更新日:2025/12/9
猫の肥満細胞腫(MCT)は、
犬の肥満細胞腫と大きく性質が異なります。
特に猫の 皮膚にできる肥満細胞腫は良性に近いタイプが多く、治りやすい腫瘍 とされています。
一方で、脾臓・腸など体の中にできる 消化器型(内臓型)MCTは進行が速いタイプもある ため、早期診断がとても重要です。
この記事では、猫の肥満細胞腫の「治りやすいケース」「注意が必要なケース」「治療法」「予後」を獣医師がわかりやすく解説します。
猫の肥満細胞腫(MCT)とは
肥満細胞という免疫細胞が腫瘍化したもので、
猫では主に以下の2つのタイプがあります。
- 皮膚型(皮膚・皮下にできるタイプ)
- 内臓型(脾臓・腸など体の中にできるタイプ)
犬では悪性腫瘍として扱われることが多いですが、
猫は タイプによって性質が大きく変わる のが特徴です。
皮膚型MCTは“治りやすい腫瘍”が多い理由
猫の皮膚にできる肥満細胞腫は、
増殖が遅く、転移の可能性が低い良性タイプ が多く見られます。
特徴:
- 丸いしこり
- 急激に大きくならない
- 周囲に広がりにくい
- 外科切除で完治する例が多い
- 再発はあるが進行はゆっくり
特に 頭・首・体幹にできる皮膚型MCT は良性のことが多く、
外科手術で完全に治るケースがよくあります。
※ただし、しこりの位置・大きさ・猫の年齢によって例外はあります。
内臓型MCT(脾臓・腸)は注意が必要
皮膚型と違い、
内臓にできる肥満細胞腫は進行速度が速い場合があります。
代表的な部位:
- 脾臓(もっとも多い)
- 腸(小腸・大腸)
- 肝臓・リンパ節 など
症状:
- 食欲低下
- 嘔吐
- 元気消失
- 体重減少
- 下痢
- 触るとお腹のしこりがわかる
- 貧血、脱水
脾臓型は 脾臓全摘が治療の第一選択 で、
術後に大きく改善するケースがあります。
腸型は部位により手術の難易度が高く、
進行が速いタイプでは追加治療(抗がん剤)が必要になることがあります。
診断方法
- 針吸引検査(FNA:皮膚型で有効)
- 超音波検査(脾臓・腸の評価)
- レントゲン
- 血液検査(貧血・炎症など)
- 必要に応じて病理検査(確定診断)
皮膚型はFNAで診断しやすいですが、
内臓型は 画像検査が特に重要 です。
治療方法
■ 皮膚型MCTの治療:外科切除が基本
- 基本的に 手術で完全切除 → 治癒するケースが多い
- マージン(切除範囲)は犬より広く取らなくても良い場合が多い
- 再発した場合も再手術で対応可能
副作用の強い治療が必要になるケースは少ないです。
内臓型MCTの治療:手術+内科治療
● 脾臓型
- 脾臓摘出が第一選択
- 術後に症状が大きく改善する例が多い
● 腸型
- 腸の切除が必要
- 進行例では抗がん剤を併用することがある
内臓型は 早期発見と早期手術が予後を左右します。
予後(生存期間の目安)
猫の肥満細胞腫は、タイプによって予後が大きく異なります。
■ 皮膚型
- 外科切除で完治するケースが多い
- 再発があってもゆっくり進行
→ 予後良好
■ 脾臓型
- 手術により長期生存も十分可能
→ 比較的予後良好
■ 腸型
- 部位・大きさにより進行が速いことがある
→ 予後は中〜やや不良のことも
※猫のMCTは犬の高悪性型とは異なる特性があるため、
「MCT=悪い腫瘍」というわけではありません。
猫の肥満細胞腫について
猫の肥満細胞腫(MCT)とは|症状・診断・治療・飼い主ができるケア
実際に肥満細胞腫を完治した猫ちゃんのおはなしをします。
発見!どんな見た目?痒い?
猫の肥満細胞腫の見た目は、薄ピンクで表面に毛がなくやや柔らかいです。
この猫ちゃんは、前の手の指先にピンク色のできものができ、
本人がペロペロ舐めて腫れてる
とのことで動物病院に来られました。
見た瞬間明らかに肥満細胞腫を疑いました。
それは、ピンク色の柔らかい毛の抜けたできものであり、
痒くて、舐めたことで腫れ上がってたためです。
これが特徴です。
診断は?
すぐに、細胞診の検査を行いました。
細胞診は、細い注射針をできものに刺し、スライドガラスに細胞を落とし顕微鏡で見る検査で数千円で済みます。
肥満細胞腫は、紫色の顆粒をもった特徴的な細胞がとれるのですぐに診断がつきます。
この猫ちゃんも予想通り肥満細胞腫と診断されました。
治療
治療は外科的切除です。
根治するためにはこれしかありません。
飼い主さまと手術をしなかった場合のデメリットと根治する可能性が高い手術のメリットをお話しし手術を行いました。
手術は約1時間で終わり、日帰りで1週間後に抜糸をして終わりです。
摘出後の腫瘍を病理検査で、
・肥満細胞腫であること
・とりきれていること
を確認し治療終了です。
受診を急ぐべきサイン
- 短期間でしこりが大きくなる
- あちこちに複数できる
- 嘔吐が続く
- 元気がない
- 食欲が落ちた
- 体重が減る
- お腹が張ってきた
皮膚型でも、急激に変化する場合は注意が必要です。
よくある質問(FAQ)
Q. 猫の肥満細胞腫は悪性ですか?
→ 皮膚型は良性に近く治りやすいタイプが多いです。内臓型は注意が必要です。
Q. 犬のMCTと同じですか?
→ 全く性質が違います。猫では悪性度が低いことが多いです。
Q. 手術は必要ですか?
→ 皮膚型は手術で治るケースが多いです。内臓型は手術が基本です。
Q. 抗がん剤は使いますか?
→ 進行が速い内臓型で使用することがあります。
まとめ
猫のMCTは 皮膚型と内臓型で性質が大きく違う
皮膚型は増殖が遅く、外科で治りやすいケースが多い
内臓型(脾臓・腸)は進行が速く注意が必要
診断には針吸引と画像検査が重要
治療は皮膚型は外科、内臓型は手術+内科治療
予後は皮膚型で良好、内臓型は早期対応が鍵
しこりの変化・嘔吐・元気消失は早めの受診を
猫の肥満細胞腫は根治を目指すことができる悪性腫瘍です。
また、その方法は外科治療です。
今回の猫ちゃんのように肥満細胞腫は、いやらしい部位に発生することが多く、
一部の一時的な外貌の変化を犠牲にすることもあります。
しかし、命には変えられません。
可愛い身体を傷つけるのが根治目的のメスなのか悪性腫瘍なのか、先を見据えて考えることが、
今回の猫ちゃんのような悪性腫瘍の根治につながります。
以下に獣医師の視点から、
治療中の猫に現実的に選ばれているフードをまとめまています。
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