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獣医師が伝える犬猫の病気や治療の考え方

猫の甲状腺機能亢進症|症状・検査・治療・薬・食事管理を獣医師が徹底解説

更新日:2025/12/9

ご高齢の猫ちゃんで、元気食欲はあるけど最近痩せてきたり、ワオーンと夜鳴きをしたりすることはありませんか?

高齢になった猫ちゃんにとって甲状腺機能亢進症は極めて一般的な病気でありとても多く遭遇します。

また、元気や食欲があることも多いので、気づかないことも多いです。

どんな症状の場合甲状腺機能亢進症を疑うのでしょうか?

甲状腺機能亢進症は治療すべきなのでしょうか?

猫の甲状腺機能亢進症は、10歳以上のシニア猫で最もよくみられる内分泌疾患 です。
甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、体の代謝が常に「全速力」になり、
心臓・腎臓・肝臓などさまざまな臓器に負担をかけます。

治療により症状を大きく改善できる病気であり、
適切な検査・管理により長期的に安定した生活が可能 です。

この記事では、
原因・症状・検査・治療(薬/アイソトープ/外科)・食事・注意点 を獣医師がわかりやすくまとめています。

猫の甲状腺機能亢進症とは?

猫の甲状腺機能亢進症は、甲状腺から分泌されるホルモン(T4)が過剰となり、
体の代謝が異常に高くなってしまう病気です。

多くは良性腫瘍(腺腫または過形成)により起こり、悪性(甲状腺癌)は少数です。

この病気が多い年齢・性別・特徴

・発症の中心は 10〜14歳以上
・男女差はほぼ無し
・痩せているようで食欲旺盛という特徴的な症状が多い

特に 急に元気・食欲が活発になったのに痩せていく猫 は要注意です。

病態と症状

猫の甲状腺機能充進症は甲状腺の腺腫(良性)腺癌(悪性)または結節性過形成によって甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。
日本国内の8歳以上の猫の3~4%程度が甲状腺機能亢進症に罹患すると推測されていますが、経験上もっと多いと思います。

特徴的な症状としては、

・体重減少(食欲の有無によらず)

・食欲不振または過食

・多飲多尿

・嘔吐/下痢

・興奮、夜鳴き(眼がらんらんとしている)

