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犬猫の抗がん剤治療中の注意点 ~副作用を最小限に~

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前回、犬猫の抗がん剤お話をしました。

これから抗がん剤をされる方や、抗がん剤治療中の方は副作用に関してさまざまな不安や疑問を抱かれていると思います。

これから抗がん剤をするかどうかお悩みの方は先に↓のコラムで頭を整理していただくことをおすすめします。

犬猫の抗がん剤の考え方 ~メリットと副作用・費用~

抗がん剤投与後どんな症状がでるのか?

様子を見てはいけない急変する可能性のある症状はなにか?

飼い主さまの抗がん剤の曝露は大丈夫なのか?

さまざまな悩みを解決できるようお話しします。

主な副作用 BAG

抗がん剤はなぜ副作用が出るのでしょうか?

血液中に投与された抗がん剤は全身のがん細胞を殺すとともに、全身の正常な細胞の一部を殺してしまいます。

その影響を受けやすい臓器は、毎日細胞の入れ替え(細胞分裂)を行っている

骨髄Bone marrow )皮膚脱毛(Alopecia) 消化管Gastrointestinal tract)

の3つです。頭文字をとってBAGと言われたりもします。

そのため、抗がん剤投与後に現れる副作用は

・骨髄へのダメージによる免疫力低下

・毛根へのダメージによる脱毛

・消化器粘膜へのダメージによる吐き気や下痢

の3つが主に強く現れますので注意が必要です。

ただし、脱毛に関しては犬猫ではあまり強く認められず、命にも関わらない部分であるので骨髄と消化器の十分なケアが重要であると言えます。

抗がん剤治療中の注意するポイント

特に重要な副作用である骨髄障害と消化器障害について注意するポイントと対策をそれぞれまとめます。

①骨髄障害

これはほとんどの抗がん剤では投与後の5~7日目に白血球数の低下が起こります。(例外として、カルボプラチンと呼ばれる抗がん剤は14日目前後)

それ以外の期間で白血球が急に低下することはありません。

白血球が下がると免疫力が一気に低下しますので、普段かからないような細菌感染を引き起こしやすくなります。

最も注意すべきことは熱が出てないかどうかです。

白血球が低下しているタイミングではあらゆる部位が感染源になり、発熱します。

お腹を壊していると消化管から感染しますし、歯周病があれば歯からも感染します。

この発熱を少しでも様子を見ると数時間で敗血症になり菌が全身に回ることで命に関わります。

1番のポイントは

抗がん剤の投与後5ー7日目に発熱しないか要注意し、熱がある場合は動物病院にすぐ受診!

です。

これを見逃さなければ大丈夫です。

②消化器障害

消化器障害とは、抗がん剤投与後の吐き気、食欲不振、下痢を引き起こす病態です。

この症状の程度は、抗がん剤の種類やタイミング、個体差によりさまざまで、

強い場合は2~3日食べ飲みしないこともあれば、一切副作用が出ない場合や個体もいます。

しかし、いずれの子も2~3日で基本的には回復します。

そのため、消化器の副作用は一般的に抗がん剤投与直後から3~4日に2~3日間起こることが多いです。

例外として、リンパ腫治療に用いるビンクリスチンは消化器症状が1週間超えて続くことがありますが、極めて稀です。

抗がん剤の消化器障害のポイントは、消化器症状が強く出てしまい、食べ飲みができず、脱水症状が懸念される場合は、点滴や注射によってケアしてあげることです。

抗がん剤の消化器障害は2~3日で必ず良くなるとわかっていますので、焦らずにケアしてあげましょう。

抗がん剤と曝露

抗がん剤治療中の飼い主様は、ご自身への抗がん剤曝露についても正しい知識を持って対応していただくべきです。

抗がん剤は、投与後48時間は糞便中や尿中にその代謝物が排泄されます。

しかし、もちろん抗がん剤そのものが排泄されるわけではなく、代謝物でありかつ微量なものです。

しかし、抗がん剤の曝露に伴う遺伝的な変化は確率論に基づきますので、健康な方が避けられる曝露はさけるに越したことはありません。

そのため、過度に恐れる必要はありませんが、抗がん剤投与後48時間の排泄物は可能ならば直接触れずに綺麗に処理していただければ問題ありません。

抗がん剤治療効果判定とやめどき

抗がん剤治療を続けていると、効き目が悪くなってきて、副作用ばかり出て苦しんでしまうことがあります。

この際にいつまで抗がん剤治療を続けるか悩まれることが多いです。

まず、抗がん剤が効いているかどうかの評価は以下の4つで行います。

完全寛解ー腫瘍が全く存在しない状態

部分寛解ー抗がん剤によって腫瘍が半分以上に小さくなった状態

維持病変ー抗がん剤によって腫瘍が横ばいである状態

進行病変ー抗がん剤治療にもかかわらず腫瘍が25%以上増大している状態

腫瘍は何もしなければどんどん大きくなり体をむしばんでいきます。抗がん剤を投与し、腫瘍の大きさが変わらないことは、腫瘍の増大を抑えていることを意味するのです。

しかし、抗がん剤投与をしても腫瘍が大きくなる場合は、副作用ばかりでて治療効果が見込めません。

抗がん剤治療を行っていて、維持病変の評価である場合は、本人への副作用などの負担と治療効果を総合的に考え治療を続けるか検討します。

抗がん剤治療していても進行している場合はその抗がん剤治療はやめるべきです。

この客観的な評価をもとにして、抗がん剤の治療による効果と副作用のデメリットを総合的に判断し抗がん剤の治療を続けていくかを考えることになります。

抗がん剤は、全身をむしばむ腫瘍をやつけることができる唯一の特効薬である反面、効果がなくなった場合は毒でしかありません。

犬猫は言葉を話すことができませんので、客観的な評価をまじえて、本人にとっての最善をその都度選択してあげてくださいね。

まとめ

前述のように抗がん剤は強力な武器にもなり毒にもなります。

しかし、抗がん剤の機序を正しく理解し、今回お話ししたポイントを押さえていれば恐れる必要はありません。

犬猫の抗がん剤の最大の目的は、

いかに本人が腫瘍で苦しまず、副作用の苦しみを最小限に、より長く飼い主と生活することです。

犬猫は言葉を話せませんので、適切な知識を持って観察し考えて頂ければ、それが最善であると思います。

普段の診察ではこのような深い点までお話しする時間がありませんので、なるべく知っておくべきかつ少し踏み込んだ知識を今後もお話ししていきます。

少しでも参考に、お互いよりよい生活にしていただければ幸いです。

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