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獣医師が伝える犬猫の病気や治療の考え方

犬の血管肉腫(HSA)|脾臓に多い悪性腫瘍の症状・診断・治療・予後を獣医師がわかりやすく解説

更新日:2025/12/5

最近は大切に丁寧に飼われているワンちゃんネコちゃんが増え、とっても長寿な子が増えてきました。

獣医療もすすみ様々な病気が早期に診断され、治療選択肢も広がっています。

動物は言葉が話せないので早期発見早期治療には飼い主様の細かな気づきと獣医師の早期診断が不可欠です。

しかし、どれだけよく観察していても多くの場合発見が遅れ、

進行に打ち勝てない病気のひとつに『血管肉腫』があります。

血管肉腫は発見が遅れるうえに、

速いスピードで転移や破裂により命を脅かします。

手術もリスクはあるし、それを乗り切っても短命なことが予想されるし、

痛い思いはさせてあげたくないし、、、とても悩ましいです。

血管肉腫(HSA)は、犬の悪性腫瘍の中でも“最も突然訪れる腫瘍”のひとつです。
昨日まで散歩をしていた子が、ある日急に倒れてしまう。
そんな状況から病院に運ばれ、検査の結果「脾臓の腫瘍」「腹腔内出血」と告げられるケースは少なくありません。

しかし、突然だからこそ、診断後の1日1日には深い意味があります。
治療で伸ばせる時間は限られていても、その中には確かな喜びがあります。

  • またいっしょに散歩できた日
  • ごはんを食べてくれた日
  • 穏やかに寄り添って過ごした夜

この記事では、犬の血管肉腫(特に脾臓原発 HSA)がどんな病気なのか、症状・診断・治療・予後・ケアまでを、最新の知見に基づいてわかりやすく解説します。

血管肉腫(HSA)とは

血管肉腫(HSA:Hemangiosarcoma)は、血管の内皮細胞が腫瘍化して増殖する悪性腫瘍です。
血管は全身に存在するため、腫瘍はどの臓器にも発生し得ます。

悪性度が高く、転移しやすい・破裂しやすい・進行が早い という特徴があり、犬の腫瘍の中でも注意すべき疾患のひとつです。

特に、

  • 脾臓
  • 肝臓
  • 心臓(右心房付近)

など内臓に発生した場合、腫瘍が脆く破れやすいため、突然の腹腔内出血や急変につながることがあります。

血管肉腫はなぜ発見が遅れるのか

血管肉腫は血管を構成する細胞が腫瘍化した腫瘍なので、全身のあらゆる臓器で発生します。

また、血管が腫瘍化しているので、

この腫瘍はとても出血しやすく、破裂することによって大出血をひきおこしやすいのです。

発生しやすい臓器は脾臓と心臓です。

(その他、血管がある場所はどこでも発生します)

脾臓と心臓にできた血管肉腫はまたたくまに大きくなり進行します。

ほとんどの血管肉腫は、1カ月もあれば転移や急速に増大します。

しかし、心臓も脾臓も初期は腫瘍ができていても全く症状に出ません。

症状に出て飼い主さんにサインを出すのは多くの場合、

腫瘍が進行し出血や破裂によって体調が悪くなった時や他の臓器に転移して(肺などが多い)症状が出た時です。

つまり、どれだけよく動物を観察できていても見つかった時には腫瘍が進行していることが多いのです。

これは生活環境ではなく、犬種などの遺伝子的な要因などが関与しています。

定期的に健康診断をしているのに、血管肉腫を早期発見できないことはやむ終えないことなのです。

飼い主ご自身を責める必要はありません。

早期診断できるのは、エコー検査などで偶発的に腫瘍が見つかった時です。

発見されるタイミングは2通りで

①偶発的にエコー検査などでできものが見つかった場合

②破裂や転移によって症状が現れ見つかった場合 です。

この①と②で進行ステージが異なり、治療の考え方も変わりますので、それぞれに関してまとめてお話しします。

好発部位と特徴(脾臓HSAを中心に)

