腫瘍 おすすめのごはん 投薬
  1. 食事
  2. 腫瘍
  3. フード
  4. 分離不安
  5. デンタルケアなど
獣医師が伝える犬猫の病気や治療の考え方

【2025-2026年最新版】犬と猫のDIC(播種性血管内凝固)治療|症状・診断・治療プロトコールを獣医師がわかりやすく解説

更新日:2025/12/5

この子はDICと呼ばれる状況です、できることはありません、という言葉は絶望的で受け入れることができません。

そもそも急なことだし難しいことばかりで理解できないことも多いと思います。

そのDICはどうゆう病態で、何が原因で、どうすればいいのでしょうか。

DIC(Disseminated Intravascular Coagulation:播種性血管内凝固)は、
体内の凝固システムが一気に暴走し、

  • 体中の血管で血栓ができる
  • 同時に止血因子が枯渇し出血が起こる

という 非常に危険な病態 です。

原因となる病気(基礎疾患)があり、
それによって 凝固と線溶のバランスが崩壊する ことで発生します。

DIC は「治療が遅れるほど致死率が上昇する状態」であり、
迅速な診断と集中的治療が必要です。

この記事では、
DIC の症状・診断基準・治療・血液製剤・抗凝固療法・予後 をまとめています。

DIC(播種性血管内凝固)とは❔

DIC は「凝固異常が全身で起こる重篤な状態」で、

  1. 血栓が大量に形成される(微小血栓)
  2. 凝固因子・血小板が消費され枯渇する
  3. 臓器障害・出血が発生する

という悪循環を起こします。

治療しなければ臓器不全に進み、
死亡率は非常に高くなります。

ある基礎疾患の存在下において、全身性かつ持続性に著しい凝固活性化を起こし、全身のとして細い血管内に微小血栓が多発する重篤な病態、というのが正式な説明。

簡単に翻訳すると、重篤な病気が原因で、全身のいたるところで血栓(脳梗塞のようなもの)ができている状態を指します。

そして、この病態は極めて末期の状況を示唆するのでヒトも動物も極めて致死率が高い状況を指し、死が目の前に差し迫っていることを示します。

では、どのような病気が原因となるでしょうか。

DICの原因

犬・猫でDICを起こしやすい疾患は以下の通りです。

● 感染症

  • 敗血症(特にグラム陰性菌)
  • ウイルス感染(猫)

● 重度の炎症

  • 膵炎
  • 腹膜炎

● 腫瘍

  • 血管肉腫(犬)
  • 肥満細胞腫
  • 進行した悪性腫瘍

● 外傷

  • 大量出血
  • 血栓塞栓症

● 免疫介在性疾患

  • IMHA(溶血性貧血)など

DIC の治療は “原因疾患をいかに早く制御するか” が最重要要素です。

これらに罹患している犬猫は常にDICへの移行するリスクがありますので、

手遅れにならぬよう早期に強力に治療していくことが大切です。

では手遅れにならないようにするのはどうすればよいでしょうか。

それはDIC=手遅れなのでその一歩手前=pre-DICまでに診断治療することです。

Pre-DICはDICの約1週間前と言われています。

DICの症状

症状は多様ですが、以下がよくみられます。

  • 微小出血(点状出血、歯肉出血)
  • 皮下・粘膜の出血
  • 呼吸促迫
  • 四肢冷感
  • ぐったりしている
  • 嘔吐・下痢
  • 尿量低下
  • 低体温または発熱
  • 多臓器不全(腎・肝・脳・肺)

末期では 全身性の大出血 が起こることもあります。

呼吸が荒く酸素室が必要なことも多いです。

そのような状況の場合は以下を参考にしてください。

併せて読みたい記事

更新日:2025/12/6犬や猫が呼吸が苦しそうなとき、動物病院で勧められることが多いのが「酸素室(酸素ボックス)」を使った在宅酸素療法(HO₂=Home Oxygen Therapy)」 です。酸素室は、呼吸が辛い子の負[…]

DIC、pre-DICの診断

DIC は単一検査では診断できません。
複数の異常が組み合わさって診断します。

● 凝固系の異常

  • PT延長・APTT延長
  • フィブリノーゲン低下
  • D-dimer 上昇
  • FDP 上昇

● 血小板減少

血小板が 10〜15万/μL 以下 に低下することが多い。

● 貧血・溶血所見

● 多臓器のダメージ

  • BUN/Cre 上昇(腎障害)
  • ALT/AST 上昇(肝障害)
  • 乳酸上昇(循環不全)

