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獣医師が伝える犬猫の病気や治療の考え方

猫が吐く(嘔吐)原因と対処法|危険な症状・病院へ行くタイミングを獣医師がわかりやすく解説

更新日:2025/12/6

おうちの猫ちゃんはよく吐きますか?

たまに吐きますか?

まったく吐きませんか?

恐らく多くの方は上のふたつどちらかかと思います。

猫ちゃんは色々な原因でよく吐きます。

しかし、同じ「吐く」でも、少し様子見ていい場合と緊急性があり様子を見ては絶対にいけない場合があります。

猫が「吐く」ことは珍しくありません。
毛玉、食べすぎ、早食いなどの生理的な原因もありますが、
実は 腎臓病・腫瘍・膵炎・消化管閉塞 など、重大な病気のサインである場合もあります。

この記事では、
猫の嘔吐の原因・危険な嘔吐の見分け方・家庭でできること・受診の目安
を体系的にまとめています。

猫が吐くのはよくあること?

猫はもともと「吐きやすい動物」です。
毛づくろいで飲み込んだ被毛を排出したり、食べすぎたときに吐くことがあります。

しかし、
“月に1回以上の嘔吐” が続く場合は異常の可能性が高い
と考えられています。

特に以下に当てはまる場合は注意が必要です。

  • 何度も吐く
  • 食べた直後ですぐ吐く
  • 嘔吐と下痢が続く
  • 元気がない

「吐くのは猫だから普通」と思わず、状態を観察することが大切です。

嘔吐の種類(色・内容物)

嘔吐の内容や色は診断のヒントになります。

● 透明・白い泡

→ 空腹、胃酸過多、軽度の胃炎

● 黄色(胆汁)

→ 空腹時間が長い/十二指腸逆流

● 食べたもの

→ 早食い、食道のトラブル、胃の運動低下

● 茶色・血が混じる

→ 胃潰瘍、消化管出血、腫瘍

● 緑色

→ 胆汁・十二指腸内容物混入

● 黒いコーヒー残渣状

→ 消化された血液(胃や小腸の出血)

色が異常な場合や、嘔吐物に血が混じる場合は受診が必要です。

猫の嘔吐の主な原因

大きく分けると次のカテゴリに整理できます。


■ ① 消化器が原因の嘔吐

  • 毛玉(ヘアボール)
  • 急性胃腸炎
  • 食べすぎ・早食い
  • 食物アレルギー
  • 消化管の腫瘍
  • 消化管閉塞(誤食を含む)
  • 慢性腸症(IBD)

※ 誤食は 命に関わる緊急疾患 です。


■ ② 腎臓病

  • 尿毒症による吐き気
  • 食欲低下
  • 体重減少
    高齢猫に非常に多い原因です。

■ ③ 甲状腺機能亢進症

  • 嘔吐
  • 食欲はあるのに痩せる
  • 活発になりすぎる
    10歳以上の猫では頻度が高い病気です。

■ ④ 膵炎

  • 食欲不振
  • 嘔吐
  • ぐったりする
    膵炎は診断が難しく、嘔吐の長期化につながることがあります。

■ ⑤ 肝臓病

  • 胆汁の流れが悪いと嘔吐しやすい
  • 黄疸が出ることもある

■ ⑥ 感染症(若齢猫)

  • パルボウイルス
  • 寄生虫(回虫など)

■ ⑦ 中毒

  • 植物(ユリなど)
  • 薬品
  • 人の薬
  • 化学物質

ユリ中毒は 嘔吐 → 急性腎障害 に進行し、非常に危険です。

様子を見ていい嘔吐

猫ちゃんは健康な状態でも吐くことがあります。

治療を必要としない嘔吐で多いものは

毛玉と朝方の胃液(黄色い液と泡)をたまに吐くことです。

猫ちゃんは綺麗好きですのでよく毛繕いをします。

また、痒いときは掻くのでなく舐めます。

そのため、特に長毛種では毛玉が胃の中に溜まり、

溜まり過ぎると気持ち悪くて吐き出します。

また、朝方は空腹になり、胃の中に胃液が溜まります。

胃液が溜まると気持ち悪くなるので吐きます。

これを空腹時嘔吐といい、健康な子でもおこります。

それ以外は何か原因があり吐いてる可能性が高いです。

この場合はまず、以下の点を確認します。

①食欲はあるか?下痢していないか?

②生活(食事)内容に変化はないか?

③何か誤食した可能性はないか?

④その後、どのくらいの頻度で、いつまで吐くか?

この4つを考え、緊急性を判断してください。

動物病院に行くべき嘔吐

先ほどの4点を確認し、病院に行くか判断してください。

①食欲はあるか?下痢していないか?

食欲が低下している場合や下痢をしている場合は、

何か病気に伴う嘔吐と考えられます。

その重症度はその子によってさまざまですが、

ここに異常を認める場合は動物病院を受診してください。

若くて軽度であれば、一過性の胃腸炎が多いですが、

様々な原因で嘔吐は起こります。

②生活(食事)内容に変化はないか

何かいつもと違ったものを食べた場合や、食べすぎた場合、

一気に食べた場合は食物有害反射により吐きます。

この場合は、少し様子を見て見ましょう。

その後繰り返し吐く場合は③④を確認します。

③何か誤食した可能性はないか

これは若い猫ちゃんでとっっっても多い原因であり、

かつ特に緊急性があります。

見る限り何もなくなっていないように見えても、

ヒモや毛布やビニール、ティッシュなど口にしうる様々なものは腸閉塞の原因になります。

普段から何かを口にしやすいタイプの猫ちゃんはここは要注意です。

今まで数多くの猫ちゃんの腸閉塞を手術してきましたが、多くの飼い主さまは心当たりはない!とおっしゃります。

しかし、若い猫ちゃんが急に何度も吐き始める場合はまずここを考え、すぐに動物病院に行きましょう。

明らかにその疑いがない場合は、様子を見て④を確認します。

④その後、どのくらいの頻度で、いつまで吐くか?

