更新日:2025/12/9
犬猫を飼われている方は皆さんタマネギは食べてはいけないとご存じかと思います。
しかし、タマネギ以外は?どんだけ食べたら、いつ、どんな症状が出て、どうすればいいのかについてはご存じないことが多いです。
これを知っていなければいざ食べてしまった際の瞬時の対応や、こっそり食べていた際に気づくことができません。
犬と猫は 玉ねぎ・ネギ・ニラ・にんにくなどのネギ類 を食べると、
赤血球が壊れる「玉ねぎ中毒(タマネギ中毒)」を起こすことがあります。
加熱しても毒性は残るため、
家庭料理・スープ・惣菜・味つき肉 などから“知らずに摂取してしまう”事故がとても多いです。
この記事では、
どのくらいの量で危険か、症状、危険なサイン、すぐできる対処、治療法、予防方法
を獣医師が分かりやすくまとめます。

犬と猫が玉ねぎで中毒を起こす理由
玉ねぎに含まれる
アリルプロピルジスルフィド
などの成分が、犬猫の赤血球を壊し、貧血を引き起こします。
特徴
- 生でも加熱しても毒性は残る
- スープや煮汁にも毒が含まれる
- 少量でも繰り返し摂取で中毒になる
- 猫は特に少量で発症しやすい
「玉ねぎそのものを食べていなくても危険」という点が注意ポイントです。
食べてはいけないネギ類と量は?
まず、タマネギ中毒と呼ばれる病態は、タマネギ以外にもニンニク、ネギ、ニラやAllium科の植物(ネギ系の様々な植物)を摂取することで起こります。
そして、調理の有無や、形態によってこの毒性が消失することはないと言われていますので、
調理にネギ類を使ったものはすべてアウトです。
このタマネギの毒性は季節や摂取量、摂取速度によっても異なるので、一概には言えませんが、
犬猫で異常が認められる量は体重1kgあたり犬で15g、猫で5gです。
実は猫の方が感受性が高いのです。
例えば4kgの猫ちゃんは20g以上食べるとキケン。
小さいタマネギ1個約200gなので、1/10玉でも中毒を引き起こしうることになります。
玉ねぎ中毒の主な症状
食べてすぐ症状が出るわけではなく、
多くは 6〜24時間後、遅いと数日後 に症状が出ます。
初期症状
- 嘔吐
- 下痢
- よだれ
- 元気がない
- 食欲不振
- 呼吸が速い
中毒が進むと
赤血球が壊れることで以下の症状が出ます。
- 赤や茶色の尿(血色素尿)
- ぐったりする
- ふらつく
- 歯茎が白い(貧血)
- 心拍数が増える
- 黄疸が出ることも
早期に治療しないと命に関わります。
どれくらいの量で危険?
犬猫の体質により大きく差がありますが、
一般的な目安として、
- 玉ねぎ 5g/kg 以上
で中毒の危険があると言われています。
例:体重5kgの犬 → 25gほどでも危険
※ 玉ねぎ数片・スープだけでも十分起こり得ます。
猫はさらに感受性が高く、
ほんの少量でも中毒が起きることがあります。
よくある事故例(気づかないうちに食べているパターン)
- ハンバーグ、肉じゃが、カレーの具
- 玉ねぎ入りのスープ・味噌汁
- 焼肉のタレに玉ねぎが入っていた
- 冷蔵庫の残り物をつまみ食いした
- 子どもが落とした食べ物を拾い食い
- 玉ねぎ炒めの油を舐めた
- 惣菜パン(オニオン入り)
料理に混ざっている玉ねぎは見分けにくく、最も危険です。
食べてしまったらどうすればいい?
