更新日:2025/12/5
犬や猫の血液検査で
「カルシウム(Ca)が高い」 と言われた場合、
緊急性の高い疾患が隠れていることがあります。
高カルシウム血症は、
- 腫瘍(リンパ腫・上皮小体腫瘍など)
- 腎臓病
- 内分泌疾患
- 脱水
- 中毒
など、幅広い基礎疾患のサイン です。
放置すると 腎不全・不整脈・意識障害 を引き起こす可能性があるため、
早期の評価と治療が重要です。
本記事では
原因・症状・検査・治療・緊急時の対処 を獣医師の視点でまとめます。
高カルシウム血症とは?
血液中のカルシウム濃度が基準範囲を超えて高くなった状態を指します。
分類
- 総カルシウム(tCa):血清Caの総量
- イオン化カルシウム(iCa):生理活性を持つ本当の“有効Ca”
診断において最も重要なのは iCa(イオン化カルシウム)です。
高カルシウムの原因
🟥 ① 腫瘍性(最も重要・犬で多い)
- 悪性リンパ腫(最多)
- 上皮小体腫瘍(副甲状腺腫)
- 肛門嚢アポクリン腺癌(犬)
- 多発性骨髄腫
- その他の固形腫瘍
腫瘍性高Ca血症は PTHrP の産生が関与することがあります。
🟧 ② 腎性(腎不全)
腎臓の排泄障害により Ca が上昇します。
- 慢性腎臓病(CKD)
- 脱水による腎血流低下
腎性高Caは リン(P)と同時に上昇していることが多い 点が特徴です。
🟨 ③ 内分泌性
- 上皮小体機能亢進症(Primary hyperparathyroidism)
- PTH 高値
- 犬で比較的みられる
- アジソン病(副腎皮質機能低下症)
🟦 ④ その他
- 脱水
- ビタミンD中毒
- 肉芽腫性疾患
- 特発性高カルシウム血症(猫で多い)
猫の特発性高Caは
結石形成と関連 し、管理が必要です。
高カルシウムの症状
高カルシウム血症は全身に影響します。
主な症状
- 多飲多尿
- 嘔吐
- 下痢または便秘
- 食欲不振
- 元気低下
- 脱水
- 筋力低下
- 不整脈
- 痙攣(重度)
腎障害が最も深刻な合併症です。
しかし、進行した重度の高カルシウムでなければ無症状だということです!
定期的にカルシウムを含んだ健康診断の血液検査をしましょう。
早期検査はヒトの5倍の頻度、重要度と考えても言いすぎではありません。
重度の高カルシウム血症が続くと腎不全が悪化したり、
心血管障害を引き起こすので危険です。
治療のためにはその原因の診断が大切です。
ペトことフーズ多飲多尿は腫瘍?腎不全?
