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獣医師が伝える犬猫の病気や治療の考え方

【経験談】猫のリンパ腫に対する抗がん剤治療|実際の経過・副作用・判断ポイントを獣医師が解説

更新日:2026/1/20

猫のリンパ腫は、
「治療すれば大きく良くなるケース」
「難しいケース」 が極端に分かれる腫瘍です。

ネットにはいろんな情報があるけれど、
治療現場の獣医師としては “本当に大切なポイント” は別にあります。

この記事では

  • リンパ腫の種類
  • それぞれの治療法
  • 余命の目安
  • 治療費の目安
  • 副作用の実際
  • どの子にどの治療が合うか

を、最新の知見+臨床経験ベースでまとめています。

✔ 「治療してよかった」
✔ 「治療すれば助かったのに…」
と結果が分かれてしまう病気だからこそ、
正しい知識を一度ここで整理してほしい。

自分は腫瘍の二次診療まで従事していますので猫ちゃんのリンパ腫は数多く経験し、様々な治療を行っています。

過去の猫ちゃんのリンパ腫の治療経過とどのような転帰をたどったかについて経験をお話しします。

※この記事は、猫リンパ腫に対する「抗がん剤治療」に特化した内容です。
治療全体の選択肢や比較については、こちらの記事をご覧ください。

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猫のリンパ腫では、抗がん剤治療が標準治療とされます

猫のリンパ腫に対して、抗がん剤治療はもっとも一般的に選択される治療法です。
目的は、腫瘍を完全に治すことではなく、症状を抑え、生活の質(QOL)を保つことにあります。

適切なプロトコルを用いることで、一定期間、症状が落ち着いた状態(寛解)を目指すことが可能です。

正しい理解とネットの誤情報

猫ちゃんのリンパ腫を理解するのはとても難しいです。

ただでさえ難しい病態な上に、診察室では気が動転してしまうことと思います。

猫ちゃんのリンパ腫はその子によって実はさまざまなタイプがあるので、

『猫のリンパ腫』とまとめて考えること自体正しくありません。

ネット上には様々な情報が流れます。

しかし、みんな異なるリンパ腫で異なる治療結果であることがほとんどなので鵜呑みにせず参考にしておくのが賢明です。

抗がん剤治療によって期待できる治療成績

抗がん剤治療を行った場合、

  • 一時的な症状改善
  • 寛解状態の維持

が期待できます。

報告によって差はありますが、
数か月〜1年以上の寛解が得られるケースもあります

ただし、すべての猫が同じように反応するわけではなく、
個体差が非常に大きいことを理解しておく必要があります。

猫のリンパ腫の予後の考え方

高悪性度か低悪性度か

猫ちゃんのリンパ腫は予後の悪い高悪性度リンパ腫(低分化)と予後がマイルドな低悪性度リンパ腫(高分化)に大別されます。

どこのリンパ腫か

リンパ腫は血液のガンなので体のあらゆる部位で発生します。

その発生部位によってでる症状や予後がちがいます。

縦隔型リンパ腫:胸の中に腫瘍ができるため呼吸が苦しくなる。

多中心型リンパ腫:体(多くは頸部)のリンパ節が腫れるので、喉の違和感や息のしづらさがある。

消化器型:お腹の中に腫瘍ができ、下痢や嘔吐などの消化器症状がでる。

鼻腔内型:鼻の中に腫瘍ができ、鼻血や鼻水、呼吸困難が生じる。

その他、発生はやや少ないが腎臓型、中枢神経型、眼窩型、皮膚型などが存在しています。

予後はリンパ腫のタイプや治療法によって大きく異なります。
詳しい考え方はこちらの記事で解説しています。

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治療中は痩せないために十分な栄養管理が大切です。

腫瘍治療中の猫にに現実的に選ばれているフードをまとめまています。

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◆ 効果判定のタイミング

2〜4週間で“改善しているかどうか”を評価
反応が無ければ治療変更

余命の目安(治療あり/なし比較)

