更新日:2025/12/5
犬も年を取るにつれ、腫瘍(しこり・がん)が見つかる確率が高くなります。
「今日は元気そう」「ただのしこりかな?」と見過ごしてしまいがちやけど、腫瘍=がんではないにせよ、早期発見と対処が、わんちゃんの命と生活の質を守るうえでとても大きな意味を持ちます。
ここでは、犬でよく見られる腫瘍の種類、発生する年齢や頻度、注意すべきサイン、検査や治療のポイントを整理する。
- 1 犬の腫瘍はどれくらい「多い」のか?
- 2 腫瘍が増える年齢とリスク要因
- 3 腫瘍を早く見つけるために飼い主さんができること
- 4 検査・診断の流れと注意点
- 5 治療方法の選択肢
- 6 飼い主さんの心構えとケア
- 7 よくある質問(FAQ)
- 8 犬でよく見られる腫瘍の種類トップ5+その他
- 9 まぶた『マイボーム腺腫』
- 10 眼球『メラノーマ』
- 11 鼻腔『腺癌』
- 12 口唇/マズル『組織球腫』
- 13 口の中『メラノーマ』
- 14 耳の中『耳垢腺癌』
- 15 胸の中『胸腺腫』
- 16 肺『肺腺癌』
- 17 心臓『血管肉腫』
- 18 のど『扁平上皮癌』
- 19 くび(のどぼとけ)『甲状腺癌』
- 20 胃『腺癌』
- 21 小腸『リンパ腫』
- 22 盲腸『GIST(消化管間質腫瘍)』
- 23 大腸『ポリープ』
- 24 肝臓『肝細胞癌』
- 25 脾臓『血管肉腫』
- 26 膵臓『インスリノーマ』
- 27 副腎『腺癌/褐色細胞腫』
- 28 腎臓『腎腺癌』
- 29 膀胱『移行上皮癌』
- 30 精巣『セルトリ細胞腫ほか2つ』
- 31 包皮『肥満細胞腫』
- 32 卵巣『顆粒膜細胞腫』
- 33 子宮『平滑筋腫』
- 34 膣『線維腫』
- 35 肛門『肛門周囲腺腫/癌』
- 36 骨『骨肉腫』
- 37 関節『組織球性肉腫』
- 38 筋肉『血管肉腫』
- 39 指『軟部組織肉腫』
- 40 脳『髄膜腫』
- 41 脊髄『悪性末梢神経鞘腫』
- 42 皮膚『肥満細胞腫』
- 43 乳腺『乳腺腫瘍』
- 44 まとめ
犬の腫瘍はどれくらい「多い」のか?
- 最近では、犬の寿命が延びたこともあり、腫瘍の発生率も上昇傾向。ある報告では、10 歳の犬では約 6 頭に 1 頭(約17.5%)が腫瘍を経験するとされています。
- 年齢とともに発症率は上がる傾向があり、7 歳あたりから要注意とされます。
- また、すべての腫瘍を対象にした疫学データでは、発生した腫瘍のうち 約半数は良性、半数は悪性 であった、という報告もあります。
つまり、「高齢になったら“腫瘍の可能性を常に考える”」ことが、ペットとの生活では現実的になってきています。
腫瘍が増える年齢とリスク要因
- 犬の腫瘍は、加齢とともに発生確率が上昇します。若いうちは腫瘍は少なめですが、7〜10 歳あたりから注意が必要です。
- 特に小型犬でも中高齢になるとリスクが上がるため、「年齢=安心」ではありません。
- また、犬種の影響も報告されており、特定の犬種では腫瘍が出やすい傾向があります。
- さらに、腫瘍の種類によっては「皮膚」「骨」「血管」「リンパ」など、発生部位や性質が大きく異なるため、日頃の観察と注意が大切です。
腫瘍を早く見つけるために飼い主さんができること
- 定期的に全身をチェック(体を触る、皮膚・しこりの有無、歩き方、元気・食欲の変化など)
- しこり・腫れ・固さ・左右差・変化速度に注意
- 1年に1回以上の健康診断を習慣化
- 年齢が上がったら、血液検査・画像検査なども検討
- 明らかな症状がなくても、“違和感” に敏感になる
犬は言葉で「痛い」「具合悪い」と伝えられないからこそ、飼い主さんの観察力と行動が、早期発見を支える大きな力になります。
検査・診断の流れと注意点
腫瘍が疑われたら、以下のような検査や診断が行われます:
- しこりの 細胞診または生検(腫瘍の性質・良性か悪性かを確認)
- 血液検査(全身状態、臓器のチェック)
- 画像検査(レントゲン、超音波、CT など)で臓器や骨の状態を確認
- 転移チェック(リンパ節・内臓など)
特に悪性腫瘍では、早期発見・早期診断 がその後の治療方針・予後に大きく影響します。
治療方法の選択肢
腫瘍の種類や進行度、全身状態によって治療は異なります。主な選択肢は以下の通り:
- 外科手術(しこり・腫瘍の切除)
- 抗がん剤・化学療法
- 放射線療法
- 緩和ケア・支持療法(痛み管理、生活の質維持)
- 経過観察(良性腫瘍で、症状がない/問題がない場合)
どの治療方法も、獣医師と飼い主さんで協力しながら、その子の状態と家族の希望を尊重して選ぶことが大切です。
飼い主さんの心構えとケア
- “しこり=がん” ではないが、“しこりがあったら無視しない”
- 定期健診と日々の観察を習慣化
- 治療・検査の説明をきちんと聞き、不明点は質問する
- 治療の目的は「治す」「延命」「苦痛の軽減」「生活の質の維持」など、多様な選択肢があると理解する
- 心理的にも備える:不安や迷いがあるときは、セカンドオピニオンも視野に
よくある質問(FAQ)