高カルシウム血症が腫瘍なのかどうかを調べるためには、
血液のホルモン検査が大切です。
そのホルモンは
PTH、PTH-rpと呼ばれます。
腫瘍が原因の際はPTH-rpというホルモンが高くなるのでそれではっきりします。
この数値が低い場合は腫瘍の可能性は否定されます。
診断のための検査
高Caの原因を特定するには、以下の検査が必要です。
✔ ① イオン化カルシウム(iCa)
診断の中心となる検査。
✔ ② 血液検査
- BUN / Cre(腎臓)
- P(リン)
- 電解質
- PTH / PTHrP(腫瘍性鑑別)
- 副腎系検査(アジソン病)
✔ ③ 画像検査
- 胸部X線:リンパ腫・肺転移
- 腹部超音波:腫瘍・上皮小体腫・腎臓
- CT検査:腫瘍検索
✔ ④ 尿検査
結石形成のリスクを評価します。
高カルシウムの治療
大切な治療は、まず
①点滴
生理食塩水を点滴し、尿からカルシウムを排泄します。
②利尿剤
点滴と併せて利尿剤を投与し尿の排泄を促します。
③ステロイド
ステロイドは腎臓でのカルシウム再吸収を抑制するので、
高カルシウムのときに有効です。
④ビスホスホネート(ゾレドロン酸)
1時間ほどかけて血管から点滴して、カルシウムの数値を下げる薬です。
特に腫瘍が原因の際は効果は高く、
月に一度ほど行います。
⑤食事管理
カルシウムは食事から摂取していますので、
適切な食事管理が大切です。
緊急治療(入院が必要なケース)
イオン化カルシウムが >1.6〜1.7 mmol/L(施設基準による) の場合、
緊急治療を行うことがあります。
緊急治療の内容
- ① 輸液療法(生理食塩水)
- ② ループ利尿薬(フロセミド)
- ③ ステロイド(リンパ腫疑いの場合)
- ④ カルシトニン
- ⑤ ビスホスホネート(パミドロネート等)
基礎疾患を治療しない限り、Ca値は再上昇します。
原因別の治療方針
🟥 腫瘍性(リンパ腫・上皮小体腫瘍など)
- 抗がん剤治療
- 外科手術(上皮小体腫の場合)
- ビスホスホネート併用
🟧 腎性
- 輸液
- リン吸着剤
- 腎臓病の管理
🟨 内分泌性(上皮小体機能亢進症)
- 上皮小体摘出術が有効
🟦 特発性(特に猫)
- 食事療法
- 療法食(低Ca・尿石管理)
- スチルベストロールなどの薬物療法(必要に応じて)
放置した場合のリスク
高カルシウム血症を放置すると、
- 腎不全
- 尿路結石
- 不整脈
- 低血圧
- 意識障害
- 多臓器不全
といった重篤な合併症を引き起こします。
早期治療が非常に重要です。
犬猫の食事管理の鉄則
※本記事は獣医師の視点から、毎日安心して与えられるドッグフードを厳選して紹介します。病気の治療ではなく、将来の健康を守るための食事選びを目的としています。普段我々は病気の療法食としてロイヤルカナンやヒルズなどの療法食を処方しますが[…]
【獣医師が解説】猫にとって本当に良いキャットフードとは?目的別おすすめフードも紹介
犬猫は症状(多飲多尿)と数値(カルシウム)という、
小さなサインをもとに大きな病気を伝えています。
このようなサインに早期に気付き、
早期から適切に診断し治療するためには、
飼い主さまのケアと獣医師の適切な対応が極めて大切となります。
まず何よりもヒトの5倍は、早期発見が大切です。

よくある質問(FAQ)
Q. ステロイドだけで治りますか?
腫瘍性の場合、一時的に下がるだけで根治にはなりません。
Q. 食事で治ることはありますか?
猫の特発性高Caでは改善することがあります。
Q. どれくらいのCa値で危険ですか?
iCaが高いほど危険度が上がります。
1.6 mmol/L 前後で入院管理を検討します。
Q. 高齢でも治療可能ですか?
可能です。基礎疾患に応じて治療方針を調整します。
まとめ
高カルシウム血症は 腫瘍・腎疾患・内分泌疾患など多くの病気のサイン
最重要検査は イオン化カルシウム(iCa)
治療の中心は 原因疾患の特定と治療
放置すると 腎不全・不整脈・神経症状 を引き起こす
緊急域では輸液・薬物治療が必要
猫では特発性高Caも多く、食事管理が有効なケースもある
治療中の犬に現実的に選ばれているフードをまとめまています。
▶︎ 犬猫に配慮したフードの考え方を見る
※本記事は獣医師の視点から、毎日安心して与えられるドッグフードを厳選して紹介します。病気の治療ではなく、将来の健康を守るための食事選びを目的としています。普段我々は病気の療法食としてロイヤルカナンやヒルズなどの療法食を処方しますが[…]
更新日:2025/12/12キャットフードは「何を選ぶかで寿命が変わる」 と言っても過言ではありません。しかし、種類が多すぎるネットは宣伝だらけ“何が良いか”がわからない…[…]