものも含めかなり多くの中毒物質が存在しています。
詳しくは別のコラムで紹介していますので一度はご覧ください。
犬猫の中毒物質
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腎不全発覚から透析治療
原因が中毒物質の摂取であるとわかった時点で、まず治療方法はなくなります。
つまり、手術や薬の投与で腎不全を治すことはできず、
治るのを、おしっこがでるまで待つことになります。
しかし、おしっこは数日でもでなければ命は持ちません。
身体に毒素が急激に溜まり心臓が急に止まるのです。
そこで、透析を開始することになりました。
透析とは?
透析とは機械の腎臓と身体を管でつなぎ血液中の毒素を分解する治療です。
猫ちゃんの血管に管をいれ、外の機械とつなぎ合わせ、
1日あたり数時間血液の毒素抜きを行います。
この際、ヒトと違い猫ちゃんは大人しくできないという問題点があります。
動いてしまうとうまく血液を交換することができないので、猫ちゃんの性格によっては不可能または鎮静剤の投与が必要となります。
透析治療から回復まで
透析を開始し7日が経った頃、猫ちゃんが1週間ぶりにおしっこをしました。
おしっこが出たということは、腎臓が尿を作り始めたことを意味します。
つまり、腎臓が回復し始め、毒素を排泄できるようになったのです。
ここから、利尿期と呼ばれる腎臓の回復期に入り、今までを取り返すかのようにたくさんのおしっこが出始めました。
おしっこがでる分多くの点滴を行い毒素を身体から排泄し、瞬く間に腎臓の数値は正常になりました。
若い猫の急性腎不全
今回の子のように、
若い猫の急性腎不全はなにか原因があることがほとんどです。
明らかに違和感があります。その原因の多くは、
・中毒物質の摂取(植物や消炎鎮痛剤)
・尿路結石
です。
見逃されていることも多くありません。
若い猫ちゃんの腎不全で原因がわからない場合は腎臓に詳しい獣医師にセカンドオピニオンを求めることをおすすめします。
かかりつけの全獣医師は全力で考え治療していますが、
ヒトと違い犬猫ウサギなど多岐に渡る品種の、
外科、歯科、眼科、内科、泌尿器科、、、すべてひとりで診ています。
その現実を知っていただき、みなさんの子が最善の治療を受けていただけたら嬉しく思います。
セカンドオピニオンの大切さ
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腎臓病とは?急性と慢性の違い
腎臓は、血液をろ過して老廃物を尿として排出する重要な臓器です。
腎臓の病気には大きく 急性 と 慢性 の2つがあります。
● 急性腎障害(AKI)
数時間〜数日で急に腎機能が落ちる状態です。
尿が出なくなる、嘔吐、脱水、ぐったりするなど、命に関わることもあります。
原因が取り除ければ回復する例もありますが、初期対応が非常に重要です。
● 慢性腎不全(CKD)
数ヶ月〜数年かけてゆっくり進行する腎臓病です。
特に猫では高齢になるほど発症しやすく、初期はほとんど症状がありません。
どちらも「早期発見・早期治療」が、予後と生活の質を守る鍵です。
犬猫で多い腎臓病の原因
腎臓病を引き起こす原因は多岐にわたります。
- 脱水・血流不足(嘔吐・下痢・発熱・熱中症など)
- 中毒(ユリ、除草剤、薬剤の誤飲など)
- 尿路閉塞(結石・腫瘍・炎症で尿が出ない)
- 感染症(腎盂腎炎など)
- 腎臓そのものの炎症・障害
- 加齢による腎臓の機能低下(猫に多い)
原因を正しく見極めることで、治療の方向性が変わります。
主な症状 — 見逃しやすいサイン
腎臓病は初期症状がとても分かりにくく、飼い主さんが「なんとなく気になる」と感じる程度のこともあります。
● 初期に見られやすい変化
- 水をよく飲む
- おしっこの量が増える
- 食欲のムラ
- 寝ている時間が長い
- 体重減少
- 毛づやが落ちる
● 病状が進むと
- 嘔吐、下痢
- 口臭(アンモニア臭)
- 脱水、ぐったり
- ふらつき
- 食欲廃絶
- 尿が出ない(急性腎障害)
小さな変化でも「数日続く」ようであれば、病院でのチェックを推奨します。
診断方法
腎臓病の診断では、以下の検査が組み合わされます。
● 血液検査
- BUN、クレアチニン、SDMA
- 電解質
- 脱水や貧血の有無の評価
● 尿検査
- 尿比重
- 蛋白尿の有無
- 血尿や炎症の評価
- 尿量の把握
● 画像検査
- 超音波検査(腎臓の形・結石・閉塞の有無)
- レントゲン(尿路の状態)
● その他
- 血圧測定
- 点滴反応の評価
- 中毒や感染のチェック
急性か慢性か、可逆性があるかどうかで治療戦略が変わります。
治療・管理方法
腎臓病の治療は、大きく次の3つの柱で考えます。
■ 1. 水分補給・輸液療法
急性腎障害ではもっとも重要な治療で、脱水や電解質異常を改善します。
■ 2. 原因へのアプローチ
- 尿路閉塞 → カテーテル、手術
- 感染症 → 抗菌薬
- 中毒 → 解毒処置
- 結石 → 食事療法・外科的処置
■ 3. 長期管理(慢性腎不全)
- 腎臓用療法食
- 水分摂取の工夫
- 定期的な血液・尿検査
- 血圧管理
- 吐き気止め、胃腸薬、貧血治療など
“治す” というより、進行をゆるやかにし、快適な生活を保つ ことを目標にします。
飼い主ができるケア
- 新鮮な水をいつでも飲めるようにする
- 食事量・排尿量・行動の変化を記録する
- おしっこの色や量を観察
- 複数の水飲み場・ウォーターファウンテンの設置
- 定期検査を習慣化
- 食欲低下・嘔吐・元気消失があれば早めに受診
日々の小さな気づきが、腎臓病の早期発見に直結します。
よくある質問(FAQ)
Q. 腎臓病は治りますか?
→ 原因が急性で可逆性のある場合は回復することもあります。慢性腎不全は進行性で、完治は難しい病気です。
Q. 水をたくさん飲むだけで腎臓病ですか?
→ 可能性はありますが、それだけでは判断できません。尿量・食欲・体重変化なども併せて評価します。
Q. 腎臓の数値が少し高いと言われました。すぐ治療が必要ですか?
→ 経過観察でよいケースもありますが、尿検査や再検査を組み合わせて慎重に判断します。
まとめ
- 腎臓病は「急性」と「慢性」で対処が大きく異なる
- 初期症状が目立たず、飼い主さんが最初に気づくことが多い
- 血液・尿・画像検査の総合評価が重要
- 原因治療+生活管理が病気と向き合うポイント
- 日々の観察と早期受診が、犬猫の命と生活の質を守る
腎臓病は長く付き合う病気ですが、
丁寧なケアと早期の気づきで、穏やかな毎日を続けられることは多くあります。
獣医師の視点で、
治療中の犬猫に現実的に選ばれているフードをまとめまています。
▶︎ 犬猫に配慮したフードの考え方を見る
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