更新日:2025/12/9
猫の心臓病は、犬と違い 先天性より“心筋症(心臓の筋肉の病気)”が圧倒的に多い のが特徴です。
特に以下の3タイプが中心です:
- 肥大型心筋症(HCM)※最も多い
- 拡張型心筋症
- 拘束型心筋症
猫の心臓病は
症状が出にくく、突然悪化する・突然死のリスクがある
という点で非常に注意が必要です。
この記事では、猫の心臓病について、
症状・検査・治療・薬・血栓(サドル血栓)・突然死のリスク・自宅での観察ポイント
を獣医師がわかりやすく解説します。

心筋症とは
猫では 心臓の筋肉(心筋)の異常 により、
- 壁が厚くなる(肥大型心筋症)
- 心臓が広がり血液を送れなくなる(拡張型)
- 心筋が硬くなる(拘束型)
といった変化が起きます。
多くが 中高齢で発見 されますが、若い猫で見つかることもあります。
犬と比べて猫は咳が出にくく、
症状がないまま進行し、急に悪化する ことがあります。
心筋症は猫のおよそ7頭に1頭が罹患している心臓病で、
その多くは症状を示さないので、進行して症状がでるまで気づかないことがほとんどです。
年齢を重ねた猫では約3割の猫が心筋症に罹患しています。
雑種猫で多く認められていますが、心筋症がとてもよく発生する品種も存在します。
よく発生するのは
『メインクーン・ラグドール・ブリティッシュ・ペルシャ・ベンガル』などです。
心筋症はそのタイプによって大きく以下の4つに分類されます。
・肥大型心筋症 HCM
原因のない全体または部分的な心筋の肥大を認める
・拘束型心筋症 RCM
心筋の肥厚はないが心房の拡大(うっ血)がある。
・拡張型心筋症 DCM
心臓の左室の収縮力が低下し、心臓が大きくなる。
・不整脈源性右室心筋症 ARVC
心臓右室右房の重度の拡張と不整脈・右心不全が起こる。
これらのなかで猫で最も多いのは肥大型心筋症で、7頭に1頭の猫がこの心筋症に罹患していると言われています。
これらの診断は主に心臓のエコー検査で行います。
その他心筋症の検査としては、遺伝子検査、レントゲン検査、バイオマーカー、心電図、血圧測定を行い総合的に評価します。
心筋症の症状
症状は進行具合によりさまざまな症状を呈します。
■ 初期(ほぼ無症状)
- 少し疲れやすい
- 呼吸が速い日がある
- 食欲低下が時々
多くの猫は 明らかな症状が出ません。
■ 進行すると
- 呼吸が早い
- 口を開けて呼吸する
- 元気がない
- 食べない
- 歩き方がおかしい(後ろ足麻痺=血栓)
特に 呼吸速迫は心臓病の重要なサイン です。
猫の心筋症の進行段階は下記の4段階に分けられます。
Stage A : 心臓病を発症するリスクが高いが、心臓病は確認されない
Stage B : 心臓の構造異常はあるが、心不全の臨床徴候は呈していない
B1構造異常あるが心房拡大なし
B2構造異常と心房拡大がある
Stage C : 現在または過去に、心不全の臨床徴候を呈したことがある
Stage D : 心不全の臨床徴候が標準的な治療では治療困難
心筋症で最も恐れることは心不全と大動脈血栓塞栓症(いわゆる脳梗塞や心筋梗塞みたいなもの)であり、
ステージB2以降のステージではこの病態の発生率が高くなり注意が必要です。
またこの病態は無症状から急に発症しますので、
ステージB2以降の心筋症の猫では要注意して経過観察を行い、進行を遅らせる治療が必要です。
心不全の症状
・頻呼吸
・肺の音の変化
・低体温
心臓がうまく動かず循環が悪くなり急にこのような症状を呈し、元気消失が起こります。
大動脈血栓塞栓症の症状
急に大声で叫び痛みを感じ、後肢の麻痺と冷感を呈します。
これは初期治療開始までの時間がとても大切ですので、万が一心臓が悪い可能性がある猫でこれらの症状を呈する場合はすぐに病院を受診しましょう。
心筋症の猫の寿命
多くの場合は、症状を示さないので、気づかずに進行しています。
そのため、見つかった時点での進行ステージによってその後の寿命は様々です。
つまり、無症状で心筋症ステージB1と診断された猫ちゃんと、症状を呈して心筋症ステージCと診断された猫ちゃんでは大幅に寿命が異なります。