Q. 年齢が若くてもがんになる?
→ 比較的少ないですが、若くても腫瘍が見つかるケースはあります。違和感やしこりに気づいたら、年齢に関係なく受診を。
Q. すべての腫瘍が悪性?
→ いいえ。良性の腫瘍も多く、良性・悪性の見分けは検査でのみ可能です。
Q. 高齢だからと諦めるのはよくない?
→ 高齢だからといって治療をあきらめるのではなく、体の状態や症状、生活の質を考えたうえで判断することが大切です。
Q. しこりが小さい/動く/柔らかいだけなら安心?
→ 見た目・手触りだけでは判断できません。良性に見えても悪性のことがあるので、気になれば診察を。
犬でよく見られる腫瘍の種類トップ5+その他
以下は、臨床で多く報告される代表的な腫瘍です。
| 腫瘍の種類 | 特徴・注意点 |
|---|---|
| リンパ腫 | 全身に広がりやすく、症状も多彩。犬で最も頻度の高い悪性腫瘍のひとつ。 |
| 肥満細胞腫(皮膚腫瘍) | 皮膚・皮下にできる腫瘍。見た目では良性との区別が難しいため、早めの検査が重要。 |
| 骨肉腫(骨の腫瘍) | 足や脚の骨に起こりやすく、痛みや跛行として現れやすい。大型犬での発症が多い。 |
| 血管肉腫(内臓や血管を中心とした腫瘍) | 脾臓や肝臓などで見つかることが多く、破裂・突然死のリスクが高いため、定期的な健診と注意が必要。 |
| 軟部組織肉腫/ソフトティッシュサルコーマ | 皮膚・皮下・筋肉など柔らかい組織に発生する腫瘍。切除後の経過観察が重要。 |
加えて、乳腺腫瘍、メラノーマ、臓器腫瘍(肝臓、腎臓など)の報告も多く、犬種や年齢、性別などによって傾向が異なります。
臓器ごとに多い腫瘍をまとめます。
まぶた『マイボーム腺腫』
まぶたの腫瘍はわんちゃんにおいてよく遭遇する腫瘍の 1つで すが、そのほとんどが良性のマイボーム腺/皮脂腺腫であり、
悪性の腫瘍の確率はわずか 2 %前後とされています。
大きさや経過から悪性の可能性が疑われる場合は、全身麻酔での細胞診検査や手術を必要とします。
また、腫瘍が大きくなり眼球の角膜に傷をつけてしまう場合は良性であっても切除を検討します。
眼球『メラノーマ』
眼球腫瘍は眼内出血(前房出血)や炎症(ぶどう膜炎)水晶体の脱臼、緑内障に伴う痛みや視覚異常などの症状を示し見つかることが多いです。
ただし、腫瘍の診断はとても難しく、
各眼科検査にに加えて超音波検査や CT/MRIなど画像検査を併せて可能な限り正確に評価します。
その理由は、眼球腫瘍の治療および確定診断は眼球摘出という外科手術によってのみ行い、その後の視覚や外貌に大きな影響を与えるためです。
ねこちゃんの眼球メラノーマはとても多いですので、参考にしてみてください。
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鼻腔『腺癌』
わんちゃんの鼻の中の腫瘍は中高齢になると比較的多く発生します。
疑わしい症状としては1~2週間続く治らない鼻水や鼻血を示す場合です。
この症状として腫瘍以外には、
鼻炎(細菌性、真菌性、異物性、歯源性)や鼻咽頭ポリープなどです。
急なくしゃみ鼻水は歯周病からくることも多いですので、まずその可能性を疑います。
口唇/マズル『組織球腫』
組織球腫は3歳未満の若い犬において頭部、耳、四肢にも っ とも多く発生する良性腫瘍です 。
1 ~ 4週間で急に1センチほどまで大きくなり、ピンク色をしています。発症後多くの場合は 1~2カ月以内に免疫活性化によって自然に退縮する ため経過観察を行います。
口の中『メラノーマ』
口腔内メラノーマは高齢のわんちゃんの口の中の腫瘍で最も発生頻度が高く、かつ悪性度も高い悩ましい腫瘍の代表格です。
詳細を下記にまとめます。
更新日:2025/12/5ヒトも犬猫も年齢を重ねると腫瘍の発生率は上がります。これは避けられない遺伝子変異の確率論です。特にわんちゃんの場合は高齢になると、口の中にできものができることが少なくありません。[…]
耳の中『耳垢腺癌』
犬の耳の腫瘍は、外耳炎のように外耳道の慢性的な炎症が耳垢腺の変化を起こし、腫瘍化すると言われています 。
わんちゃんの耳の中のできものは約60%が悪性腫瘍であり耳垢腺癌が最も多いとされています。
しかし、転移率が低い腫瘍ですので、可能な限り積極的な外科的摘出が望まれます。
胸の中『胸腺腫』
胸の中の肺以外にできる腫瘍として多いのが胸腺腫という腫瘍です。