タイプ治療あり治療なし
小細胞リンパ腫1.5〜3年以上数ヶ月
鼻腔型リンパ腫1〜2年数ヶ月
大細胞リンパ腫6〜12ヶ月(反応良い場合)数週間〜2ヶ月
ステロイドのみ1〜3ヶ月数週間

“どのタイプか” が最重要。

迷ったときの判断ポイント

その子は高グレードか?低グレードか?
痛み・嘔吐など“辛さ”はどうか?
通院は現実的に可能か?
生活の質をどこまで維持したいか?
金額・時間の負担はどうか?

→ この5つで治療方針の8割は決まる。

よくある質問(FAQ)

Q. 何歳まで治療できますか?

→ 年齢ではなく “身体の状態” で判断します。16歳でも可能なことも多い。

Q. 副作用は心配?

→ 猫は犬より抗がん剤に強い。副作用は人の抗がん剤ほど重くない。

Q. 完治しますか?

→ 完治ではなく“寛解”を目指します。

Q. どのタイミングで緩和ケアに切り替える?

→ 食べられない・痛みが強い・通院がストレスになってきた時。

1年半頑張った消化器型の猫ちゃんのはなし

この子は、数日前から下痢と吐き気、食欲の低下があり痩せてきたとのことでした。

すぐに血液検査とエコー検査を行い、お腹の中の腸に大きな腫瘍があり、

ご飯が通らなくなっていたため、数日後に腸の一部を切除する手術を行いました。

細胞と組織の検査で高悪性度リンパ腫と診断し、追加の抗がん剤治療を手術後10日から開始しました。

このとき、手術後は見た目上はとても元気で、症状もなくなり、エコー検査でも腫瘍は見られなくなっていました。

それなのに抗がん剤を行った理由は、見えていなくても、体に潜んでいるのがリンパ腫だからです。これを寛解状態と言い、完治とは分けて考えます。

残った見えない腫瘍細胞たちを殺滅するために抗がん剤を始めました。

行ったのは週に1回(UW-25/CHOPプロトコール)抗がん剤を投与するものです。

この猫ちゃんは副作用があまり出ず、ごくたまに吐いたり、食欲が半分になることがありましたが、腫瘍があった時と比べると格段に元気に約半年間の抗がん剤を乗り切りました。

抗がん剤の副作用が強く出てしまう場合はステロイドのみの治療に移行する場合もあります。

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その後、元気いっぱいで、腫瘍も存在しないため薬をすべてやめて、1ヵ月に1回の検査だけになりました。これを休薬ー寛解といいます。

寛解は、見た目上腫瘍が見えないことを指し、腫瘍細胞が眠っているような状態です。完治とはことなります。

しかし、その後、約1年を過ぎたころ、エコー検査でお腹の中のリンパ節が腫れていることがみつかり、細胞の検査でリンパ腫が再発(再燃といいます)していることが判明し、同じ抗がん剤を再開しました。

すぐに腫瘍は小さくなりましたが、2ヵ月後には抗がん剤しているにもかかわらず腫瘍が大きくなり、

抗がん剤を変更し様々な抗がん剤治療を行いましたが、治療開始から約1年半後にリンパ腫によって亡くなりました。

リンパ腫は、再発すると一度目の抗がん剤より効き目が落ち、腫瘍細胞が強くなるのです。

この猫ちゃんは消化器型のリンパ腫ではとてもよく頑張り、この1年半は大往生です。

この猫ちゃんは抗がん剤治療で頑張れた子の一般的な流れです。

飼い主さまと猫ちゃんの気持ち

リンパ腫治療は副作用ばかりに目が行くことが多いですが、消化器型のリンパ腫は腫瘍のせいで吐き気や下痢になり、とっても苦しみます。

この猫ちゃんも、治療中に抗がん剤の吐き気なども週に何度か経験しましたが、よっぽど楽だったと思います。

一番楽なのは寛解期間ですが、抗がん剤中も腫瘍での苦しみと比べると幾分快適に過ごしていました。

もちろんこれには個体差があります。いかにして抗がん剤と腫瘍と共存するかがポイントです。

飼い主さんはとても長くて短い大変な1年半だったと思います。しかし、猫ちゃんと共に戦い切ったという気持ちが強く、亡くなったことは悲しいものの、単純な悲しみとは違う感情を抱かれているようでした。命と本気で向き合ったからこそ感じることができる命の重みを、儚さを感じられ、一切の後悔はありませんでした。