一度吐いた後にまた吐かないかどうか、まず様子を見ましょう。

一度吐いた後、少し時間(30分以上)が経ってからまた吐く場合や、

その後時間を置いても繰り返し吐く場合は、何か原因がある可能性がありますので、動物病院を受診します。

また、その後しばらく吐かない場合は①~③に注意し様子を見てみましょう。

一過性の原因であれば、吐かなくなり、ご飯も食べて普段通りしてくれるはずです。

嘔吐する様々な病気

様子を見たくない吐く病気で多いものを下記にまとめます。

誤食

【緊急】犬猫の誤飲~元気?手術?費用?~

腎不全

猫ちゃんトイレ問題 ~猫の尿路閉塞と緊急要する症状~

膵炎

猫の膵炎とは|症状・診断・治療・注意すべき危険サインを獣医師がわかりやすく解説

お腹のリンパ腫

【経験談】猫のリンパ腫 ~どうなる?予後は?完治する?実際の抗がん剤治療例~

これらは病的な嘔吐を繰り返します。また、必ず治療を必要とし、適切な治療が早期に行われなければ急に死に至る病気です。

正しい知識があれば焦ることなく様子を見れますし、また緊急を要する病気を見落とす心配がなくなると思います。

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家庭でできる対処法

以下は軽度の嘔吐時にのみ行える対処です。

  • 数時間の絶食(若齢猫は不可)
  • 水は少量ずつ与える
  • フードをいつもより少量にする
  • 早食い対策(早食い防止皿など)
  • ブラッシングを増やす(毛玉対策)

ただし 嘔吐が続く場合はすぐ受診 が安全です。

すぐ病院に行くべき危険なサイン

以下にひとつでも当てはまる場合、緊急性が高い可能性があります。

  • 1日に何度も吐く
  • 血が混じっている
  • ぐったりしている
  • 下痢や発熱を伴う
  • 食べない状態が12〜24時間続く
  • 水も飲めない
  • 誤食の可能性がある
  • お腹が膨らんで見える
  • 黄疸がある
  • 呼吸が早い・苦しそう

これらは 腎不全・膵炎・閉塞・腫瘍 など重度疾患のサインの可能性があります。

動物病院で行う検査

  • 身体検査
  • 血液検査(腎臓・肝臓・電解質)
  • 超音波検査(胃腸・肝胆膵・腎臓)
  • レントゲン(閉塞・誤食の確認)
  • 糞便検査
  • 甲状腺ホルモン(高齢猫)
  • 膵炎検査(Spec fPL/cPL)

症状の経過や嘔吐物の情報も診断に役立ちます。

治療方法

治療は原因によって大きく変わります。

● 胃腸炎

→ 点滴、吐き気止め、整腸剤

● 毛玉

→ 毛玉ケア食、下剤、ブラッシング

● 腎臓病

→ 点滴、食事療法、吐き気止め、腎臓薬

● 甲状腺機能亢進症

→ 抗甲状腺薬、食事療法

● 膵炎

→ 点滴、鎮痛、吐き気止め、食事管理

● 誤食・閉塞

緊急手術が必要になる場合あり

● 腫瘍

→ 外科、抗がん剤、支持療法

日常で気をつけるポイント

  • ストレスの少ない生活環境
  • 食べすぎ防止(食事回数の調整)
  • 毛玉対策(ブラッシング)
  • 若い猫は誤食に注意
  • 高齢猫は腎臓病・甲状腺病の定期健診が重要
  • 嘔吐の頻度と内容を記録しておく

よくある質問(FAQ)

Q. 猫は吐きやすいと聞きますが、本当に病気ですか?
→ 月1回以上の嘔吐は異常の可能性があります。

Q. 黄色い液を吐くことがあります。大丈夫でしょうか?
→ しばしば見られますが、頻繁なら消化器や肝胆道の異常が疑われます。

Q. 食べてすぐ吐きます。どうすれば?
→ 早食い・逆流・食道疾患など。食器の工夫や検査が必要な場合もあります。

Q. 嘔吐と下痢が続きます。危険ですか?
→ 脱水や膵炎などの可能性があり、早期受診を推奨します。


■ まとめ(この記事の要点)

  • 猫は吐きやすいが、月1回以上の嘔吐は異常の可能性
  • 嘔吐の色・内容物は診断のヒントになる
  • 消化器・腎臓・甲状腺・膵炎・腫瘍・誤食など原因は多岐
  • 誤食・閉塞・腎不全・膵炎は特に緊急性が高い
  • 何度も吐く・ぐったり・血が混じる場合はすぐ受診
  • レントゲン・エコー・血液検査で原因を特定
  • 治療は原因により大きく異なるが、点滴と吐き気止めが中心
  • 高齢猫では腎臓病・甲状腺病が嘔吐の原因として非常に多い
  • 日常ではストレス軽減・毛玉対策・誤食防止が重要

以下に獣医師の視点から、
治療中の猫に現実的に選ばれているフードをまとめまています。

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