血管肉腫は全身どこでも起こり得ますが、その中でも 脾臓 は最も頻度が高い発生部位です。

● ① 脾臓型(splenic HSA)※最も多い

  • 突然の腹腔内出血
  • 破裂による急変が多い
  • 診断時にはすでに転移していることも多い
  • 治療は手術(脾臓摘出)+化学療法が中心

脾臓HSAは「破裂の危険性」「進行の早さ」が特徴で、HSA=脾臓腫瘍 と認識されるほど一般的です。

● ② 心臓型(右心房付近)

  • 心嚢内に出血
  • 心タンポナーデ
  • 失神・呼吸困難

脾臓とは違う形で急変するタイプです。

● ③ 皮膚型・皮下型

  • 外科切除が有効な場合がある
  • 内臓型より予後が比較的良好なこともある

● ④ 肝臓型・その他

脾臓と同じく破裂リスクがあり、腹腔内出血で見つかるケースもあります。

症状:突然訪れる変化

血管肉腫は非常に厄介で、発症初期はほとんど症状がないことがあります。

しかし後から振り返ると、次のような“小さなサイン”が見られていたと語られることがあります。

● 見逃しやすい初期サイン

  • 少し元気がない
  • 散歩の途中で立ち止まる
  • 休む時間が多くなった
  • 食欲にムラがある
  • 歯茎の色が薄い

● 破裂後の急変

破裂・出血が起きると、以下のように突然症状が現れます。

  • ぐったりして立てない
  • お腹が張る
  • 粘膜が白い(貧血)
  • 呼吸が早い
  • 意識レベルの低下

この段階では命に関わることが多く、すぐに治療が必要です。

診断方法

血管肉腫の診断には複数の検査を組み合わせて行います。

● 身体検査・問診

元気・食欲・呼吸・粘膜色などを評価。

● 血液検査

貧血の程度、臓器値、出血傾向の確認。

● エコー検査(腹部・心臓)

脾臓の腫れや腫瘍の有無、腹腔内出血の確認。

● レントゲン

肺転移、胸水の有無などを確認。

● CT検査(必要に応じて)

腫瘍の大きさ、転移、血管との位置関係の精密評価。

● 病理検査

確定診断には腫瘍組織の病理検査が必要ですが、脾臓HSAは破裂リスクがあるため、事前の針生検が難しいこともあります。

脾臓の血管肉腫とどう戦う?