食べてしまった場合は可能な限り早くに動物病院を受診し、催吐処置により吐かせるべきです。
可能な限り早くとは、約2時間以内を目安に、可能な限りです。接種後時間がたつとどんどん消化吸収が進んでしまうためです。
夜の場合は夜間救急です。中毒量食べた場合は迷っている暇はありません。
また、よくネットで自宅で催吐する方法(オキシドールや食塩水)があがっていますが、まずすべきではありません。
吐かせるという行為は、それも故意の薬物の過剰摂取による中毒(吐き気)を誘発する行為ですので安全な行為ではありません。
もちろん動物病院で行う場合もある薬品を過剰投与することで催吐しますので、正しい吐き方など存在しませんが、
動物病院では催吐処置の中で最も安全性が高い方法で、状態をよく注意して観察しながら行っています。
つまり、十分量食べたなら、迷わず近くの動物病院へ行く、の一択です。
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食べたかもしれない時の応急処置まとめ
1. まずは玉ねぎを食べた可能性を整理する
いつ、どれくらい、何を食べたかできるだけ確認します。
2. 無理に吐かせない
家庭での催吐は危険です。必ず病院で対応します。
3. すぐ動物病院へ連絡
症状がなくても、食べた可能性がある時点で受診推奨 です。
特に猫は急激に悪化することがあります。
動物病院で行う検査
- 身体検査
- 血液検査(貧血・赤血球破壊の指標)
- 血液塗抹検査(ハインツ小体の確認)
- 尿検査(血色素尿)
- レントゲン(誤食の確認)
玉ねぎ中毒は、血液の変化で診断できます。
タマネギ中毒になったらどうなるの?
簡単にいうと、ネギによる酸化障害により赤血球が壊されてしまい貧血が起こる病気です。
この病態はネギ摂取後約1~5日で症状として現れます。
症状は貧血に準じて、元気食欲低下、頻脈、頻呼吸、粘膜色の蒼白や黄疸、血尿が特徴です。
壊れた赤血球が尿中にでるので尿が血尿~ワイン色になるのは特徴的です。
治療は?
中毒を起こした玉ねぎ成分を体外に出し、
壊れた赤血球の影響を最小限にする治療を行います。
● 吐かせる処置(食後すぐの場合のみ)
誤食から1〜2時間以内であれば催吐処置を行うことがあります。
● 活性炭
毒の吸収を抑える目的で使用することがあります。
● 点滴
体内の毒素を薄め、排泄を促すため。
● 酸素吸入
貧血がひどい場合。
● 輸血
重度の貧血がある場合は命を救うために必須です。
治療期間は軽症で数日、重症では1週間以上かかることもあります。
放置するとどうなる?
- 急激な貧血
- 黄疸
- 腎不全
- 意識低下
- 最悪の場合死亡
特に猫は重症化しやすいため、
「様子を見る選択」は危険です。
予防方法(家庭でできる対策)
- 玉ねぎ・ネギ類をテーブルに置きっぱなしにしない
- 料理の残り物を与えない
- 玉ねぎ入り食品を“玉ねぎなし”と誤解しない
- ゴミ箱を漁れないようにする
- 家族みんなで共有する
- 子どもの食べこぼしにも注意
とくに 味つき肉・惣菜・スープ は要注意です。
よくある質問(FAQ)
Q. 玉ねぎを少量舐めただけでも危険ですか?
A. 危険です。猫は特に少量でも中毒を起こします。
Q. 加熱すれば安全になりますか?
A. 毒性成分は加熱しても残るため、安全ではありません。
Q. 玉ねぎ入りハンバーグを少し食べました。様子見で大丈夫?
A. 大丈夫ではありません。必ず受診してください。
Q. 翌日元気ですが安心していい?
A. 中毒症状は遅れて出るため、翌日元気でも検査が必要な場合があります。
まとめ
・犬と猫は玉ねぎ・ネギ類で中毒を起こす
・少量、加熱済み、スープだけでも危険
・症状は遅れて出る(6〜24時間後)
・貧血・血色素尿・ぐったりは緊急サイン
・食べた可能性があれば即受診
・重症例では輸血が必要になることも
・最も重要なのは“家で絶対に玉ねぎを与えないこと”
玉ねぎ中毒は予防がもっとも重要な中毒です。
家庭内での食品管理を徹底し、事故を防ぎましょう。
タマネギ中毒はよくご存じの病気ですが、【実際のところ】は知られていないように感じます。
何よりも食べないことが一番ですが、食べてしまうことはあると思います。自分も目の前に牛丼があったら黙ってぺろりとたいらげます。
食べちゃったものは仕方ありません。
しかし、その日々の中で今回の知識を頭の片隅においていただき、
どんなことが起こっても適切に対応していただけたらと思います。
大切なのは予防とアフターケアの心構えです。
犬猫と一緒に生活していると、日々様々なことが起こりますが、
適切に判断し対処することで大ごとにならず対処できます。
そのため正しい知識をもっておくことが大切です。
以下に獣医師の視点から、
治療中の犬猫に現実的に選ばれているフードをまとめまています。
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