参考までに、無症状の心筋症の猫の5年間以内の死亡率は約23%という報告があります。
無症状の若い猫では心筋症であっても長期生存できる可能性があり、
逆に心不全や大動脈血栓塞栓症を発症した猫は極めて予後は悪いと言われています。
そのため、早期発見早期治療が極めて重要となります

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緊急で受診すべき危険なサイン
以下はすぐに病院へ:
- 呼吸が早い(1分間に40回以上の目安)
- 口を開けて呼吸
- 横になれない(苦しくて座ったまま)
- 舌が紫っぽい
- 後ろ足が動かない、冷たい(血栓)
- ぐったりしている
猫の呼吸困難は 肺水腫・胸水・重度心不全の可能性 があります。
動物病院で行う検査
猫の心臓病の診断には複数の検査が必要です。
- 心臓エコー(最重要)
→ 心筋の厚さ、血液の流れ、心臓の動き - レントゲン
→ 肺水腫・胸水の確認 - 血液検査(NT-proBNP)
→ 心負荷の指標 - 血圧測定
→ 高血圧は心臓に負担 - 心電図
→ 不整脈の確認
エコーは 診断・重症度・治療方針すべてに必要 です。
治療方法(病型・重症度で異なる)
猫の心臓病は 根治が難しく、進行抑制と症状の管理が中心 になります。
■ ① 心不全の治療
- 利尿剤(肺水腫・胸水改善)
- 血管拡張薬
- 強心薬(重症で使用)
■ ② 血栓予防
猫の心臓病で最も怖い合併症のひとつ。
以下がよく使われます:
- 抗血小板薬(クロピドグレルなど)
- 抗凝固薬(ヘパリン等)
■ ③ 高血圧管理
高血圧は心不全悪化の原因になります。
■ ④ 食事
- 高品質なタンパク質
- 塩分控えめ
- 肥満予防
血栓(サドル血栓:ATE)について
猫の心臓病で最も重い合併症のひとつが 血栓塞栓症 です。
特徴:
- 突然後ろ足が麻痺
- 足が冷たい
- 激しい痛み
- 呼吸も速くなる
非常に危険で、すぐに治療が必要です。
血栓予防の薬が重症化を防ぐ重要なポイントです。
突然死のリスクはある?
猫の心筋症は
症状なく進行 → 突然死
というケースが一定数あります。
原因:
- 重度不整脈
- 急性心不全
- 血栓塞栓症
そのため、
- 健康診断でのエコー
- 呼吸数の観察
- 食欲の変化
は非常に重要です。
自宅でできるケア
- 1分間の呼吸数を定期的にチェック
- 食欲や元気の変化を記録
- ストレスを避ける
- 太りすぎないように管理
- 投薬を続ける
- 定期的な心臓エコーを受ける
呼吸数が 30〜40回/分を超える日は要注意 です。
よくある質問(FAQ)
Q. 猫の心臓病は治りますか?
→ 完全に治すことは難しいですが、治療で長く安定した生活が可能です。
Q. 咳は出ますか?
→ 猫は咳が出にくいです。呼吸数・呼吸の仕方の方が重要です。
Q. 心臓病の猫でも手術や麻酔はできますか?
→ 重症度によります。事前のエコー評価が必須です。
Q. 元気なのにいきなり悪化しますか?
→ はい。猫の心筋症は無症状進行が多く、急変例があります。
まとめ(この記事の要点)
・定期検査と在宅管理で長期安定が期待できる
・猫の心臓病の多くは心筋症(特にHCM)
・無症状進行 → 急変のリスクあり
・重要なのは呼吸数とエコー検査
・血栓(後ろ足麻痺)は緊急疾患
・治療は利尿剤・血栓予防・血圧管理など
動物は言葉を話せないので、気づかずに進行したり発症したりしている病気はとても多いです。
特に心筋症など発症初期に症状を呈さないタイプの病気は、症状がでて病院で見つかった時にはすでに手遅れであったり、短命に終わってしまうことが多いのです。
かといって毎月のように健康診断の血液検査をするのは負担にしかなりません。
そのためなるべく小さなサインや、一緒に暮らす上でのポイントを押さえ、知識を備えておいていただくことが最も大切であると思います。
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