①偶発的にエコー検査などで脾臓にできものが見つかった場合

まず脾臓にできるできものは血管肉腫以外にもさまざま存在しています。

そのため小さな脾臓のできもの=血管肉腫の初期 とは限らないのです。

ここが最も難しいところで、エコー検査の見え方や血液検査で血管肉腫を診断することはできないのです。

診断は脾臓を摘出し病理検査を見て初めて診断されます。

手術に踏みきるかどうかの判断ポイント

犬種、年齢、エコーでのできものの見え方から考え、

悪性腫瘍を疑わない場合は2~4週間で増大がないか経過観察します。

血管肉腫などの悪性腫瘍を疑う場合、

または診断的早期治療の同意がいただける場合は脾臓摘出の手術を行います。

ちなみに、脾臓は、臓器の有無によって生活の質や寿命に影響はない臓器ですが、

免疫に関与している臓器であるため、免疫力を保持することが大切になります。

また、結果として良性の病変ではなかったとしても、血種のように増大によって破裂を引き起こすできものが多いため、

個人的な意見として、疑わしい脾臓腫瘤は摘出をすべきだと考えます。

摘出し血管肉腫と診断された場合は、今後の再発を遅らせるためにどうするかを考えます。

極めて早期の摘出でない限りほとんどの場合が、のちのち違う臓器で再発を認めます。

その再発を遅らせるために行う選択肢は抗がん剤投与です。

一般的に効果があると言われているのはドキソルビシンと呼ばれる抗がん剤を約一か月ごとに投与する方法です。

早期に血管肉腫が摘出され、手術後に抗がん剤を行い、免疫を強く保つことができれば、

血管肉腫の治療では最も頑張ることができるでしょう。

②破裂や転移をしている場合

この場合は慎重に判断する必要があります。

まず、破裂をしている場合は、今の命を救うためには手術をするしかありません。

前述のように破裂している脾臓腫瘍がすべて血管肉腫であるとも限りません。

悩ましいのは転移している場合です。

血管肉腫はとても転移しやすい腫瘍ですので、

大きな脾臓腫瘍が見つかったときに肺や肝臓にすでに転移していることは少なくありません。

抗がん剤などは存在していますが、副作用などのデメリットと明らかな有効性が認められないことから、

転移をしている子への抗がん剤投与はあまりお勧めしません。

出血を抑える止血剤や免疫力を高めるサプリメントや食事がメインになります。

その中で手術をする場合、目的は破裂に伴う出血を予防するまたは乗り切るための、

緩和的な手術および確定診断をつけることになります。

転移している場合は、血管肉腫の場合、

腫瘍に打ち勝つことは厳しい可能性があるので、

どの治療がいかにこれからの本人の生活を楽にさせてあげられるかを考え選択すべきであると考えられます。

ここの選択に正解はありません。

その子にとっての最善を探し、負担が少ないなかでできることを探します。

治療の選択肢

血管肉腫の治療は、主に次の3つです。

■ 1. 外科手術(脾臓摘出)

脾臓HSAでは最も一般的な治療です。
破裂している場合は緊急手術になることもあります。

ただし、手術だけでは根治は難しいとされています。

■ 2. 化学療法(抗がん剤)

ドキソルビシンなどの薬剤を使用し、
転移・再発の進行を抑えることを目的とします。

■ 3. 緩和ケア

病状が進行している場合や、手術や化学療法が難しい場合に選択されます。

  • 痛みの管理
  • 呼吸のサポート
  • 血液・輸液管理
  • 食事管理

腫瘍を治すというより、苦痛を減らし、生活の質(QOL)を守るための大切な選択肢です。

予後(脾臓HSAを含む生存期間の目安)

血管肉腫は進行が早く、予後は比較的厳しい腫瘍です。

  • 手術のみ:1〜3か月前後
  • 手術+化学療法:4〜8か月前後
  • 1年生存率:10%未満とされることが多い

ただし、実際には 治療やケアによって1年以上一緒に過ごせたケースも確実に存在します。

その背景には、

  • 小さな変化を見逃さなかった飼い主さんの観察
  • その子に合わせた治療計画
  • 穏やかに過ごせる環境づくり

といった“積み重ね”があります。

予後の数字はあくまで目安であり、その子が過ごす1日1日の価値は統計では測れません。

心臓の血管肉腫とどう戦う?

