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獣医師が伝える犬猫の病気や治療の考え方

犬の脂肪腫と脂肪肉腫の違い|しこりが良性か悪性かを見分ける方法と治療

更新日:2025/12/9

わんちゃんの皮膚に今まで気づかなかったできものを見つけたり、

昔からあるできものが大きくなってきたような気がすることはありませんか?

犬の体にできる「しこり」で最も多いのが 脂肪腫(しぼうしゅ) です。
見た目は柔らかく、ゆっくり大きくなる良性腫瘍で、命に関わらないケースが多いのが特徴です。

一方で、脂肪腫に似ているが性質がまったく違う“脂肪肉腫(しぼうにくしゅ)” という悪性腫瘍も存在します。

見た目だけでは 良性か悪性かを判断することは不可能 であり、
正確な検査が非常に重要です。

この記事では、
脂肪腫と脂肪肉腫の違い、症状、注意点、検査、治療、放置のリスク をわかりやすく整理しました。

①犬にできるできものの様子の見方

②比較的多い脂肪腫について、どうするべきなのか

③手術の是非についてお話しします。

できものを見つけたら?

まず、わんちゃんの体には脂肪腫含め良悪さまざまなできものができます。

なので、皮膚にできている柔らかいできもの=脂肪腫とは考えてはいけません。

できものを見つけた際まず気を付けて見ていただきたいことは

・見つけた時から1カ月以内に増大しないか

・数か月存在し続けていないか

・大きくないか

の3点です。まず悪性の腫瘍の場合は上記を満たし、特に増大するスピードは早いできものは注意が必要です。

わんちゃんの皮膚にできやすい悪性腫瘍に関してはまた別にまとめます。

脂肪腫は良性腫瘍であるにもかかわらず、おおきくなり、ずっと存在し続けるため経過だけでは判断が難しいかもしれません。

少し経過を見たうえで上記のどれかまたはすべてを満たす場合は一度動物病院を受診し細胞診検査をしてもらいましょう。

細胞診検査はできものに細い針を刺して細胞を採取し顕微鏡で見る検査で、多くの場合動物への侵襲は低く、

時間として30分前後、費用としても3000円前後で終わります。

細胞診をすると脂肪腫は↓のように脂肪滴がとれてきます。

脂肪腫とは?(良性腫瘍)

脂肪細胞が増殖した 良性の腫瘍 です。

特徴:

  • やわらかい
  • ゆっくり大きくなる
  • 痛みなし
  • 皮下にできる
  • 高齢犬で多い

多くの脂肪腫は 命に関わらず、経過観察が可能 です。

脂肪肉腫とは?(悪性腫瘍)

脂肪腫と名前が似ていますが、細胞の性質がまったく異なります。

脂肪肉腫の特徴:

  • 悪性腫瘍(がん)
  • 再発しやすい
  • 周囲に浸潤しやすい
  • まれに転移する
  • 早期の外科治療が重要

脂肪腫と脂肪肉腫は、触っただけでは区別できません。

見た目・触り心地の違い(しかし確実ではない)

特徴脂肪腫(良性)脂肪肉腫(悪性)
硬さやわらかいやや硬いことがある
境界はっきりしている不明瞭なことがある
進行速度ゆっくり比較的速い場合あり
痛み基本なし場所により痛みあり
広がり方皮下に局所的深部へ浸潤しやすい

しかし、見た目だけで判断するのは危険 です。

脂肪腫と思って放置していたら、
実は脂肪肉腫だったという例も実際にあります。

脂肪腫どうする?

お家で脂肪腫かどうかの判断は基本的にできませんが、

獣医師が脂肪腫の可能性が高いと判断するのは、

・脂肪と同じくらいぷにゅぷにゅして柔らかい

・皮膚の外ではなく、皮膚の下に触れる

・昔から存在しており、急な大きさの変化はない(年単位では増大していく)