複数の異常がある場合には
DICの進行度(early DIC / overt DIC) を判断し治療に入ります。

DICの治療

DICの治療は大きく分けて3つです。

① 基礎疾患の制御(最重要)

  • 抗生剤(敗血症)
  • 腫瘍のコントロール
  • 膵炎・腹膜炎の治療
  • 外傷・ショックの管理

基礎疾患を制御しない限り、
DICは改善しません。


② 循環の安定化(輸液療法)

  • 適正な輸液による組織血流の維持
  • ショックへの対処
  • 電解質・酸塩基補正

過剰輸液は悪化を招くため、
目標指向型で丁寧に行います。


③ 血液製剤 + 抗凝固療法

後述します。

この治療内容よりも早期に原因を診断し、状況を判断し2つの治療を素早く開始すること。

これがDICの最も大切なことです。

大切なので繰り返しますが、

手遅れにならぬよう早期に診断し強力に治療していくことが何よりも大切です。

血液製剤(輸血)の使い方

目的は“止血因子の補充”と“出血のコントロール”。

● 新鮮凍結血漿(FFP)

  • 凝固因子の補充
  • 早期のDICでも有効
  • 出血がある場合に優先的に使用

● 濃厚赤血球(pRBC)

  • 重度貧血に対して使用

● 全血

  • 重度出血や大量消費時に使用

投与量は状態に応じて調整します。

抗凝固療法

抗凝固は 過剰な血栓形成を抑え、臓器障害を防ぐ目的 で行います。

使用される主な薬剤:

● ヘパリン(低用量)

  • 微小血栓の形成を抑制
  • 早期 DIC で効果があるとされる

● アンチトロンビン補充

重度低下がある場合に補助的に使用。

● 低分子ヘパリン(施設による)

抗凝固療法の可否は
出血傾向の強さとバランスを見て慎重に判断 します。

集中治療で用いられる支持療法

  • 酸素投与
  • 血圧・尿量管理
  • 昇圧剤(ノルアドレナリンなど)
  • 電解質補正
  • 体温管理
  • 鎮痛・鎮静
  • 栄養管理(経腸または静脈)

DIC は ICU 管理が必要な重症疾患のため、
多方面のサポートが同時進行で必要です。

治療後の経過と予後

DIC の予後は 原因疾患と治療開始のタイミング に強く依存します。

● 早期治療ができた場合

  • 回復の可能性あり
  • 臓器障害が軽度であれば生存率が上がる

● 遅れて診断された場合

  • 臓器不全(腎・肝・肺)が進行
  • 治療反応が悪く死亡率が高い

参考となる臨床傾向

  • early DIC:改善する例が多い
  • overt DIC:致死率が大幅に上昇

よくある質問(FAQ)

Q. DICは治るのか?

治る場合もありますが、早期介入が絶対条件 です。

Q. DICが起きたら輸血は必須?

出血の有無と凝固因子の低下の程度によります。

Q. 抗凝固薬は危険では?

状態によっては利益が上回るため使用します。
出血傾向が強い場合は注意が必要です。

Q. どれくらいの期間で改善する?

早ければ数日、重症例では1週間以上かかることもあります。

まとめ

  • DIC は 凝固異常と出血が同時進行する極めて重篤な病態
  • 診断は複数の検査異常を組み合わせて行う
  • 治療の中心は
    1. 基礎疾患の制御
    2. 循環の安定化(輸液)
    3. 血液製剤・抗凝固療法
  • 集中治療(ICU)が必要となる
  • 早期治療ほど回復率が高い

DICは「時間との勝負」の病態です。
疑われた場合は直ちに治療を開始し、
原因疾患を同時に徹底して治療する必要があります。

最期までなるべくお家で過ごすことが何より大切かと思います。

そのような状況の方は選択肢の一つに以下も参考にしてください。

併せて読みたい記事

更新日:2025/12/6犬や猫が呼吸が苦しそうなとき、動物病院で勧められることが多いのが「酸素室(酸素ボックス)」を使った在宅酸素療法(HO₂=Home Oxygen Therapy)」 です。酸素室は、呼吸が辛い子の負[…]

最新情報をチェックしよう!