・筋肉量の低下

などです。

進行すると、

・心不全
・網膜剥離
・失明
・重度の筋力低下
・腎機能の悪化

などを招くことがあります。

高齢になって痩せてきていると勘違いされることが多いです。

また、高血圧を併発することが多く、網膜剥離を引き起こすことで視力を失うことも少なくありません。

お目めがまんまるの猫ちゃんはその可能性がありますので下記のコラムも併せて確認してみてください。

高血圧性網膜剥離の猫ちゃん

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検査と診断

身体検査では、削痩、脱水、筋肉低下、頻脈を認めます。

血液検査では肝臓の数値であるALPとGPT(ALT)の数値が少し高くなります

上記所見より、甲状腺機能亢進症を疑う場合は、

確定診断として血液中の甲状腺ホルモンの濃度を測定します(多くは外注検査)。

この甲状腺ホルモンの濃度が基準値より高値であることをもって甲状腺機能亢進症と診断します。

病院で行う検査内容

1. 血液検査:T4測定(最重要)
→ 甲状腺ホルモンの上昇を確認します。

2. 腎臓・肝臓の機能検査
→ 合併症の有無を確認します。

3. 血圧測定
→ 高血圧は重要な合併症です。

4. 心臓検査(レントゲン・エコー)
→ 心筋症や心臓の負担を評価します。

5. 尿検査
→ 腎機能の指標として重要。

治療方針を決めるうえで、これらの総合評価が必要です。

治療と薬

甲状腺機能亢進症の治療は大きく分けて以下の3つがあります。

・食事療法

・内科療法

・外科療法

治療を行う際の最大のポイントは、治療で体調を悪化させないことです。

高齢の猫ちゃんは腎不全を抱えていることが多いのですが、甲状腺機能亢進症では腎臓の血流がよくなります。

そのため、甲状腺機能亢進症の猫ちゃんは腎不全が隠されていることが多いのです。

つまり、甲状腺機能亢進症の治療を強く行いすぎると腎不全で命を落としてしまうことがあるのです。

甲状腺機能亢進症の治療と腎不全等の治療をバランスよく両立することが大切となります。

食事療法

食事療法としては、ヨウ素が適切に制限された猫用の療法食を与えます。

この療法食を与えている期間は、他の食物を与えないようにします。

甲状腺機能冗進症の猫に対するヨウ素制限食の効果はさまざまですが、食事療法のみで臨床症状や甲状腺の数値が正常化することもあります。

試すとすればヒルズのy/dというフードです。自分の知るところではこれ以外では治療反応した経験はありません。

甲状腺ホルモンの材料=ヨウ素を制限する方法です。

・投薬ができない猫に有効
・食事を完全に専用食へ切り替える必要あり

注意:
他のフード・おやつ・トッピングを少しでも食べると効果が弱まります。

甲状腺機能亢進症の食事療法 y/d

ヒルズ 猫用 y/d 甲状腺ケア ドライ 2kg

内科治療

内科治療としては、抗甲状腺薬のチアマゾールの内服を行います。

体重や状態に合わせて用量や投与頻度は随時調節します。

効果を認める場合は投与開始から約2週間で効果が認められ始め、症状が改善していきます。

治療反応の最も重要なのは体重が増加するかどうかになります。

また、この治療による副作用として

・血球減少

・腎不全の悪化

に注意して投与を行います。

治療によって腎不全が悪化する場合は、治療の中断または中止を検討すべきとなります。

内科治療反応が良好であり、副作用の問題がなければ数年以上にわたり内科治療を継続することが可能です。

① 内服薬(メチマゾール:第一選択)

最も一般的で実施しやすい治療です。

・毎日投薬が必要
・効果が比較的早い
・甲状腺ホルモン(T4)の抑制が目的

副作用:
嘔吐、食欲低下、肝酵素上昇、かゆみ、白血球減少など。

定期的な血液検査(1〜3ヶ月ごと)が必須となります。

外科治療

基本的に外科治療を行うことは極めて稀です。

腫大した甲状腺の所在が明らかで、内科療法によって甲状腺機能冗進症の症状が改善し、腎不全が顕在化せず、麻酔、手術リスクが容認できる場合には,外科手術も可能です。

外科手術は唯一根治となる可能性の治療ですが、適応の判断に注意が必要となります。

・良性腫瘍で片側性の場合に有効
・手術で根治が期待できる

リスク:
・麻酔
・副甲状腺の損傷

現在はアイソトープ治療の普及により、選択されるケースは減っています。

治療後の経過とフォロー

・治療開始1ヶ月は頻回の検査
・安定後は2〜3ヶ月ごと
・体重、食欲、飲水量、排尿の変化を記録するのがおすすめ

長期管理すれば、甲状腺機能亢進症の猫の多くは
寿命に近い年月まで安定した状態を保つことができます。

よくある質問(FAQ)

Q. 完治しますか?
→ 内服薬は“コントロール”、アイソトープ治療と手術は“根治が期待できる”方法です。

Q. 投薬は一生続きますか?
→ 内服薬を選ぶ場合、基本的に継続が必要です。

Q. 高齢でも治療できますか?
→ はい。むしろ治療しないと体への負担が大きく、寿命に影響します。

Q. 食事療法だけで治りますか?
→ 他の食べ物を一切与えない厳密な管理が必要です。

まとめ

・猫の甲状腺機能亢進症はシニア期に多い内分泌疾患
・体重減少、食欲増加、多飲多尿、興奮などが典型症状
・診断はT4測定が中心、合併症チェックが重要
・治療は「内服」「アイソトープ」「手術」「食事」
・腎臓病が隠れていることが多く、治療後は慎重に経過を見る
・適切な管理で長期的な安定が十分可能

猫の甲状腺機能亢進症は高齢の猫ちゃんにおいてとても多い病気です。

また、ポイントは甲状腺機能亢進症によってすぐには命に関わらないものの、

併発疾患によって体調を崩すことがあり、

高齢であるがゆえにうまくコントロールをする必要があります。

必ずしも甲状腺機能亢進症は完璧にコントロールする必要がない場合もあります。

今回の内容をもとに正しい知識をもとによく観察していただければと思います。

検査結果と体重と経過を照らし合わせ、思わしくない場合はセカンドオピニオンを求めるのもひとつです。

高齢ゆえに内科治療の手腕が試される病気のひとつになります。

以下に獣医師の視点から、
治療中の猫に現実的に選ばれているフードをまとめまています。

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