心臓の血管肉腫も考え方は脾臓の血管肉腫と同じですが、

心臓であるため診断がさらに難しく、

見た目で血管肉腫と判断することはできませんし、生前に診断を確定することは困難です。

そのため、犬種、年齢、血液検査(心臓トロポニンIというマーカー)、腫瘍の発生部位(心臓の右側)を総合的に判断することになります。

他の臓器に転移がなく、心臓に腫瘍が限局している場合は、

前述のドキソルビシンという抗がん剤が効果が見込めます。

また、心臓の血管肉腫は脾臓と違い手術で切除をすることができません。

できる手術としては、心タンポナーデという心臓周囲に液体が貯まらなくするための手術であり、

心臓の腫瘍を摘出する手術ではありません。

心臓の腫瘍から出血することにより心タンポナーデと呼ばれる病態になると、

急激な体調の変化や命に関わることがあるので、上記のような手術を緩和目的で行うこともあります。

脾臓の時と同様に、何が本人の生活を最も楽にしてあげられるかを重視し、

治療選択をすべきであると思います。

破裂・出血時の輸血準備

血管肉腫は極めて高確率に破裂します。

血管肉腫が命に関わるのは、ほとんどの場合、衰弱ではなく、

破裂による出血死です。

そのため治療を行っていくには輸血が不可欠となり、

ドナーの準備が極めて難しく重要となります。

犬のドナー探し

犬猫輸血ドナー ~動物の命を左右する血液バンク~

抗腫瘍ドッグフード

腫瘍のわんちゃんが痩せてしまうのはなぜでしょうか。

それは、腫瘍がエネルギーを大幅に消費して大きくなろうとするからです。

腫瘍は炭水化物をエネルギー源にします。

脂肪は腫瘍にとられにくく、エネルギー効率が高いです。

腫瘍によって痩せていかないための食事管理が極めて大切となります。

下記コラムにすべて記載しています。

【大切】腫瘍の食事管理

【病気別】犬猫の栄養管理と食事選択 ~腫瘍に負けないごはんは?犬・猫に“肉”を与えていい?生肉の危険性・加熱の利点・手作り食の注意点~

抗腫瘍サプリメント

腫瘍は身体にとって異物です。

そのため自己の免疫力で腫瘍が大きくならないように攻撃しています。これを腫瘍免疫といいます。

腫瘍免疫をあげるためには食事療法と栄養管理が大切となります。

そのひとつにヒトでも用いられるアガリクスはひとつの補助栄養になります。

キングアガリクスは近年抗腫瘍サプリメントとして、腫瘍学会等で紹介され始め注目されています。

あくまで、内服が可能なわんちゃんで余裕があれば考慮すべきと考えられます。

飼い主ができるケア

血管肉腫と向き合う中で、多くの飼い主さんが大切にしていることがあります。

● 毎日の体調を丁寧に観察する

元気・食欲・呼吸・粘膜色・腹囲の変化は重要なサインです。

● 無理をさせず、その子のペースに合わせる

散歩の距離、遊ぶ時間、休むタイミングを調整します。

● 食べたいものを工夫して少しでも食べてもらう

食欲があることは大きな力になります。

● 緊急時に備える

夜間救急の場所、連絡先、通院手段を確認しておきましょう。

● “一緒に過ごす時間そのもの” を大切にする

病気の進行は止められなくても、
穏やかで幸せな時間を守ることはできます。

くある質問(FAQ)

Q. 血管肉腫は完治しますか?
→ 完治は非常に難しい腫瘍です。治療は延命と生活の質の維持を目的とします。

Q. 手術は意味がありますか?
→ 根治にはなりませんが、出血リスクを下げ、時間をつくるという重要な役割があります。

Q. 皮膚型なら治りやすいですか?
→ 皮膚・皮下に限局していれば切除で良好な経過をたどるケースもあります。

Q. 破裂が怖いです。何に気をつければいいですか?
→ 元気・食欲・呼吸・粘膜色・腹囲の変化に敏感になり、異変を感じたらすぐ受診してください。

まとめ

  • 血管肉腫(HSA)は血管由来の悪性腫瘍
  • 最も多い脾臓型HSAは破裂・出血のリスクが高い
  • 無症状から突然の急変に至ることもある
  • 診断には血液検査・画像検査が重要
  • 治療は手術+化学療法、または緩和ケア
  • 統計的な生存期間は短いが、1日1日の価値は大きい
  • その子と家族の“穏やかな時間”を守ることが最も大切

血管肉腫の治療は、
「どれだけ長く生きるか」だけではなく、
「どうすれば苦しまずに大切な時間を過ごせるか」
を考える病気でもあります。

血管肉腫は正直かなり手ごわい腫瘍です。

これは飼い方や生活環境は関係ありませんし、この腫瘍に関していえば、発見が遅れることは致し方ないことが多いです。

飼い主である自分を責める必要はありません。

その中で、いまこの子に対して何がしてあげられるかを考え、

最後までできる限りのことをしてあげることが最善だと思います。

つまり、比較的早期(転移がない)である場合は手術を前向きに考え体のサポート(抗がん剤に加え栄養療法や免疫療法)をすること、

手術ができる状況じゃない場合(転移している)は本人の負担のない中でできる栄養管理や免疫強化を行っていくのが最善であると思います。

腫瘍治療は正しい情報をもとに、その子にとって、家族にとって最善となる選択をしていただき、

後悔のない日々を過ごしていただければと思います。

悩みが多い病気だと思いますので、悩まれている方に少しでも参考になれば幸いです。

呼吸が荒く酸素室が必要なことも多いです。

そのような状況の場合は以下を参考にしてください。

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