この3点をすべて満たすか考えます。

そして、細胞診にて先ほどのような脂肪が取れた場合、脂肪腫と仮診断し経過観察を行います。

放置してよい脂肪腫・注意すべき脂肪腫

■ 放置してよいケース

  • 大きさが変わらない
  • 犬が気にしていない
  • 動きや痛みに影響しない
  • 検査で脂肪腫と確認できている

■ 注意すべきケース

以下の特徴がある場合は脂肪肉腫の可能性もあります。

  • 短期間で急に大きくなった
  • 硬さが増してきた
  • 歩行に影響する位置にある
  • 体の奥(筋肉内)にできている
  • 再発を繰り返している

特に 筋肉内脂肪腫(infiltrative lipoma) は、脂肪腫でも浸潤性があり外科治療が必要です。

受診すべき “しこりのサイン”

  • 2〜3週間で明らかに大きくなる
  • 直径が2cmを超える
  • 硬さが変わった
  • 犬が痛がる・気にする
  • 体の動きに影響する
  • 再発した
  • 若くしてできたしこり

特に 急に大きくなるしこりは最優先で受診 してください。

動物病院で行う検査

  • 細胞診(FNA):脂肪腫の診断に有用
  • 病理組織検査:確定診断
  • 超音波検査:深部への広がりを評価
  • CT検査:筋肉内・胸壁・深部の評価に最適

脂肪肉腫は外科マージンが重要なため、
CTで広がりを把握することがあります。

脂肪腫の手術

脂肪腫と診断がついた場合、基本的には手術は必要ありません。

脂肪腫は良性の腫瘍であり、転移や命に関わることがなく、

また、脂肪腫ができやすい子は、複数できていたり、ひとつとってもまたすぐに違うところにできることが多く、いたちごっこになるためです。

しかし、手術を考えないといけない場合もあります。それは、脂肪腫の場所や大きさによって本人の生活に影響を与える場合です。

例えば、脇の下にできていて、大きくなりすぎて歩きづらいとか、筋肉の間にできて(筋間脂肪腫といいます)痛みを伴うなどです。

その場合は、本人の生活の質を守るために手術を行います。

脂肪腫の場所、大きさにもよりますが、手術は基本的に短時間で終わり、

1週間ほどで抜糸をすれば完治します。

治療の選択肢まとめ

■ ① 脂肪腫(良性)

  • 大きさや場所によって 経過観察
  • 生活に支障がある場合は 外科切除

例:

  • わきの下にできて歩行が困難
  • 首にできてカラーが当たる
  • 3〜5cm以上で増大傾向がある

■ ② 脂肪肉腫(悪性)

  • 外科手術が第一選択
  • 広めのマージンで切除
  • 位置により放射線治療を併用する場合あり

抗がん剤は効果が限定的で、
外科切除と放射線が治療の中心になります。

予後

■ 脂肪腫の予後

  • 良好
  • 完全切除で再発は少ない
  • 大型犬では多発しやすい

■ 脂肪肉腫の予後

  • 再発しやすい
  • 部位により切除が難しいことがある
  • 早期発見・早期手術が鍵

腫瘍の“深さ”と“完全切除できるか”が予後を左右します。

よくある質問(FAQ)

Q. 脂肪腫は自然に小さくなりますか?
→ 基本的には小さくなりません。

Q. 脂肪腫と脂肪肉腫は触って見分けられますか?
→ 不可能です。検査が必須です。

Q. 手術は何cmから必要ですか?
→ 大きさだけでなく、場所・増大速度が重要です。

Q. 放置しても大丈夫ですか?
→ 脂肪腫でも生活の質を下げるほど大きくなることがあります。定期チェックが必要です。

まとめ

・脂肪腫は良性で多い腫瘍、脂肪肉腫は悪性で再発しやすい

・見た目・触り心地だけで判断するのは危険

・大きさ・増大速度・深さが重要なチェックポイント

・診断には細胞診と場合により画像検査が必要

・脂肪腫は経過観察できるが、生活に支障がある場合は手術

・脂肪肉腫は広めの外科切除が必須

・早期発見が予後を大きく左右する

わんちゃんは良悪さまざまなできものができます。ネットには様々な情報が入り乱れ、不安をあおられることも多いかもしれません。

しかし、犬の皮膚のできものは60~80%は良性です。適切に観察を行い、診断および治療を行うことで命に関わらないことがほとんどです。

今後、その他の皮膚のできものに関してもお話しする予定ですので、

皆さまの不安を取り除き、わんちゃんが適切な治療を受けていただくことを願っています。

以下に獣医師の視点から、
治療中の犬に現実的に選ばれているフードをまとめまています。

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