詳しくは下記にまとめています。
更新日:2025/11/24猫の胸腺腫(Thymoma)は、胸の前側(胸骨の裏あたり)にある胸腺という免疫器官から発生する腫瘍 です。胸腺腫は猫では多くありませんが、見つかった時には呼吸が苦しい胸[…]
肺『肺腺癌』
犬の肺腫瘍は無症状の健康診断でたまたま発見されることも多く、約3割のわんちゃんで無症状
であったとの報告されています 。
症状がある場合は発咳が認められ、そのほかに呼吸促拍や元気消失、体重減少なども認められるとされています。
呼吸が早い際の対処法を下記にまとめています。
心臓『血管肉腫』
血管肉腫はわんちゃんに発生する腫瘍の中で最も悪性度が高く、悩ましい腫瘍です。
下記に詳しくまとめています。
更新日:2025/12/5最近は大切に丁寧に飼われているワンちゃんネコちゃんが増え、とっても長寿な子が増えてきました。獣医療もすすみ様々な病気が早期に診断され、治療選択肢も広がっています。動物は言葉が話せな[…]
のど『扁平上皮癌』
前述のメラノーマの次に口のなかにできやすい腫瘍が扁平上皮癌であり、転移は少ないものの局所浸潤性が強いためとても悩ましい腫瘍です。
のどの奥や扁桃にできる場合も多く、その場合はのどの痛みや声の変化、嚥下困難などの症状から見つかることも多いです。
更新日:2025/12/6犬が高齢になると口の中にできものができることは少なくありません。犬の悪性の口腔内腫瘍にはトップ2が存在し、ひとつは有名なメラノーマ(悪性黒色腫)で、もうひとつは扁平上皮癌で[…]
くび(のどぼとけ)『甲状腺癌』
のどぼとけの付近にある内分泌臓器である甲状腺が腫瘍化した場合を甲状腺癌と言います。
わんちゃんでは比較的遭遇する腫瘍です。
下記に詳しくまとめています。
更新日:2025/11/24犬の首周りにしこりがあるのどの横が腫れている呼吸がゼーゼー声がかすれてきたといった症状があるときに疑うべき病気のひとつが 甲状腺腫瘍(甲状腺癌) です。[…]
胃『腺癌』
小腸『リンパ腫』
【更新:2025年12月12日】わんちゃん猫ちゃんはとても長生きになるとともに腫瘍を患う確率も高まりました。実は、近年ヒトと同様に死因の第一位はがんになりました。これは獣医療が進歩し、ネット含め良い[…]
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肝臓『肝細胞癌』
脾臓『血管肉腫』
更新日:2025/12/5血管肉腫(HSA)は、犬の腫瘍の中でもっとも突然訪れることの多い病気です。昨日まで散歩を楽しんでいた子が、ある日急にぐったりして倒れてしまう——そんな状況で病院に運ばれ、検査の結果「血管肉腫」と診[…]
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副腎『腺癌/褐色細胞腫』
腎臓『腎腺癌』
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膣『線維腫』
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指『軟部組織肉腫』
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脳『髄膜腫』
更新日:2025/12/6犬の脳腫瘍は、「発作」「ふらつき」「性格の変化」「視覚異常」 といった神経症状から見つかることが多い病気です。脳腫瘍と聞くと不安が大きくなりますが、腫瘍の種類によって治療方法も予後も大きく異なり、[…]
脊髄『悪性末梢神経鞘腫』
皮膚『肥満細胞腫』
乳腺『乳腺腫瘍』
まとめ
- 犬の腫瘍は高齢とともに増え、10 歳前後から注意が必要
- よく見られる腫瘍にはリンパ腫、皮膚腫瘍、骨肉腫、血管肉腫、軟部組織肉腫などがある
- 飼い主さんの日々の観察と“違和感を見逃さない習慣”が重要
- 早期発見のための健診・検査、適切な診断、選択肢のある治療が可能
- しこりを見つけても落ち着いて、獣医師と相談を
わんちゃんと長く、穏やかに過ごすために。
腫瘍を「他人ごと」にせず、日頃からのケアと観察を習慣にしておきましょう。
以下に獣医師の視点から、
治療中の犬猫に現実的に選ばれているフードをまとめまています。
▶︎ 犬猫に配慮したフードの考え方を見る
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