ペットはいつも先に旅立ってしまいますが、人生の縮図であり、その命から学ぶことは多いです。

正解は一つではなく、最高の治療を受けさせてあげることでもありません。

共に考え、ともに戦い、後悔のない過ごし方をすることだと思います。

 完治した猫ちゃんのおはなし

実際に数多くの猫ちゃんのリンパ腫を治療してきましたが、

リンパ腫が完治した猫ちゃんに遭遇した経験をお話しします。

雑種の3歳でFeLV陽性の猫ちゃんが、ほんの少しの呼吸様式の変化を感じ動物病院に連れてこられました。

レントゲン検査にて胸の中に小さな白い影がひとつ見つかりました。

通常3歳の猫ちゃんに腫瘍が発生することは極めて稀ですが、

FeLVウィルスを保有する猫ちゃんは若くても腫瘍が発生する可能性があります。

リンパ腫の診断には通常、細胞診と呼ばれる細胞の検査が必要ですが、

この猫ちゃんはまだ病変が小さく検査ができませんでした。

少し様子を見る選択肢もありましたが、FeLV陽性である事実と、

腫瘍の場合は進行がとても早いため腫瘍の初期であり早期発見である可能性を考え、

飼い主様と相談の上、診断および治療(減容積)を目的として開胸手術による腫瘤の摘出を行いました。

摘出した腫瘤の病理検査の結果、悪性リンパ腫(縦隔型)と診断され、摘出手術10日後より抗がん剤治療(UW-25/CHOP療法)を開始しました。

約半年間の抗がん剤治療を終え、CT検査において腫瘍の再発がないことを確認して、

一旦治療をストップし、経過観察することにしました。

その後定期的な検査を実施するも腫瘍の再発を認めず、

5年経過した8歳になっても腫瘍の再発は認めませんでした。つまり、リンパ腫が完治した訳です。

その後もリンパ腫に悩むことなくぽっちゃりとふくよかな体型になり、元気に過ごしていました。

猫のリンパ腫治療で大切なのは「正解」ではなく「納得」

猫のリンパ腫治療に、絶対的な正解はありません。

  • 延命を目指す治療
  • 苦しみを減らす治療

どちらも、猫と家族にとって意味のある選択です。

大切なのは、
十分な情報を得たうえで、納得して選ぶことです。

この情報もその一助になれば。

抗がん剤治療を選ばないという判断も、間違いではありません

抗がん剤治療は、すべての猫にとって最適とは限りません。

  • 体への負担
  • 通院ストレス
  • 家族の生活環境

これらを考慮し、抗がん剤を選ばない判断がなされることも珍しくありません

▶ 抗がん剤を行わない場合の選択肢について

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まとめ

  • 猫のリンパ腫は 種類で治療成績が大きく変わる
  • 小細胞リンパ腫は年単位の改善が期待できる
  • 大細胞型は抗がん剤が必要
  • 鼻腔型は放射線が最強
  • 副作用は思ったより少なく治療しやすい
  • 誤情報に惑わされず“正しい判断”をすることが大切

猫ちゃんと飼い主さんにとって 最善の選択が明確になる ように、
獣医師目線で一つひとつ丁寧に解説しました。

獣医師の視点で、
腫瘍治療中の猫に現実的に選ばれているフードをまとめまています。
▶︎ 腫瘍の猫に配慮したフードの考え方を見る

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